https://pianix.exblog.jp/3107769/ 【ハハコグサ(母子草)】より
ハハコグサ(母子草)は、キク科ハハコグサ属の越年草です。中国、日本、東南アジア、インドに分布し、国内では全国に分布する史前帰化植物の在来種です。古くは、オギョウあるいはゴギョウと呼ばれ、春の七草の一つになっています。七草粥や草餅に利用されたようですが、現在ではヨモギが使われます。ハハコグサはホホケグサが訛った名であるとの説もあります。冠毛がほおけ立つ(穂穂ける=毛羽立つ)事に由来します。この説によると、母子草との字を充てるのは適切でない事になります。
キク科(Asteraceae Bercht. et J.Presl (1820))は、世界に約950属2万種が分布します。日本には約70属360種があり、帰化植物は100種以上あります。Asteraceaeは、aster(星)の意味。保留名のCompositae Giseke, 1792は、「合成された」との意味から。ハハコグサ属(Pseudognaphalium M.E. Kirpicznikov, in M.E. Kirpicznikov et L.A. Kuprijanova, 1950)は、世界に120種程が分布しています。
花期は、4月~6月。草丈は10~30cm。茎や葉には白い綿毛が密生しています。葉は互生し、へら形で、ロゼット葉は花期にはありません。頭花は黄色で、管状花と糸状小花で構成される総苞の集まりです。ロゼットで越冬します。ロゼットとは、葉が放射状に根際から出ているものの事です。その一枚毎を根出葉あるいは根生葉、ロゼット葉と言います。染色体数は、2n=14。
近縁種に、アキノハハコグサ(秋の母子草)がありますが絶滅危惧IB類(EN)です。また、チチコグサ(父子草)は、チチコグサ属の在来種で、頭花は茶色です。外来種のチチコグサモドキ(父子草擬き)も多く見られます。葉の裏が白いウラジロチチコグサ(裏白父子草)、花色が淡紅紫色のウスベニチチコグサ(薄紅父子草)も外来種です。また、ヤマハハコ属には、よく似た名のカワラハハコ(河原母子)があります。
https://www.pharm.or.jp/flowers/post_34.html 【ハハコグサ】 より
Pseudognaphalium affine (D.Don) Anderb.(キク科)
生薬 ソキクソウ(鼠麹草)
ハハコグサ(母子草)は全国の日当たりのよい畑地、原野、道端などにごく普通に見られるキク科の越年草です。高さは20~30 cmほどで全体に白軟毛があり、葉は先が丸みを帯びたへら状で、互生します。4~6月に茎の先端に頭状花序の黄色い小花を多数つけます。春の季語として古くから俳句や短歌などにたびたび登場します。冬期はロゼット葉で過ごし、春になると茎を伸ばして花を付けます。花後にはタンポポと同じように、長さ約2 mmの綿毛のある種子をつけます。
和名のハハコグサにはオギョウ、ゴギョウ(御形)、ホオコグサ(這子草)、ブツジグサ(仏耳草)、ソジ(鼠耳)、モチバナ(餅花)などの別名が知られています。名の由来は諸説ありますが、はっきりとはしていません。英語名はCottonweedやJersey Cudweedです。ハハコグサ属はかつてのnaphaliumからPseudognaphaliumへ変更されました。従来の属名は、ギリシャ語の「gnaphallon(尨毛(むくげ=獣の毛))」が語源であり、現在のものはこれにPseudo(偽の)が付けられました。種小名affineは、「近似の、酷似の」を意味します。
開花期に全草を採取し、水洗いして天日でよく乾燥させたものを、生薬ソキクソウ(鼠麹草)といいます。漢名でもある鼠麹草は、葉に毛があって鼠の耳のような形をしていることと、花が粒状で黄色の麹(こうじ)に似ていることから名付けられたようです。
ソキクソウの煎液は鎮咳、去痰、扁桃炎、のどの腫れに有効で、他に利尿作用があるため急性腎炎に伴うむくみの軽減に効果があると言われています。また、江戸時代中期に編纂された日本の類書(百科事典の種)の「和漢三才図絵」にはソキクソウ、フキの花、熟地黄をそれぞれ焙り、混ぜたものを三奇散(さんきさん)といい、炉にくべて煙を吸うと痰咳によいと記されています。皮膚病には全草の黒焼き粉を作り、ゴマ油で練ったものを患部に塗布するとよいとされていました。
ハハコグサの若い茎葉は食用とされ、春の七草の一つです。かつては葉を草餅や団子のなかに入れましたが、緑色の鮮明なヨモギがこれに取って代わり、今では草餅に用いることはほとんどありません。
このようにハハコグサは色の映えにはやや劣ものの、粥や天ぷらの食材として、母から子へ受け継がれるべき植物であることは確かなようです。
(高松 智、小池佑果、磯田 進)
[参考図書]
指田豊 監修、『日本の薬草(フィールドベスト図鑑17)』、学研教育出版
三橋博 監修、『原色牧野和漢薬草大図鑑』、北隆館
伊澤一男 著、『薬草カラー大事典―日本の薬用植物のすべて』、主婦の友社
蕭培根 編集、真柳誠(翻訳編集)、『中国本草図録3巻』、中央公論社
上海科学技術出版社、小学館 編、『中薬大辞典 (第3巻)』、小学館
http://www.drugsinfo.jp/2015/07/10-225900 【『ハハコグサについて』】より
KW:薬草・ハハコグサ・母子草・御形・ごぎょう・おぎょう・餅花・モチバナ・ホオコグサ・鼠麹草・ソキクソウ
Q:ハハコグサについて
A:ハハコグサ(母子草)は、きく科ハハコクサ属の越年草である。学名:Gnapalium multiceps Wall. Gnaphalium affine。春の七草の一つ『御形』でも有り、茎葉の若い葉を食用(七草粥)にする。冬は根出葉がややロゼット状に育ち、春になると茎を伸ばして花を付ける。
[分布]北海道から沖縄及び亜細亜(中国、インドシナ、マレーシア、印度)に分布し、原野や人家の近くなどに普通に見られる。日本では全国的に見られるが、古い時代に朝鮮半島から伝来されたものとする意見が見られる。
image[形態]草丈は20-30cm、茎は基部から分枝して直立し、葉と共に白軟毛を被る。葉は線状倒皮針形で縁はやや波状。花期は4-6月。茎の頂きに散房状に淡黄色の小頭花が密集する。
[別名]御形(ごぎょう・おぎょう)、餅花(モチバナ)、ホオコグサ(母子草)。
[漢方名]鼠麹草<ソキクソウ>と云う生薬名があるが、伝統的な漢方方剤では使用されない。
[薬用部分]全草(鼠麹草<ソキクソウ>)。開花期の頃、全草を採集し、水洗い後、日干しにして乾燥させる。
[成分]全草にルテオリン(luteolin)、モノグルコサイド、フィトステロール(phytosterol)、無機物の硝酸カリを含有する。
*luteolin:フラボンの1つ。他のフラボノイドと同様、黄色の結晶状になる。抗酸化物質活性、炭化水素代謝の促進、免疫系の調整、2型糖尿病の治療等の作用を持つ可能性示唆。
*phytosterol:又は植物ステロール(plant sterol)は、sterol(ステロイドアルコール)に分類される一群の化合物。植物に含まれるフィトケミカルの一種である。特有の臭気のある白色固体で、水に溶けないがアルコールには可溶である
[薬効・薬理]西洋医学では未開発であるが、中医学では去痰剤とする文献もある。主に鎮咳、去痰に有効で、他に利尿作用などがある。花にはジギタリス葉に含まれるルテオリンやカリウム塩が含まれる。
[用法・用量]咳止めには1日10gに200mLの水を加え、半量になるまで煎じて3回に分けて服用する。また乾燥した全草を細切りにして1回量20gを火にくべて立ち上がる煙を吸ってもよい。急性扁桃腺炎には全草10gを煎じて含嗽するとよい。急性腎炎(浮腫)には煎液(5-10%水煎液を作り1日200mLを服用)を食間3回に分割して服用すると利尿に効果があるとされる。
田虫、白雲、畑毛等の皮膚病には、全草を適当に切り、塩を混ぜて濡らした和紙に包み、これを炭火の中に入れて黒焼きにし、黒焼きを擂り潰して胡麻油で練り合わせたものを患部に塗布する。
[その他]鼠麹草<ソキクソウ>は、葉に毛があって鼠の耳のような形をしていることと、花が粒状で黄色の麹に似ていることから名付けられた。嘗ては草餅(母子餅)の材料に使われたが、色が薄いので蓬が使用されるようになった。
1)三橋 博・監:原色牧野和漢薬草大圖鑑;北隆館,1988
2)伊沢凡人・他:カラー版薬草図鑑;家の光協会,2003
3)鈴木 洋:漢方の薬の事典-生ぐすり・ハーブ・民間薬-第2版:医歯薬出版,2011
http://www.e-yakusou.com/yakusou/740.htm 【ハハコグサ (キク科ハハコグサ属:越年草:草丈 ~30センチ:花期 ~7月)】より
薬効 せき・たん
分布生育場所
科名:キク科/属名:ハハコグサ属
和名:母子草/学名:Gnaphalium affine
日本全土の日当たりのよい畑地、原野、道端などに普通に見られる2年草。
キク科ヤマハハコ属カワラハハコ(河原母子)
キク科ヤマハハコ属ヤマハハコ(山母子)
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見分け方・特徴
ハハコグサの、若苗は綿毛におおわれ、冬から早春に地面にはりつくように生えています。
根元の方で分枝した数本の茎が伸びて立ち上がります。
葉は互生し、先は丸みを帯びた倒披針形で長さ4~5センチ、巾2.5~7ミリで上面は緑色をしていて、葉質は厚みがあって綿毛が密生しています。
花は茎の上端に頭状花序を数個集合してつくり、色は黄色、まわりの管状花は雌性で細く、中心の筒状花は両性で、総苞片は5裂淡黄色をしていて、外片は短くて白毛があります。
痩果(果実のみで果肉のないもの)には、細点があり、冠毛は白毛をしています。
採集と調整
ハハコグサは、開花期に全草を採取します。水洗いして天日でよく乾燥させます。
乾燥した全草を、生薬の鼠麹草(そきくそう)といいます。
薬効・用い方
有効成分は、全草にルテオリン・モノグルコサイド、フィステロール、無機物の硝酸カリなどを含有する
ハハコギサの全草を、乾燥したもの鼠麹草(そきくそう)は、鎮咳(ちんがいさよう)があります。
たん、せきには1日量10グラムに水0.5リットルを加えて、煎じながら約半量まで煮詰めたものをこして、1日3回服用します。
また、よく乾燥したハハコグサを細かく切り、1日量20グラム位を火にくべ、立ち上がる煙を吸っても、せき、たんには効き目があるといわれています。
慢性の気管支炎には、1日量50グラムを煎じて、1日2回食間に服用します。但し、胃痛、悪心といった軽い副作用を伴った場合は服用をやめた方がよいでしょう。
急性扁桃腺炎には、ハハコグサの全草10グラムと0.2リットルの水で煎じて、その液でうがいをします。
ハハコグサの全草の黒焼き粉を作り、トウガラシ粉を加えて、植物油で練り合わせたものを、たむしに塗ります。
ハハコグサの若芽を、摘み取りゆでて水にさらして七草粥(ななくさがゆ)の具にします。
ハハコグサの草団子は、ハハコグサの若芽を、塩を入れた熱湯でゆでで、水につけて軽くアク抜きしてから、細かく刻みます。こねた米(もち米)の粉に混ぜて、よく練ってついてから、餅や草団子を作ります。
また、ハハコグサの若芽を、ころもを薄くつけて天ぷらににします。
その他
名前の由来は、葉や茎が白い綿毛をかぶっている様子が、母親が子を包みこむように見えたことから、母子草(ハハコグサ)の名がついたという説と、昔は葉を餅に入れて草団子にして食べた「葉っこ草」が転訛して、ハハコグサの名がついたという説があります。
ハハコグサは、春の七草のひとつで「おぎょう」といい、昔から若芽をゆでて七草粥にしたり、草団子や草餅の原料にしていましたが「ヨモギ」の方が、緑の色が濃くて喜ばれるようになり、ハハコグサの利用は少なくなったようです。
日本の古書の小野蘭山(おのらんざん)の書いた「本草綱目啓蒙(ほんぞうこうもくけいもう・1803)」には「3月3日の草もちはこの草で作ったものであったが、近ごろはヨモギで作ったほうが、緑が濃くて喜ばれるようになった」と記述していることから、草餅、草団子の原料にはハハコグサが使われていたことがわかります。
また、「和漢三才図会(わかんさんさいずえ・1713)」には、胆石に用いる方法として、花をよく乾燥し煙草にして、その煙を吸ったり、または、ハハコグサ、フキの花、熟地黄(じゅくじおう・アカヤジオウ)の3品をあぶってよく混ぜあわせて、炉にくべてその煙を吸うとよいと書かれています。
ハハコグサは、古代に農耕とともに渡来した帰化植物であると考えられています。
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