疫病と人類知 ①

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82468 【世界的知見による『新型コロナウイルス』に立ち向かうための心得】 より疫病と人類知(1)

ニコラス・クリスタキス医師

プロフィール

医師であり公衆衛生学の研究者であり、社会的つながりを解き明かしたネットワーク科学の先駆者である知の巨人、イェール大学ヒューマンネイチャー・ラボ所長ニコラス・クリスタキスによる疫病と”人類知”の攻防を描いた『疫病と人類知 新型コロナウイルスが私たちにもたらした深遠かつ永続的な影響』。

今、もっとも求められた世界的権威による最高の知見から、抜粋してお届けします。人類は数々の疫病と戦って歴史を紡いできた。わたしたちは「希望」を必ず見いだせる!

『新型コロナウイルス』がもたらした破滅

人類はこれまで、医学、公衆衛生、通信、技術、科学において進歩を遂げてきたが、今回のパンデミック(感染症の世界的大流行)は、過去のパンデミックに劣らぬほどの破滅をもたらしている。

誰にも看取られずに亡くなる人たち。愛する家族に別れを言うこともできず、きちんとした葬儀を執り行い弔うこともできない。生計が破壊され、教育の機会が奪われる。食料の配給を受けるために列を作る。拒絶、おそれと悲しみと痛み。2020年の8月1日時点で、15万5000人を超えるアメリカ人が、そして世界では68万人を超える人々が亡くなっており、この数に含まれていない人も数多くいる。迅速なワクチン開発が実現しようがしまいが、パンデミックの第2波が差し迫っている。

ウイルス封じ込め対策は“やり過ぎ”…!?

だが、この猛襲のさなかでさえ、ウイルス封じ込め対策はやり過ぎだと多くの人が思っている。アメリカ人のなかには、こうした対応は度が過ぎていると思っている人もおり、これもまた、厳しい現実を受け入れることができないアメリカという国の現状を物語っている。しかし、この考えは2つの点で間違っていると思う。

第1に、ウイルスを抑えて死亡者をこの規模に留める“だけ”でも、21世紀の富とノウハウなどの並外れた力が必要となるのだ。2020年春のパンデミックの第1波に対処するために、遅ればせながら集めたリソースを活用できなかったならば、はるかに多くの、おそらくは100万人のアメリカ人が亡くなっていただろうと、多くの優秀な科学者たちは考えており、わたしもこの見解に同意する。

一部の人たちのように、このCOVID-19(新型コロナウイルス)のパンデミックを、その影響を軽減させようと尽力しないで(または尽力したとしても!)通常の季節性インフルエンザと同等にみなすならば、現実を読み誤る。

第2に、現代人がパンデミックの課す苦難に遭わずにすむと考えるならば、あるいは別の時代の人々が、わたしたちと同じおそれや孤独、分裂に、マスクや事業閉鎖を巡る同じような戦いに直面しなかったと考えるならば、友好と協力の呼びかけを経験しなかったと考えるならば、歴史を読み違えている。別の時代の人々も、わたしたちと同じことに直面し経験したのだ。

2020年1月末、ウイルスが勢いを増しつつあったとき、イェール大学のわたしの研究グループでは、有能な若手科学者とスタッフの多くに、このウイルスに重点的に取り組んでもらうことにした。まず、中国の研究者と協力し、中国の数百万人の携帯電話のデータを用いて、2020年1月と2月のウイルスの伝播を追跡した研究を発表した。次に、ホンジュラスのコパンの隔絶された地域におけるウイルスの生態と影響についての研究計画を立てた。わたしたちはその地を長期間のフィールド研究の場として、176の村で暮らす3万人の住民と緊密な関係を築いていた。また、選挙や抗議活動などの大勢の集まりが、アメリカでのウイルスの伝播とどのように重なるかについても調査を開始した。

目の前の脅威に対処するための道を示したい

本書を執筆した動機には、社会が目の前の脅威に対処できるようになってほしいという願いも込められている。2020年3月中旬、イェール大学は閉鎖した――もっとも、わたしの研究室をはじめ、多くの研究室はリモートで仕事を続けた。本書は同年の3月から8月にかけて執筆した。その間は、バーモント州の自宅で妻のエリカと10歳の息子とともに閉じこもって過ごした。成人した子どもたちも、この病気が発生する前に営んでいた生活からやはり切り離され、時折わたしたちの家に身を寄せた。

わたしは、今誰もが直面していることを生物学的にも社会学的にも人々が理解する手助けができたらと思う。人間が過去に同じような脅威にいかに立ち向かったのか概略を示し、たとえ大きな悲しみを経たのちであっても、やがてたどり着くこの問題の向こう側へいかにして到達するのか説明したいと思っている。感染症や命にかかわる病を理解する力は、公衆衛生教育や、地球規模の健康介入の実施、末期患者と遺族をケアするホスピス医師、ネットワーク・サイエンスを用いた感染分析、社会現象を研究するアカデミックな社会学者といった、わたしの長年の経験がそのまま基盤になっている。

とはいえ、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、今なおとらえどころがない。現時点でも、生物学的に、臨床的に、疫学的に、社会的に、経済的に、政治的に知られていないことが多々ある。その理由の1つは、わたしたちの行動が事態の行く末を変えるからだ。何が起きるのかを確実に知ることは難しい。それに、時間を経なければ明らかにならないことも多い。たとえば、感染による健康への長期的影響や、現在行われている感染症対策がもたらす長期的影響(物理的および社会的距離の確保が、子どもたちの精神衛生と教育、現在成人を迎えている若者世代の経済的見通しに、どのような影響を与えるか)などだ。

また、ワクチンが実用化されるかどうか、いつ実用化されるのか、どの程度のリスクを伴うのか、有効期間はどのくらいかについても定かではない。こうした不確実性はあるが、幅広く検討された意見と科学的事実の最良の解釈を入手し、個人として社会として、現時点で可能な最善の決断を下さなくてはならない。

疫病の流行は終わりを迎えた。だが、そこまでどのようにして至るかが、わたしたちの在り方と、この古代からの脅威をいつ屈服させるのかを定めることになる。


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82470 【「人気者」へのワクチン接種が有効!? スーパー・スプレッダーの実態】より

「つながり」の多い人がスーパー・スプレッダーになる?

個人のR0(※1 ページ下部参照)に大きなばらつきがあるエピデミック(特定の社会、共同体における予測を超えた感染症の流行)は、多くのスーパー・スプレッダーとスーパー・スプレッド現象(1人の患者が大人数に感染させる現象)とともに現れる。これがSARS-1(※2 ページ下部参照)で起こったことだ。

SARS-1では、1つの感染連鎖が始まるためには4人の感染者の流入が必要だったと推定される(ほかの3人の感染者の流入はエピデミックを発生させずに終わる)。だが、いざアウトブレイクが発生した場合には、爆発的に流行する可能性が高かった。SARS-2(※2 ページ下部参照)に関しては、R0のばらつきはSARS-1よりもいくらか小さいようで、スーパー・スプレッド現象は確かに発生するものの、よくある単調な感染連鎖に比べてあまり見られない。

スーパー・スプレッド現象およびR0であれRe(※1ページ下部参照)であれ再生産数のばらつきの原因は、やはり病原体だけではなく宿主や環境にも関係する可能性がある。宿主の個人差は重要である。理由はよくわからないが、多くのウイルスを排出したり、より長期間ウイルスを排出したりして、さらに多くの二次感染を引き起こす者もいる。また、咳が出るかどうかにも人によってばらつきがあり、咳をしやすい人はウイルスを拡散させやすい。行動の個人差も重要だと言える。大人数での社交を好む人や、手洗いをおろそかにしがちな人は、スーパー・スプレッダーになる可能性が高いかもしれない。

※1

R0とは、“その病気にかかったことがなく、抗原に曝露されておらずきわめて感染しやすい集団における”一次感染者が引き起こす二次感染者の予想平均数である。R0は、病原体がアウトブレイクを発生させる能力を表し、病原体を制御する手段がない場合の感染性の度合いを示している。一方でReは、集団がすでに“抗原に曝露されている”場合に、流行の後期における感染のリアルタイムの広がりを示す。このReは人間の反応に影響を受けやすい。

※2

SARS-1 2003年に出現し、小規模なパンデミックを引き起こしたコロナウイルス科のウイルス。SARS-CoV-1とも呼ばれる。

SARS-2 2019年に出現し、大流行を引き起こしたコロナウイルス科のウイルス。SARS-CoV-2とも呼ばれる。

政治家はスーパー・スプレッダーになりやすい?

スーパー・スプレッド現象が発生する原因のなかには、単に、日常生活で多くの人と接触するか、社会的つながりが普通の人よりも多いという事実によるものもあるだろう。公平に言って、人気のある人は自身が感染する可能性が高いだけではなく、多数の人に感染させる可能性も高い(新型コロナウイルス感染症のパンデミック初期に感染した多くの政治家や俳優が、その例として挙げられる)。

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たとえば、上記の図の、105人の実在の人物を示す社会的ネットワークを検討してみよう。丸印は人で、線はその人たちの間の友情を示す。Aという人物は4つのつながりをもち、Bという人物は6つのつながりをもっている。BのほうがAよりも病原体を広めやすいことになるだろう。次にBと比較してCという人物を見てみよう。両者とも6つのつながりをもっている。しかし、Cにはまた別の特性がある。Cの友人はBの友人よりも多くのつながりをもっているのだ。これにより、図からもわかるようにCがネットワークのなかで中心的な存在になっている。これはつまり、CはAやBと比べて、病原体を多くの人に速く広げる可能性があることを意味する。

集団免疫の鍵は「人気者」が握っている

現実世界の社会的ネットワークの多くでは、大半の人の交流の幅は狭く、ごく少数の人だけが数多くのつながりをもっている。このような少数派の人たちが、スーパー・スプレッダーになることが多い。そのため、SARS-2はこうした幅広い人脈をもつ人たちに感染しやすく、彼らが多くの人に感染を広げる可能性が高いのだ。

その証拠に、スーパー・スプレッダーのいるこのようなネットワークで病気が拡大する数理モデルは、新型コロナウイルス感染症の実際の症例の軌跡をしっかり反映している。とはいえ、接触者をどのように定義するか突き止めるかにしろ、接触者の数が多いというだけでは、必ずしもスーパー・スプレッダーであることにはならない。SARS-2の人から人への感染が検査で最初に確認されたイリノイ州の夫婦の接触者を、衛生当局が追跡したところ、372人の接触者の誰1人として感染していなかったこともあった。

人気者にワクチンを打つことが有効?

人々の交友関係や人脈の多寡に自然なばらつきがあることには、さらなる意味合いがある。つまり、集団免疫と呼ばれる重要な閾値に達するまでに、実際にはそれほど多くの人がウイルスにさらされる必要がないかもしれないのだ。集団免疫とは、集団全員が個別に免疫をもたなくても、感染症に対して集団的に免疫をもてるという考え方だ。この用語は獣医学に由来するが、人間にも同じように適用される。

その概念は、ある病気に対して集団の多数の人々が免疫を獲得していれば(病気にかかって生き延びたか、ワクチン接種によって)、集団のなかの個人が何らかの形でその病気に感染しても、他人に感染させる可能性は低いというものだ。したがって、どういうわけか感染の連鎖が始まったとしても、やがて消滅することになる。

だが、ここで再び社会的ネットワークの構造が登場する。社会的つながりの多寡は人によって差があるので、多くのつながりをもつ人気者(Cのような人)は、同じ集団から無作為に選ばれた人よりも、エピデミックの初期に感染しやすくなる。社会的交流が多いため、人気のある人は病気にさらされるリスクが高くなるのだ。たとえば、わたしの研究室で2009年のパンデミック・インフルエンザ(H1N1)のアウトブレイクを分析したところ、友人が1人増えるごとに、エピデミック時に8日早くインフルエンザに感染する傾向があることが判明した。つまり、図のBはAよりも友人が2人多いので、Aよりも16日ほど早く感染するということになる。

だが、これは一方で、人気のある人はエピデミックの初期段階で免疫ができる可能性が高いことも意味する。そして、人気のある人たちがみな早期に免疫を獲得した場合、ウイルスが社会に広まる比較的多くの経路が遮断されることになる。人気のない人たちは、もともとあまり他人を感染させないので、疫病対策の観点からはさほど気にしなくてもかまわない。よって、彼らの免疫はさして問題にならない。さらに言うなら、多くのつながりをもつ人にワクチンを接種するほうが、少ないつながりの人にワクチンを接種するよりも有効だということになる。

人気のない人たちはウイルスにも人気がない

スーパー・スプレッド現象を起こすその他の要因としては、屋内に大勢の人が集まる状態が挙げられる。2020年2月29日にジョージア州で行われた葬儀で、誰かが参列者200人の間にウイルスを広め、これが同州で広範にわたりエピデミックを勢いづかせるきっかけとなった。2月にボストンで開かれたバイオテクノロジー企業の幹部会議でも、同様の事態が生じた。このときは数十人が感染した。

さらに、刑務所、高齢者施設、病院、工場、ほかにも人が密集する屋内で、大勢が感染するアウトブレイクが発生した。パンデミック初期の中国で3人以上の患者が発生した318件のアウトブレイクを調査した結果、1件を除いてすべてが屋内で発生したことがわかった。

SARS-2には、大きな脅威となる特徴がある

スーパー・スプレッド現象による肯定的影響の1つは、スーパー・スプレッド現象を起こしやすい人や環境を特定できれば、感染制御対策に的を絞ることができ、効力と効率の両方の面で大きな前進につながるということだ。必ずしも社会的交流をすべてやめる必要はない。たとえば、混み合った集会やナイトクラブなどに狙いを定めればいい。また、宗教行事やその他のイベントを屋外やオンラインで行ってもいい。

もう1つの比較対象として、今回のエピデミックに先立って起きた、致死率の高い別のコロナウイルスのエピデミックについて、少し検討を加えることにしよう。それは、中東呼吸器症候群(MERS)だ。MERSが最初に確認されたのは2021年で、症状はSARSの2つのパンデミックと非常によく似ている。2020年時点で、MERSは世界で約2500の症例しか発生していない。そのほとんど(80%)はサウジアラビアだが、その他26ヵ国でも発生しており、大半は中東を旅行した人たちだ。この病気もやはりコウモリに由来するが、中間宿主のラクダは数十年前にウイルスを獲得したとされている。感染したラクダとの接触(またはラクダの肉や乳の摂取)は、MERS感染者との実質的接触と同様に、感染につながるおそれがある。

MERSの推定CFRは35%なので、SARS-1の約3倍の致死率に当たる。とはいえ、R0は低い。人から人への感染は簡単に起きない。ほとんどの症例は、親密に接触する家族や、感染した患者を看護する医療従事者の間で発生する。いくつかの研究では、MERSのR0は実質的に約1.0、あるいはそれを下回るとされている(ほかの研究ではR0は2.0から2.8と見積もられた)。これまで述べたように、このような低い数値は「エピデミックの閾値」を下回ることになる。R0が1ということは、各患者がウイルスを感染させるのは新たに1人だけということで、エピデミックの規模拡大は実質的に不可能になるからだ。

疫学の基本的なパラメーターを改めて検討すると、2003年のSARS-1と比較して、2020年のSARS-2には、さらに大きな脅威となる特徴があることが見て取れる。

ほとんどの場合、SARS-2のR0は、SARS-1のR0とほぼ同じ約3.0と推定されている。これは病原体としては気になる高い数値である。これに対し、通常の季節性インフルエンザのR0は、0.9から2.1である。だが、SARS-2はReのばらつきが小さいので、感染連鎖が行き止まりになる可能性がやや低く、SARS-1よりもSARS-2のほうが、確実に拡大しやすくなる。また、SARS-2はSARS-1よりも致死性が低く、CFR(致命割合)は1%程度である(SARS-1は約10%だ)。

世界の60%が新型コロナウイルスに感染する

これまで見てきたように、逆説的ではあるが、このことがSARS-2の問題をさらに厄介なものにしている。なぜかと言えば、より多くの人々が生き延びて、より長時間動き回り、ウイルスを感染させるからだ。最後になるが、おそらく最も重要な点としては、SARS-1とは異なり、SARS-2には正の不一致期間があることが挙げられる。これにより無症状感染が起こり、検出と検疫に基づく従来の公衆衛生では対応がきわめて難しくなる。

以上の要因をまとめると、SARS-2はパンデミックが自然消滅する前に集団の大部分が感染する可能性が非常に高い、ということになる。発病率という疫学のパラメーターがある(エピデミック収束時の集団内の感染者総数を集団の総数で割ったもの)。SARS-1の場合、パンデミック収束までに感染した人は人類のごく一部で、当時の世界人口63億1400万人中8422人だったので、発病率はわずか0.00013%と非常に低かった。だが、SARS-2の場合は、おそらく世界人口の少なくとも40%、ことによると60%も感染することになるだろう。


https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82479 【何十万人もの人がマスクで死を免れる! 知の巨人が説くマスクの重要性】より

マスクは「公共の利益」

病原体が1つの集団に完全に行き渡ったとき、多くの封じ込め策はもはや必要なくなり、エピデミック(※1)は収束する。それまでは、エピデミックを消滅させるためにRe(※2)を1未満にしなくてはならない(つまり、現存する各症例がもはや自己複製できないということだ)。だが、収束までは封じ込めと損害の軽減が目標となる。この目標を達成するために、わたしたちが使えるさまざまなNPI(※3)を検討してみよう。

まずは、衛生対策からだ。手洗いのような個人の行為と衛生管理のような集団的対策の両方が、感染症と闘うためには非常に重要になる。1940年以降に生まれたアメリカ人は、清潔な食べ物と水を(たいていは)手に入れられるので、衛生の重要性をほとんど認識しておらず、感染症がもたらした大混乱は記憶にない。

1900年の平均寿命は、主に5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子どもが多かったことから低かった。当時、心臓病や癌による死因は、肺炎やジフテリア、下痢などの感染症ほど多くなかった。

マスクはエピデミックの初期には論争の的となり混乱を招いたが、1918年のパンデミックの時期に撮られた街角の写真からもわかるように、呼吸器疾患と闘うために長年使われてきた。当時の人々も、この単純な介入が有効であることを理解しており、マスクの有効性に関する詳細な科学的研究も100年前に発表されている。2020年5月までに、アメリカではマスクが普及した地域もあるが、悪質な反発に直面した地域もあった。多くの企業ではオフィスビル等に立ち入る際にマスクの着用が求められ、地方自治体や州はマスク着用を義務づける条例を可決したが、またしても市民の激しい抗議や抵抗に遭った(条例の撤回につながることもあった)。

※1 エピデミック

特定の社会、共同体における予測を超えた感染症の流行

※2 R0

R0とは、“その病気にかかったことがなく、抗原に曝露されておらずきわめて感染しやすい集団における”一次感染者が引き起こす二次感染者の予想平均数である。R0は、病原体がアウトブレイクを発生させる能力を表し、病原体を制御する手段がない場合の感染性の度合いを示している。一方でReは、集団がすでに“抗原に曝露されている”場合に、流行の後期における感染のリアルタイムの広がりを示す。このReは人間の反応に影響を受けやすい。

※3 NPI 感染症の流行に対抗するために、薬の代わりに、または薬に加えて用いられる、隔離などの非医薬品介入のこと。

パンデミックは必ず再発する

呼吸器系のパンデミックは再発する。

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上図は、過去300年の間にインフルエンザによって引き起こされたパンデミックに焦点を当てたものだ。パンデミックは数十年ごとに必ず現れる。とくに深刻な呼吸器系のパンデミックは、50年から100年ごとに発生している。新型コロナウイルスが最後のパンデミックになることはないだろう。

実際、わたしたちが新型コロナウイルス感染症の初期段階に対処していたときでも、2020年の夏に、中国で豚の定期調査中に新たなインフルエンザ病原体(深刻度は不明)が発見されたとの報告があった。現在進行中のコロナウイルスのパンデミックと時期を同じくして、まったく異なる病原体によるパンデミックに直面するような事態などは、考えただけでも恐ろしい。だが、脅威は常に存在する。

新型コロナウイルスは苦悩をもたらす一方で、新たな可能性も示した。活動の休止は、きれいな空気と、気候変動の対処に必要とされる削減量(持続的な方法で、という意味だが)と同等の炭素排出量の削減をもたらした。団結してNPI(※1)を実施することで、集団的な意志の重要性を認識し、経済的不平等から人種的不公平、医療の不備に至るまで、この社会に長年存在する問題に取り組むための政治的行動のきっかけを作った。

一瞬で巨額の資金を投入できる政府の力は、重要とみなす脅威に対処するために政府が擁する途方もない経済力を、目に見える形で証明した。パンデミックは、教訓となる実例のような役割を果たした。「ほらね? 何が可能かわかったでしょ?」と。

※1 NPI(nonpharmaceutical interventions)

感染症の流行に対抗するために、薬の代わりに、または薬に加えて用いられる、隔離などの非医薬品介入のこと。

疫病と希望は人類の一部

また新型コロナウイルスのパンデミックは、わたしたちの互いの結びつきを、そして共同体の豊かさがそのなかで最も弱い人々によって決まることを、きわめて具体的に示した。

アメリカや世界各地に存在する感染の温床となりかねない脆弱な集団は、重要な道徳的懸念を提起するうえに、連帯を示すことを身をもって証明する。致命的な感染症が猛威を振るっているときに、弱者の世話をすることは強者の利益にかなう。そして、効果的な病気の封じ込めは、当然ながら、個人のニーズよりも集団のニーズを優先させることである。

微生物は、人類発祥以来、わたしたちの進化の軌跡を形作ってきた。感染症も、何千年も前から同様の役割を果たしてきた。感染症は最初からずっとわたしたちの物語の一部であった。わたしたちは、生物学的、社会的手段を駆使して、以前から感染症を克服してきた。生活はやがて平常に戻るだろう。疫病は必ず終わる。そして、疫病と同じように、希望は、人間が生きるうえで常にわたしたちの一部なのである。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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