http://kotonoha-no-kaze.work/2019/05/10/%E8%B1%8A%E8%91%A6%E5%8E%9F%E3%81%AE%E7%91%9E%E7%A9%82%E3%81%AE%E5%9B%BD%EF%BC%88%E3%81%A8%E3%82%88%E3%81%82%E3%81%97%E3%82%89%E3%81%AE%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%BB%E3%81%AE%E3%81%8F%E3%81%AB%EF%BC%89/ 【豊葦原の瑞穂の国(とよあしらのみずほのくに)/美しい日本語05.10】より
豊葦原の瑞穂の国、という言葉をご存知ですか?これは、とよあしらのみずほの国、と読みます。豊かに葦が茂り、瑞々しい稲穂が実る、そんな意味の、古くから伝わる日本の美称で、私も好きな言葉の一つです。
葦は水際でよく見かけられる背の高い植物で、大人の姿を隠すかのようなものもありますね。暑い夏にはよくのびるこの植物は、古来より人々になじみの深いものであったようで、歌や書物にその名が出てきます。
ただ葦が悪しに通じるといわれ、アシ→ヨシという呼び方をされるようになり、地名に葦がつく場合、葦原が吉原に変わったりと、変化しました。
―――葦が茂り、瑞々しい稲穂が実る。
四季の変化に富んだこの小さな島国には、古来稲作の文化が伝わり、その後日本でも広く作られるようになっていきました。
昔の田植えは今よりももっとずっと重労働で大変なものだったでしょうが、収穫の秋の到来は人々の心を弾ませたことでしょう。
時代が移り変わり日本もまた大きく姿を変えてきましたが、写真のように、今の日本でも、その言葉を想起させる美しい光景は見ることができます。
もしあなたが郷愁を感じたり、何だか心惹かれるのならば、ひとりひとりの胸のなかに、こういった景色を見つめ続けてきた祖先たちの眼差し、思いの欠片が、受け継がれているからかもしれません。
豊葦原の瑞穂の国、に続いて、古代の香りが漂う、美しい言葉をご紹介しますね。
【まほろば】
素晴らしい場所、そしてすみやすい場所の意味を持つ、まほろばとはそんな言葉です。
美しいこの国の国土と、そこに暮らす人々の心を称えた古い言葉。氷室冴子さんというかたが、古代を舞台にした小説で、日本のことを『まほろばの大和』、と表現していて、それがずっと胸に残っていまして。「銀の海 金の大地」という本です。
作者がお亡くなりになってしまったので、未完の大作…!最後まで読みたかったなぁ…!
遥か昔、この小さな島国では豪族同士の勢力争いが激しく、奴婢など身分の低い人たちは、取るに足らない存在として、ひどい扱いをされてしまうこともありました。
それでも身分がとても高かったり、歴史に名を残すような華々しい活躍をしたり、そういった人でなくとも、それこそ、水際で力強く茂る葦のように、確かに根付いて、強かに逞しく生き次の世代に命を繋いでいく―――そうした人々が生きる土地でもありました。
私は権力者たちの身勝手で時に涙を流すような辛い目にあっても、それでも懸命に生きてきただろう、その名もなき人々に心惹かれます。
葦の原、瑞穂が豊かに揺れる国。
まほろばの、大和。
無数にあり、そして力強い―――、
葦と瑞穂。今も私たちの生活に身近であるそれらは、古代の人々、そして私たちの姿に重なります。
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