http://www.ciel-vin.jp/contents/wine-blog/zoroastrianism_01/ 【ゾロアスターの神酒】 より
取り上げるのはゾロアスター教です。
かつてのイラン、ペルシャの国教だったゾロアスター教は、古くからワインが生産された地域に近い距離にあります。しかし、キリスト教やユダヤ教とワインの結びつきのようなものはありません。
唯一、ゾロアスター教の神酒とよばれる例外的な酒はハマオ(Haoma)です。
ゾロアスター教では、酒は狂騒をもたらす悪魔の飲み物とされてきました。それにもかかわらず、このハオマだけが神聖な酒として特別視されてきました。
しかし、ハマオがどんな酒かというと、ハオマ草を搾って造る酒だと伝えられているものの、かなり古い時代から実物はないようです。
ゾロアスター教の教祖はゾロアスター、ドイツ語読みするとツァラトゥストラ。
あのニーチェの代表作である『ツァラトゥストラはかく語りき』で有名なツァラトゥストラです。山にこもっていたツァラトゥストラは、神が死んだことを知り、絶対者のいない世界で、新たに「超人」を教えようとします、。しかし、一般の民衆は話を聞こうとはしません、そこで、ツァラトゥストラは、理解する人を探し始めます。
ツァラトゥストラが山を降りたり、出たりしながら、物語は進行していきます。この物語を通じて、ニーチェは彼独特の思想である、神の死、超人、永劫回帰を論じています。
さて、肝心な宗教としてのゾロアスター教ですが、実はかなりの歴史があります。
アケメネス朝ペルシアの時代には、ほとんどのペルシア人が信仰する宗教でした。ササン朝ペルシアでは国教とされ、王権の正当性に影響を与えていました。
また、ペルシア商人により、シルクロードを経て中央アジアや中国へも伝播していきました。
衰退は7世紀後半からのイスラムの台頭です。
ペルシア人もムスリム化し、ゾロアスター教の活動の中心はインドへと移っていきました。
教義は、善と悪の二元論がベースになっています。「世界最古の一神教」とも言われています。漢字では「拝火教」 と書くように、「火」に特徴があります。
偶像崇拝ではなく、炎に向かって礼拝するのも独特で、これは密教の護摩焚きとの共通を見ることもできるかもしれません。
中国では「祆教」ともいわれ、唐の時代には「三夷教」の一つとして隆盛していました。
かつて世界宗教として隆盛していたものの、現在では信者の数は10万人程度だといわれます。信者の分布では、発祥の地であるイラン、最終的にいきついたインドを始め、欧米圏にもいるようです。しかし、どの地域でも少数派になっています。
https://akihitosuzuki.hatenadiary.jp/entry/2011/03/25/082731 【シャーマニズムと麦角】 より
同じくギンスブルグから、麦角の幻覚作用について。カルロ・ギンズブルグ『闇の歴史―サバトの解読』竹山博英訳(東京:せりか書房、1992)
『ペナンダンティ』には、夜の飛行、動物への返信という、シャーマニズムの影響が認められる。フリウリ地方の民衆は、どこからかシャーマニズムの影響を受けていたのである。このような、民衆が持っていた世界のありかたと自分の行動についてのイメージは、魔女狩りや異端審問という現象を構成する一つの柱となった。エリートの側は、告発や社会防衛のメカニズムとして悪魔学などを作っており、これももう一つの柱となった。
このシャーマニズム的な民衆文化の存在を考えるときに、恍惚状態を起こすための精神変容物質があったのではないかと仮定できる。その物質として、ギンスブルクは二つの植物をあげている。一つがベニテングタケで、もう一つが麦角である。ベニテングタケは、ペルシアでは「ハオマ」「ソーマ」などと呼ばれており、ヨーロッパでも使われた可能性がある。麦角、特にライ麦のそれについては、流行病的に重い病気を起こすこともあったが、それを意識的に薬として用いていたことも考えられる。16世紀には堕胎薬として用いられたという証言もある。また、麦角の呼ばれ方も、それが精神変容に用いられたことを示唆する。ドイツ語では「狂ったライ麦」、フランス語では「酔いどれライ麦」というからである。動物への変容との重なりを示唆する「ライ麦の狼」という言い方もある。
断片。オカルトな民衆文化の歴史研究の背景には、技術的進歩の危険や代償に対する不安があり、資本主義が打倒した文化を再発見しようという欲求があると言っていること。
ギアツによるキース・トマスの批判に対して、トマスが答えたこと「歴史学者は、深部の社会構造という概念には親しみを持っているが、目に見えない心的構造という概念を取り上げてそれを調査するのには慣れていない」。
https://ameblo.jp/bluedeloi/entry-11116507490.html 【ソーマ(ハオマ)の謎】より
『リグ・ヴェーダ』には神々の飲料としてソーマが登場する。ヴェーダの神話によると、このソーマは天上世界からもたらされたと言う。ソーマは一種の高揚感を伴う飲料だったらしく、神々の王インドラも戦いの前にはこのソーマを飲んだとされる。かかるソーマは神聖視され、やがて神格化されて神とされた。『リグ・ヴェーダ』においてもソーマに対して数多くの讃歌が捧げられている。
一方、イラン系アーリア人の宗教であるゾロアスター教においてもハオマと呼ばれる神酒が登場し、やはり、生命力を高揚させ、死を遠ざけるとされる。かかるハオマもソーマ同様、神聖視され、神格化されて神とされている。
今日の研究ではソーマもハオマも同一の植物による飲料と目されているから、その起源はアーリア人がインド系とイラン系に分裂する以前の相当古い時代にまで遡り得る事になる。
ところで、分裂後の早い内にソーマ(ハオマ)の原料となる植物は取得困難になっていたらしく、インド系アーリア人もイラン系アーリア人もそれぞれ代用植物を用いて祭儀を行っていた様である。
ところで、ソーマ(ハオマ)の原料となる植物は『リグ・ヴェーダ』でも『アヴェスター』でも高山で生えているものらしく、又、アーリア人の故郷が中央アジアである事から中央アジアの何処かで自生していたものと思われる。
アーリア人の間で非常に重宝されたソーマ(ハオマ)の原料となる植物は何かという問題は古代世界の大きな謎の一つだと思われるが、この点の探求に関しては、日本の学者よりも欧米の学者の方が熱心の様である。
さて、研究などによりソーマ(ハオマ)の原料となる植物の候補として挙げられているのは、私が知り得た限りでは、以下の通りである。
①エフェドラ
ハーブ系の植物。漢方では麻黄とも言う。乾燥地帯で自生する。エフェドラに含まれるエフェドリンはカフェインと類似の効果があり、副作用もカフェインに似ている。尚、エフェドリンはアルカロイド系の物質である。又、多くの面でアドレナリンと類似しているとも言うが、アドレナリン程、強度ではないとも言われている。エフェドラは19世紀後半頃まではイランのゾロアスター教徒の間でハオマとして使用され、又、インドのパールシー教徒(インドにおける古代のゾロアスター教徒の末裔)にも輸出されていたらしい。
②大麻(カナビス)
麻に含まれているカンナビノイドが多幸感などの陶酔作用をもたらす。大麻は古代世界では多用されていた様である。
③キノコ類
・ベニテングダケ(Amanita muscaria)
毒キノコの一種。幻覚作用を引き起こし、シベリアのシャーマンの間で愛好された。
・Psilocybe cubensis
マジックマッシュルームの一種。
この他にも幾つか候補がある様だが、いずれも決め手に欠いているのが実情である。とは言え、こうした謎の探求は知的好奇心を擽るものがある。
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