http://ikaebitakosuika.cocolog-nifty.com/blog/2014/09/post-1609.html 【不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たにならず。…不易流行・松尾芭蕉】 より
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たにならず。」…『去来抄』より抜粋
1704年(宝永元年)ごろ、芭門門人の一人、向井去來によって松尾芭蕉の俳論をまとめた書物、『去來抄』(きょらいしょう)に書かれた芭蕉の言葉とされるものである。
去来曰く、芭門に千載不易の句、一時流行の句と云ふあり。 是れを二つに分けて教え給へども、其元は一なり。 不易を知らざれば基立ち難く、流行を知らざれば風新たに成らず。 不易は古に宜しく後にも叶ふ句なる故に千載不易と云う。 流行は一時一時の変にして、昨日の風は今日宜しからず、今日の風は翌日に用い難きゆゑ、一時流行とははやる事を云うなり。…『去来抄』下の巻・修行教より
時代を経ても変化しない本質的または普遍的な真理(=不易)を知らなければ基礎が確立せず、基本を知っていても、常に時代の変化を知り、その革新性(=流行)を取り入れていかなければ新たな進歩がない、という意味である。
漢籍や漢文といった古代中国の知恵も、まさに「不易流行」である。
古人(いにしえびと)の生き方、経験、考え方(哲学)は、現代を生きる知恵の宝庫である。
そして、古代中国の知恵(漢籍・漢文)を知ったうえで、現代を「自らの頭で考え模索し、常に自分の生き方を修正・変化・対応させ、人生を模索、創造していくこと」が、混沌としたこの地球を生き抜くため、一人ひとりに求められている課題である。
『論語』・為政に、「子曰、温故而知新、可以為師矣。」、すなわち、「温故知新(おんこちしん) → 故(ふる、=古)きを温(あたた)めて新しきを知る」、とある。
古い書物や教えに習熟し、その中から今に応用できる知識、考え方、技術を知り、そして創造する。
この言葉と「不易流行」には共通するところがあるようだ。
https://gunmahbpsurg.med.gunma-u.ac.jp/about/column/column11.html 【教授コラム Vol.11「変えるべきものと変えるべきでないもの」】 より
最も強いものが生き残るのではなく、最も賢いものが生き延びるでもない。
唯一生き残るのは変化できるものである。
この言葉は進化論を提唱したイギリスの自然科学者チャールズ・ダーウィンが言った言葉としてネット上で紹介されています。しかしながら、どうもダーウィンの言葉ではないのではないかというのが最近の定説のようです。ダーウィンは確かに進化の結果として生き残った種があるということ(自然選択)を明らかにしたわけですが、生物が生き残るために意思をもって変化したわけではありませんので、おそらく違うでしょうね。私も「種の起源」を改めて読みましたが、そのような記載はどこにもありませんでした。後年、誰かが言った言葉を誤解してダーウィンの言葉として広げてしまったというのが真相のようです。
現代社会の変化は著しく、自分が学生の頃を思えば(もう30年以上前のことになってしまいましたが)とてつもなく変化が起きています。例を挙げると私の学生時代は音楽もLPレコードの時代でした。研修医になって1年目の忙しい日々の中、医学部を卒業して初めて半年ぶりにレコード屋に行ったらすべてがCDになっており、茫然としたことを今でも鮮明に覚えています。いずれにしろ、冒頭に紹介した言葉は目まぐるしい変化を遂げる現代社会において生き残っていくために自分自身を変えていくことが重要という意味だと思います。
一方、「不易流行」という言葉があります。この言葉は俳聖・松尾芭蕉の言葉として伝えられています。芭蕉一門の俳風を述べた「不易流行其基一也」という文章があり、「不易」とは「人の心か社会の隆替まで世の中の森羅万象を司る不変の法則、時を越えた心理」のことを指し、「流行」とは「時代性や環境条件により時に法則を打破する様々な変化」を指すそうです(サントリー不易流行研究所より引用)。
私達、外科医にとっても腹腔鏡手術や3D画像をはじめとした技術革新は著しく、臨床の場に積極的に取りいれることで患者さんにとって大きな福音となっています。しかし一方で、患者さんへの敬意や感謝の気持ち、患者さんの病気を治したいという外科医としての熱い気持ちやprofessionalとしての倫理性の重要性は未来永劫変わらない、変えてはいけないものだと思います。さらに科学的な最新の知識や技術を常に吸収し、それに基づいて冷静な観察を行い判断を下すことも医師である以上必須で、変えるべきではないことだと思います。
群馬大学では外科学講座の再編が行われ、来春には大講座制に移行することが決定しています。旧第一外科、第二外科の関連病院では人事に関して様々な憶測が流れて、動揺している先生方もいると耳にします。人事は1. 群馬県の外科医療を堅持していく、2. 外科医のモチベーションを保ち、継続的に成長できる環境を整える、などの原理原則に従ってすすめられるべきであると考えています。制度改革を「流行」と考えればこの原理原則は「不易」といえるのではないでしょうか。
私達は、変化著しい現代社会に生きる外科医として、変えるべきものと変えるべきではないものの両方を常に考え、それを見極めていくことが求められていると感じています。
https://blogs.itmedia.co.jp/itsolutionjuku/2020/12/post_880.html 【不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず】 より
「いま何ができるか、何が得意かは重要だとは考えていません。必要とされるテクノロジーはどんどん変わります。だから新しいテクノロジーが登場したら直ぐに試してみる好奇心、そして、基本とか基礎とかを正しく理解していて、原理原則に立ち返って物事を考える人を採用するようにしています。」
数年前、ベトナムに行った時に、地元システム会社の採用担当者から聞いた話しだ。そういう人材は、きっといつの時代にも変化に翻弄されることなく、必要とされ続けるのだろうと気付かされた。
テクノロジーが変わることに臆するのではなく、むしろ歓喜して試してみる、やってみる人が時代を牽引してゆく。また、「新しいことが好きだから」というだけではなく、物事の本質を問い、原理原則に立ち返って新しいことを冷静に捉えることができる知識や態度がなければ、新しいことを活かすことなどできない。
これについて、先人は次のように語る。
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」
松尾芭蕉が、奥の細道の旅を通じて会得した言葉だ。
時代を経ても変わることのない本質的な事柄を知らなければ基礎はできあがらず、変化を知らなければ新たな展開を産み出すことはできないという。
「その本は一つなり」
両者の根本ひとつである。
「不易」とは変わらないもの。どんなに世の中が変化し状況が変わっても絶対に変わらないもの、変えてはいけないものという意味。一方、「流行」は変わるもの。世の中の変化に従って変わっていくもの、あるいは変えてゆかなければならないもの。
「不易」のなんたるかを知っているからこそ、新しいこと、つまり「流行」の意味や価値を知ることができる。この両者を結びつけ新しい組合せを見出すことが、イノベーションの本質だ。それができる人材は、いつの時代にも必要とされる。
「流行」に惑わされず、「不易」つまり原理原則を問い、その時々の最適な「流行」を使いこなし、どんどんとこれを変えてゆく。テクノロジーの発展が急激にすすむいまの時代にあっては、あらためて、この基本に立ち返る必要がある。
テクノロジーの発展が既存の人間の仕事を奪うのは、いつの時代も同じだ。だからこそ、生き残り、成長してゆくためには、まずは原理原則を問い、時代の変化に応じたやり方を作る力が求められる。私たちは、そうやってテクノロジーと共存し、さらに豊かで魅力的な社会を作ってゆくことができる。
コロナ禍にあっても変わらない「不易」すなわち原理原則がある。いま注目されるテクノロジーやビジネスのキーワードは、そんな「不易」の体現である「流行」にすぎない。ならば、その「流行」を試し、それを生みだす原理原則たる「不易」を知ろうとすることだ。
「流行」という具体と「不易」という抽象の往復運動を繰り返すことで、私たちは、時代の流れを知り、ビジネスの道筋を見極めることができる。
コロナ禍は「流行」を加速するが、「不易」は変わらない。コロナ禍が終息したとき、世の中のあまりの変容に驚く浦島太郎にならないためにも、物事の原理原則を見極める努力を惜しんではいけない。
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