マグノリア

https://shimafukurou.hatenablog.com/entry/2021/07/17/090748 【「マグノリアの木」とはどんな木か】より                                                                        

宮沢賢治に『マグノリアの木』(1923年)という短編の作品がある。仏教の教えに基づいて書いたものとされている。その内容は,諒安(りょうあん)という人(お坊さん?)が霧のかかった険しい山谷を歩いていて,やっと平らな所にたどり着いたとき霧が晴れた。振り返ってみると,今たどって来た山谷のいちめんに真っ白な「マグノリアの木」の花が咲いていたというものである。この平らな所というのは,仏教でいう「さとり」の境地ということらしい。

しかし,「マグノリアの木」とはあまり聞きなれない名である。いったいどんな木なのだろうか。 植物図鑑を調べても記載されていない。多分,「マグノリアの木」は賢治の造語と思われる。「マグノリア ( Magnolia )」 という言葉自体は,学術的にはホオノキ,コブシ,タムシバ等のモクレン属の木の総称を指す言葉である。よって,「マグノリアの木」とはこの内のどれかかであろう。

賢治は,『マグノリアの木』の中で,「マグノリアの木」の花を真っ白い鳩(はと)に喩えている。

それは一人の子供がさっきよりずうっと細い声でマグノリアの木の梢(こずえ)を見上げながら歌ひだしたからです。「サンタ,マグノリア, 枝にいっぱいひかるはなんぞ。」

向ふ側の子が答へました。 「天に飛びたつ銀の鳩(はと)。」

こちらの子が又うたひました。

 「セント,マグノリア,  枝にいっぱいにひかるはなんぞ。」

 「天からおりた天の鳩。」

    -中略―

あの花びらは天の山羊の乳よりしめやかです。あのかをりは覚者(かくしゃ)たちの尊い偈(げ)を人に送ります。 

                    (『マグノリアの木』 宮沢,1986)

モクレン属の中で花が一見して鳩に見えるのは,その花の色,大きさ,姿からして「コブシ」である(第1図)。「コブシ」の花弁は,白色で6個,3個の萼には銀色の軟毛が密生している。そして,花は香りを放ちながら上向きに空へ向かって開く。「コブシ」のつぼみは,南側からふくらみ始めるのでつぼみの先端は,ほとんどが北の方向を向くのだという※。北の天空には北極星(Polaris)があり,また賢治の理想郷でもある「ポラーノの広場」や「イーハトーブ」がある。賢治は,「コブシ」(学術名:Magnolia kobus )を指して「マグノリアの木」と言っているのだと思われる。

第1図.コブシ(天に飛びたつ銀の鳩).

県立大磯城山公園でも,もみじの広場に「コブシ」が植栽されている。3月から4月にかけて真っ白い「コブシ」の花が満開になる。賢治の言葉を借りれば,枝に止まった純白でしめやかな鳩の群れがまさに天に向かって飛び立つようにも見えて見事である。

賢治を魅了する「コブシ」の花には,いくつかの面白い事実が知られている。花の中を覗くと,雌しべを構成している多数の心皮があるのに気が付く。そして,心皮がDNAのように螺旋状に花床の上部に配列していている。これは,原始的な植物の特徴とされている。さらに,1982年,弥生時代の住居の発掘現場(約2000年前)からコブシの種子が見つかったが,この種子をまいたら,発芽し11年後に真っ白い花が咲いたという(大歳の自然,2021)。まさに,コブシの花は時空を超えて天から降りてきた鳩のようにも見える。

引用文献

宮沢賢治.1986.宮沢賢治全集 全十巻.筑摩書房.東京.

大歳の自然.歴史.p18-49.http://ootoshi-comm.info/pdf/chiiki/hakkobutsu/ayumi/kyoudo_03_rekishi.pdf

本稿は,『宮沢賢治に学ぶ 植物のこころ』(蒼天社 2004)年に収録されている報文「マグノリアの木とはどんな木か」を加筆・修正にしたものである。コブシについてはブログページ「『なめとこ山の熊』に登場する薬草」でもふれているのでご覧下さい。  

※:コブシの蕾が北を向くとあるが,私が観察したところでは必ずしもそうとは言えないところがある。


https://1po2ho3po.com/archives/7875/ 【マグノリア、満開】より

今年もマグノリアの花がいっぱい咲いています。

さてマグノリアとコブシ、モクレンって、花は同じようにみえるけれど、どう違うんだろう・・・。

「趣味の園芸」によると、日本原産のコブシなど、中国産のモクレンやハクモクレン、ヒマラヤ地域のキャンベリー、北米のキモクレンなどを交配させて生まれた園芸品種をマグノリアと総称しているとのことです。

ふむふむ、そうなんだー・・・。でもGREEN WALKのマグノリアは大きな実がなります。それはモクレンにはならない、花と同じくらいの大きなグロテスクな実。ですので私としては大なり小なりこの実ができるのがマグノリア、できないのがモクレンと思っていました。またモクレンと違って花がヒラヒラと開くのがコブシと私なりに見分けていますが。

このあたりでは桜の開花より前に、今、マグノリア、モクレン、コブシなどが満開です。

今朝は薄氷が張っていました。出かけた先の原村では小雪がチラチラ。冬に舞い戻った1日でした。


https://1po2ho3po.com/archives/9981/ 【マグノリアの実が「見たな」と。】より

小雨降るどんよりした天気で、昨日より一段と寒くなりました。

玄関わきのシモクレンの葉も少しずつ黄色に、そして実は緑から紫へと変わって来ています。

以前は実がなるのをマグノリア、実がならないのはシモクレンと思っていた私ですが、マグノリアは学名で、モクレンはマグノリアの1つということだそうです。

そのマグノリアの実はグロテスクで凄く重量感があります。

昨年、アルジが頭にマグノリアの実が落ちてきたら痛かったと言っていましたが、今はマグノリアの実はしっかり枝先についています。

そのずっしり重たい実15cm位の長さのを2、3日前に1個採って飾っておいたら、その実がはじけて中から赤い実がのぞいていて、「見たな」と言われているような雰囲気にいささかギョッとしました。

赤い実のパワーに押されたような、そんな感じ。

1粒1粒は大きめの枝豆ほどの大きさ。でも食べられませんよ。


https://greensnap.jp/greenBlog/18318787 【マグノリアとはモクレン科の花の総称で、香りの良い花を咲かせます。】より

🌸マグノリアは香水にも使われるほど香りの良いお花です マグノリアの仲間にはホオノキ、キモクレン、シモクレン、ハクモクレン、コブシ、タイサンボク、オガタマノキ、カラタネオガタマ、ベニバナカラタネオガタマ、オオヤマレンゲ、ユリノキなどがあり香りの良い特徴的なお花を咲かせます 2022.5月のホオノキとベニバナカラタネオガタマを追記しました 2023.4月キモクレンを追記しました(以下略)


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%B3%E7%A7%91 【モクレン科】より

モクレン科(モクレンか、学名: Magnoliaceae)は、モクレン目に属する被子植物の科の1つである。2属230–340種ほどが知られ、コブシ、ホオノキ、オガタマノキ、タイサンボク、ユリノキなどを含む。すべて常緑性または落葉性の木本であり、精油を含み、葉は単葉で互生する。托葉は芽を包み、早く脱落する。花は大きく、ふつう3数性の花被片をもち、多数の雄しべと雌しべがらせん状についている(図1)。果実は集合性の袋果または翼果。アジア東部とアメリカに隔離分布するが、世界各地で観賞用に植栽されている。

特徴

常緑性または落葉性の高木から低木[5][6][7][8](下図2a–c)。節は多葉隙、多葉跡性[9][10]。道管の隔壁はふつう階段穿孔[9]。植物体はふつう精油をもつ[7][9]。ふつうアルカロイドを含む[9]。フラボノイドとしてケンペロールやクェルセチンをもつ[9]。アルブチンやエラグ酸を欠く[9]。

2a. ユリノキ

2b. コブシ

2c. モクレン(シモクレン)

葉は互生でふつう螺生し(下図2d)、ときに枝先に集まってつく(ホオノキなど; 下図2e)[5][6][1][8][9]。葉は単葉、葉柄をもち、葉脈は羽状[5][6][7][1][8][9](下図2d–f)。葉身はふつう全縁だが、ユリノキ属では頂端と左右に切れ込みがあり、特徴的な形態となる[6][1][9](下図2f)。

2d. タイサンボクの葉

2e. ホオノキの葉と花芽

2f. ユリノキの葉

芽は合着した2枚の托葉からなるキャップ状の芽鱗で覆われる[5][6][7][1][10](下図2g, h)。この托葉は早落性であり、しばしば枝を一周する托葉痕を残す[6][7][10](下図2g, i)。

2g. ユリノキの冬芽: 頂芽の芽鱗が開いている

2h. シデコブシの芽: 2枚の芽鱗が開きかかっている

2i. コブシの黄葉と芽: 枝に輪状の托葉痕が見られる

花は大きく、放射相称、枝の先端または葉腋に単生する[5][6][1][8][9](下図2j–l)。ふつう両性花、まれに単性花で雌雄異株または雄性両性異株[6][1][8][9][11]。花被片は離生、6–9(–45)枚、ふつう3枚ずつ2–多輪につき(下図2j–l)、花弁状だがときに最外輪が萼片状(下図2k)[5][6][7][1][9]。雄しべや雌しべは多数、しばしば伸長した花托(花軸)にらせん状につく[6][7][1][8][9][10](下図2j, l, m)。雄しべは離生、求心的に成熟し、花糸はふつう太く短く、葯隔はふつう突出する[5][6][7][1][8][9]。葯は細長く、2半葯からなり、沿着し、内向から側向まれに外向(ユリノキ属)、縦裂する[5][6][7][8]。小胞子形成は同時型[9]。タペート組織は分泌型[9]。花粉は2細胞性、単溝粒[5][9][10]。雌しべは離生心皮で多数、ときに数個、有柄または無柄、多少とも花柱が伸長し、柱頭は頂生または花柱に沿って線状、子房上位、縁辺胎座で胚珠は1心皮あたり2-20個、腹縫線上に2列につく[5][6][7][8][9][10][12]。胚珠は倒生胚珠、2珠皮性[8][10]。胚嚢はタデ型[9]。虫媒花であり、甲虫、ハエ目、ハチ目などによって送粉される[6][9][10]。花はふつう匂いを放ち、その成分について比較的詳しく研究されている[13]。

2j. ユリノキの花: 花被片は3枚ずつ3輪につき、最外輪の3枚は萼片状

2k. モクレン(シモクレン)の花: 最外輪の花被片が小さく萼片状

2l. オオヤマレンゲ

2m. タイサンボクの雄しべ群(下)と雌しべ群(上)

果実はふつう裂開する袋果だが(下図2n–p)ユリノキ属は非裂開性の翼果(下図2r)、1つの花の果実が集まって集合果を形成し、ときに部分的に融合する[6][9](下図2n–r)。1個の果実は1–12個の種子を含む[6]。モクレン属では、種子は赤い肉質の種皮で覆われ、果実から出て珠柄でぶら下がる[6](下図2n, p, q)。一方、ユリノキ属では種皮は果皮に融合している[6][7]。胚は小さく、内胚乳は脂質またはタンパク質が豊富[5][6][8][9]。胚乳形成は細胞型[9]。基本染色体数は x = 19[9][10]。

2n. キンコウボク(Magnolia champaca)の集合果(一部裂開している)

2o. オオヤマレンゲの集合果

2p. タイサンボクの集合果(裂開して種子が出ている)

2q. ホオノキの種子(拡大すると細い珠柄が見える)

2r. ユリノキの集合果

分布・生態

東アジアから東南アジアおよび南アジアの一部と、北米東部から南米の一部の温帯域から熱帯域に隔離分布する[5][6][10]。東南アジアでは、森林の重要な構成要素となることがある[10]。

人間との関わり

ハクモクレンやタムシバなどいくつかの種のつぼみ(花芽)は、乾燥して辛夷(しんい)とよばれる生薬となり、鼻炎や頭痛、熱、咳に対して用いられる[6][14][15][14][16](下図3a)。またホオノキやコウボクなどの樹皮も厚朴(こうぼく)とよばれる生薬となる[6]。ユリノキやホオノキなど木材として利用される種もある[8][17][18](下図3b)。多くの種が観賞用に植栽され、さまざまな園芸品種も作出されている(下図3c)[6][19][20]。

3a. 辛夷

3b. 木画経箱、法隆寺献納宝物、奈良時代(ホオノキ材製)

3c. ホワイトハウスのローズ・ガーデンに植栽されたソコベニハクモクレン(サラサモクレン)

系統と分類

モクレン科の花は大型でふつうらせん状に配置した多数の雄しべ・雌しべをもち、このような特徴は被子植物における原始的な特徴とされることが多い[12][21]。ただしこのような特徴は、モクレン科またはモクレン目の一部における派生形質であると考えられることもある[10][22]。

モクレン科には、230–340種ほどが知られる[5][1][10][11]。このうち2種がユリノキ属(Liriodendron)に分類される。残りの種はモクレン属(Magnolia)、オガタマノキ属(Michelia)、モクレンモドキ属(Manglietia)、Manglietiastrum、Kmeria、Pachylarnax、Dudandiodendron、Elmerilliaなど複数の属に分けられることが多かったが[6][12]、2022年現在ではふつうモクレン属にまとめられている[5][1][10][11]。この広義のモクレン属は、15節に分類することが提唱されている[11](下表)。

ユリノキ属とそれ以外の属は葉、葯、果実などの特徴で明らかに異なり、亜科のレベルで分けられることもある(ユリノキ亜科、モクレン亜科)[12][11]。ただしユリノキ属以外の属を全てモクレン属にまとめた場合は各亜科はそれぞれ1属のみを含むことになるため、このような亜科は不要ともされる[10]。


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