https://www.kigusuri.com/kampo/medicine/medicine-a002.html 【アケビ】より
アケビの実は裂けて肉をあらわすので、開肉(アケミ)の意味あるいは開く実(アクミ)の意味から転じたものである。生薬名の木通、通草はアケビのつるに多数の細かい孔があって、みな通っているので付けられた。
別名・地方名 アケビカズラ、アクビ
科 名 アケビ科/ラテン語の科名 Lardizabalaceae
学名(植物ラテン名) Akebia quinata(Thunb.)Decaisneアケビ
英名 Akebi, Five-Leaved Akebia
中国名 木通、八月札(果実)、木通根(根)、預知子(種子)
生薬名 木通(もくつう)、通草(つうそう)
出 典 神農本草経(217年)
生育場所 日のよくあたる丘陵や林内に生える
薬用部位と採集時期 蔓、根は秋、冬。(木通、通草)。葉、果実は秋。
調整法 蔓、根を採集し、水洗い後、細かく刻み、天日乾燥する。
主な成分 アケビオサイド、スチグマステロール、β-シトステロール、β-シトステロール-β-D-グルコシド
有効成分 配糖体のアケビンakebinを含有
効能・効果 利尿、鎮痛、通経、抗菌作用
用法・用量 1日5~20g
薬効と使用方法(常用量) 【1】生の蔓の節間を切り取り、一方から吹き、他方から出る白汁を目に人れるか木通の煎液あるいは干した果実を細かく砕いたものの煎液で洗眼すれば突き目に効果がある。
【2】木通を1日に5~20g煎じて服用すれば消炎、利尿、鎮痛、抗菌作用があり、浮腫、尿閉、尿利減少、尿道炎、膀胱炎、妊娠腎、月経不順、血の道、疝気(せんき)、腹痛、肝臓炎、貧血性頭痛に効果がある。果実を煎じて服用しても効果がある。また関節リュウマチ,神経痛にも良い。
【3】茎葉を浴湯料とするとできもの等によい。
使用上の注意(副作用、相互作用など) 精力減退、遺精、頻尿、妊婦は使用を禁ずる
薬食健康法
柔らかいつる先(新芽)と若い葉を、塩ひとつまみ入れた熱湯で茹でてあくを抜き、冷水にさらし、十分水気をとり、すりごま、醤油、みりん、蜂蜜を加えて和えると美味しい。マヨネーズ和えにしても、おいしく食べることができる。糸がつおと、しょうゆ味、クルミあえ、などで味わうのも良い。
実は刻んでみそに混ぜたり、油で揚げたり、でんがく風に焼く。苦い果皮も、ゆでて水にさらし、味噌炒め、油炒めすれば美味しくいただけます。
若葉を塩漬け(木芽漬)にして食べる。京都鞍馬の新芽漬けは有名です。
茶代用
アケビの新芽を摘み集め、洗って蒸して日に干し、茶の葉のように手でよくもむとおいしいお茶になる(葉・若い蔓は5月ごろ)。
薬酒・アケビの実の白酒
【1】アケビの果肉を種ごと2~5倍量の清酒かホワイトリカーに入れ、箸で白い部分を酒に溶かす。まだ裂けていない実は、縦の合わせめにそって、ナイフを入れると、裂けてひらく事が出来る。
【2】20~40日後、味噌こしで容器から種子を引き上げ、白酒と種に分ける。種はハチミツと焼酎に漬けて熟成酒を作る。3~4ヵ月で、淡黄白色のリキュールが仕上がり、とろりと甘い。実を、丸ごと漬けると、渋み苦みのまじった甘口に仕上がる。
果実の詰めもの(アクを楽しむ)
【1】中の果肉や種子をとり除き、果皮を1日ほど干す。
【2】椎茸、ひき肉、竹の子、たまねぎ、野菜類など、好みのものをまぜて炒め、みそ、砂糖、化学調味料などで、味つけし、①に詰め、カンピョウでしばる。
【3】油で、さっと揚げるか、油をひいた鍋で蒸し焼きにする。
果皮の保存と食べ方(アクを少なくする)
【1】果皮の外側の赤いところを剥ぐ。
【2】熱湯をさっと通す。時間が長いと、身が崩れてしまう。
【3】冷水にとり、黄色いアクを出させる。
【4】ラップに包み、冷凍保存する。
【5】要時、解凍後、味を付けて食べる。干しダイコン風味となる。
栽培の必要性と難易度 実生か、挿し木で栽培する。野生の苗などを植えて育てる。つるが伸びるにまかせると地面をはうので、棚などに誘引する。肥料は不要であるが、生育が悪いときは、春に化学肥料を一握りやると効果的である。
備 考
(アドバイス) 種子からは油を取り利用する。
応 用 薬用・食用・酒用・茶用・浴用
https://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/yakusodb/detail/003434.php 【ミツバアケビ
Akebia trifoliata (Thunb.) Koidz.】より
漢方薬に使われる薬用植物 ミツバアケビ
英名three leaf akebia 中国名 三葉木通 花期 3~4月
生薬名 ①木通(モクツウ)【局】,②預知子(ヨチシ)
薬用部位 ①つる性の茎,②果実
成分 ① にサポニン(akeboside類)
化学構造式
ミツバアケビ 化学構造式1
ミツバアケビ 化学構造式2
ミツバアケビ 化学構造式3
産地と分布
日本各地,および中国に分布し,産地,渓側,山間の疎林または低木林に生える.
植物解説
落葉のつる性木本.茎には明らかな皮目がある.葉は掌状3出複葉で,枝の先に束生し,小葉は3枚であり,卵状ないし長卵形である.葉質は薄い.花は単生で総状花序に付く.
薬効と用途
つる性の茎(木通)は消炎,利尿,清熱,通経作用などがあり,膀胱炎,排尿障害,浮腫,尿道炎,月経不順などに用いる.声がれや難聴にも用いる.漢方処方では竜胆瀉肝湯,五淋散,通導散などに配合される.果実(預知子)は鎮痛,消炎作用などがあり胸脇疼痛,月経痛などのほか,乳汁不足,淋病,目の炎症,特に涙腺の炎症などに利用する.
果肉は食用として知られるが,果肉を抜いた果実の中にひき肉を詰めて調理したものは「アケビの肉詰め」として知られる.つる状の若芽は湯がいてごま和えにして食べられる.蔓は強靭であり籠などの細工に用いられる.
本種は葉に粗い鋸歯があり5枚からなる掌状複葉であるが,同属のアケビは葉に鋸歯がなく3出複葉である.
http://www.hal.msn.to/kankaisetu/chuyaku116.html 【生薬四方山話木通(もくつう)】より
中国における薬物の応用の歴史は非常に古く、独特の理論体系と応用形式をもつに至っており、現在では伝統的な使用薬物を「中薬」とよんでいます。
中薬では草根木皮といわれる植物薬が大多数を占めるところから、伝統的に薬物学のことを「本草学」と称しており、近年は「中薬学」と名づけています。
中薬学は、中薬の性味・帰経(用語説明)・効能・応用・炮製・基原などの知識と経験に関する一学科であり、中医学(用語説明)における治療の重要な手段のひとつとして不可分の構成部分をなしています。
【大分類】利水滲湿薬…水液代謝を調節し不要な水分を排泄する中薬です。
【別名】…茎:木通、果実:木通子
【英名】…chocolate vine
概要
●アケビ科のつる性の落葉樹です。中国、朝鮮、日本などの東アジアに分布し、日本では、北海道から九州にかけての日の当たる丘陵や山野に自生し、特に東北地方に多く見られます。
●紫色の外皮が裂けて、白い果肉をのぞかせるアケビの実は、秋の山野で見つける自然の恵みです。ほのかな甘味は、平安時代の人々も魅了しました。当時の律令の施行細則『延喜式』によると、近畿地方では、アケビを菓子として朝廷に貢進していたという記載があります。さらに、乾燥させたアケビのつるは、その丈夫さから、かごやいすなどを作る材料として、また、むくみを解消する生薬としても重用されてきました。
●アケビという名前は、熟した果実が縦に割れる「開け実」が転言化したものです。特徴的なアケビの果実は、人々の想像力を刺激し、アケビの夢を見ると、自分自身、あるいは近所に子どもができるという俗信も生まれました。また、アケビの茎は、細孔によって上下が通じているため、中国の代表的な本草書『本草綱目』では木通、中国最古の薬物書『神農本草経』や日本最古の本草書『本草和名』、日本初の分類別漢和辞典『和名抄』では通草と呼ばれています。
生薬生産地 中国地図【日本産地】…長野・徳島・香川日本産有
伝統的薬能
薬物の治療効果と密接に関係する薬性理論(四気五味・昇降浮沈・帰経(用語説明)・有毒と無毒・配合・禁忌(用語説明))の柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経(用語説明)」です。
【温寒】… 寒
※性:中薬はその性質によって「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性、涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性、温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。
生薬(用語説明)(中薬)の性質と関連する病証
性質 作用 対象となる病証
寒/涼
熱を下げる。火邪(用語説明)を取り除く。毒素を取り除く。
熱証(用語説明)。陽証(用語説明)。陰虚(用語説明)証。
熱/温
体内を温める。寒邪(用語説明)を追い出す。陽を強める。
寒証(用語説明)。陰証(用語説明)。陽虚(用語説明)証。
平
熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。
すべての病証。
【補瀉】… 瀉 【潤燥】… 燥 【升降】… 降 【散収】… 散
【帰経】…心・小腸・膀胱
※帰経(用語説明)とは中薬が身体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。
【薬味】…苦 まず心に入ります。
※味とは中薬の味覚のことで「辛・酸・甘・鹸・苦・淡」の6種類に分かれます。この上位5つの味は五臓(用語説明)(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。
生薬(用語説明)(中薬)の味と関連する病証
味 作用 対象となる病証 対象五臓(用語説明)
辛(辛味)
消散する/移動させる。体を温め、発散作用。
外証。風証。気滞証。血瘀証。
肺に作用。
酸(酸味)すっぱい。渋い。
縮小させる(収縮・固渋作用)。
虚に起因する発汗。虚に起因する出血。慢性的な下痢。尿失禁。
肝に作用。
甘(甘味)
補う。解毒する。軽減する。薬能の調整。緊張緩和・滋養強壮作用。
陰虚。陽虚。気虚。
脾に作用。
鹹(塩味)塩辛い。
軟化と排除。大腸を滑らかにする。しこりを和らげる軟化作用。
リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。
腎に作用。
苦(苦味)
上逆する気を戻す。湿邪を乾燥させる。気血の働きを活性化させる。熱をとって固める作用。
咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。排尿障害。水湿証。肺気の停滞に起因する咳。血瘀証。
心に作用。
淡(淡味)
利尿。
水湿証。
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【薬効】…消炎作用 利尿作用 催乳作用 鎮痛作用 通経作用
【薬理作用】…利尿作用、抗炎症作用、抗消化性潰瘍作用、抗コレステロール血症作用
【用途】…消炎性利尿、鎮痛薬として、湿熱を除き、小便を通じ、関節を潤す効がある。小便不利、関節リウマチ、神経痛、月経不通などの症状に応用する。
●日本薬局方
【出典】…神農本草経
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
中品(保健薬)
生薬の画像
【基原(素材)】…アケビ科アケビまたは同属植物の蔓性の茎です。
アケビの植物写真
アケビの生薬図
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方剤リンク
本中薬(木通)を使用している方剤へのリンクは次のとおりです。関連リンク
生薬生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。
中薬・中成薬中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。
本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。これらは、中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。
生薬陳列
生薬の書物の歴史
神農本草経
本草経集注
本草項目
中医臨床のための中薬学
1.【神農本草経】(西暦112年)
中医薬学の基礎となった書物です。植物薬252種、動物薬67種、鉱物薬46種の合計365種に関する効能と使用方法が記載されています。
神農本草経
神農※神農:三皇五帝のひとりです。中国古代の伝説上の人といわれます。365種類の生薬について解説した『神農本草経』があり、薬性により上薬、中薬、下薬に分類されています。日本では、東京・お茶の水の湯島聖堂 »に祭られている神農像があり、毎年11月23日(勤労感謝の日)に祭祀が行われます。
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