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https://note.com/brainy_pansy893/n/nf47582a4cfe6 【俳句を読む 2 津根元 潮】より
松下 育男
秋高しなみだ湧くまで叱りおり 津根元 潮
感情とは不思議なものです。自分のものでありながら、時として自己の制御の及ばないところへ行ってしまいます。この句を読んで誰しもが思うのが、何があったのだろう、何をいったい叱っているのだろうということです。「秋高し」と、いきなり空の方へ読者の視線を向けさせて、一転、その視線が地上へ降りてきて、人が人を叱っている場面に転換します。高い空をいただいた外での出来事であったのか、あるいは大きく窓を開けた室内のことであったのか。どちらにしても叱責の声はそのまま空へ響いています。「まで」という語が示すとおり、いきなり怒鳴りつけたのではなく、切々と説いていた感情が、徐々に自己の中でせりあがり、ある地点を越えたところで、涙とともに堰を切ってしまったようです。ひらがなで書かれた「なみだ」が、怒りでなく、叱るものの悲しみをよく表現しています。相手のことを思う気持が深いからこそ、叱るほうの感情も、逃げ場のないところへいってしまったのでしょう。その叱責は、どこまでも高い空の奥へ、生きることの困難さを訴えかけている声にも聞こえてきます。『合本俳句歳時記 第三版』(2004・角川書店)所載。(松下育男)
「増殖する俳句歳時記」から。
Facebook野口 嘉則さん投稿記事 ·【自己実現の7原則】
第3の原則、感情とのつきあい方を学ぶ
こんばんは、野口嘉則です。今回は、「自己実現のための7つの原則」のうち、第3の原則についてお話しします。
第3の原則は、「感情とのつきあい方を学ぶ」です。では、はじめましょう。
味わいたくない感情って、いろいろありますよね。たとえば、悲しみとか、不安とか、孤独感とか、がっかりとか、残念とか、焦りとか・・・これらの感情は、できるなら味わいたくないですよね。
意外に思われるかもしれませんが、これらの感情が湧いてきたときに、その感情を受け入れ、
ちゃんと感じて味わうことができたら、感情は次第に和らいできます。
感情は十分に感じて味わうと、次第に解放されていって、和らいでくるのです。
(ただし、怒りのような第二感情は、そのまま味わうのではなく、その背後にある第一感情を見つけてその第一感情を感じて味わうといいです。すると怒りの感情も和らいできます)
しかし、感じるにはあまりにも苦しい感情や、感じると呑み込まれてしまいそうな強い感情もありますよね。
そのような感情を無理に感じて解放しようとすることは、おすすめできません。
心のバランスが崩れて情緒不安定になったり、心がダメージを受けたりする場合があるからです。
心の深い傷から来る感情や、トラウマチックな出来事にまつわる感情についても、無理に感じようとしたり、解放しようとすると、心が不安定になることがあります。
余談ですが・・・心理的デブリーフィングという言葉をご存知ですか?
心理的デブリーフィングというのは、1990年代に、災害や事故の被災者・被害者に対する心理的援助法として、よく用いられた方法です。
ジェフリー・ミッチェルという人が考案した方法で、強いストレスを生じるような出来事やトラウマチックな出来事を体験した人に、その体験について語ってもらいながら、その体験にまつわる感情の表出を促す方法です。
この方法がPTSDの予防になると信じられ、1990年代においては、アメリカにおける被災者支援の定番とされました。
(「PTSD」とは、トラウマの傷が後々にまで残り、その人の人生に影響をもたらすこと。「心的外傷後ストレス障害」とも言う)
援助者が被災者にインタビューする形で、体験を語ってもらって、感情の表出を促したり、
あるいは大きな災害が起きた後などに、被災者を何人か集めてグル-プを作り、グループ内で個々の体験を語り合ってもらって、感情の表現を促したり、そのような形で心理的デブリーフィングは行われました。
被災者があまり話したがらない場合でも、「話して感情を解放すれば楽になりますよ」
と促したのです。(この心理的デブリーフィングは、日本にも、阪神淡路大震災の後、
アメリカから紹介され、入ってきました)
ところが、21世紀に入ったころから、心理的デブリーフィングは、PTSDの予防に有効でないばかりか、トラウマ反応を強化してしまったり、トラウマからの回復を遅らせたりする
場合がある、という報告が相次ぎました。
「心理的デブリーフィングを行った直後には、良くなった感じが得られるのだが、将来的にはかえってPTSD症状が悪化する」という実証データも提出されました。
こういった経緯もあって、現在では、国際学会やアメリカの精神医学界において、「被災者に対して心理的デブリーフィングを行うべきではない」というコンセンサスが成立しており、
また、日本でも、『災害時地域精神保健活動ガイドライン』には、「災害直後に体験を聞きだすような介入は有害であり、行ってはならない」と記されています。
トラウマチックな出来事の記憶にともなう強い感情や、長年に渡るストレスにともなう強い感情を安全に扱うには、その感情に圧倒されないだけの強さを持った柔軟かつ丈夫な「心の器」が必要です。まず、「心の器」づくりが先決なのです。
「心の器」の柔軟さと丈夫さが十分ではない状態で、強い感情や根深い感情に無理に向き合うと、その感情に圧倒されてしまって、精神的に不安定になってしまったり、怒りっぽくなってしまったり、トラウマ反応を強化してしまったりすることがよくあるのです。
もう一つ、別の話をしますね。1970年代から1990年代くらいにかけて、主にアメリカの西海岸で、感情のストレートな発散や表出を促すワークショップが流行りました。
日本においても、1980年代以降自己啓発セミナーという形で大ブームになりました。
それらのワークショップでは、「感情の解放」という名目のもとに、感情を喚起し表出させる手法が用いられ、感情をゆさぶられた参加者の号泣する姿が、会場のあちこちで見られました。
高揚した雰囲気の中で、感情を喚起し増幅させる手法を用いるタイプのセミナーもありました。また、怒りの感情などもストレートに表出・発散するよう促すものがかなり多かったようです。
参加者の中には、「スッキリして、楽になった」「素晴らしい体験をした」といった感想を述べる人も多くいましたが、一方、ワークショップに参加したことで情緒不安定になってしまった人や、怒りっぽくなってしまった人や、感情のコントロールができなくなってしまった人もたくさん出たのです。
そのような、セミナーの後遺症を訴える人が1980年代の半ばにたくさん出てきて、一時は社会問題になりました。
丈夫な「心の器」ができあがってない状態で感情をストレートに発散・表出することを繰り返すと、「心の器」が脆弱化したり、損傷することもあります。
上記のようなワークショップの参加者の中には、そのようなことになってしまった方もかなりおられたものと思います。
以上、心理的デブリーフィングの話と感情解放系ワークショップの話を通して僕がお伝えしたかったことは、どんな感情でも感じて味わえばよいというわけではない、ということです。
落ち着いて静かに感じることができる感情については、じっくりと感じて味わうとよいと思います。そうすると、その感情は、徐々に解放されていき、和らいできます。
ですが、圧倒されるような感情や呑み込まれそうな感情や向き合うことに強い抵抗が生じる感情については、無理に感じようとするのではなく、一旦、フタをすることが大切です。
そして、この「フタをする」ことも、「心の器」づくりを促します。
圧倒されるような感情には一旦フタをし、静かに感じて味わえる感情はじっくりと感じて味わう、この繰り返しによって、柔軟かつ丈夫な「心の器」が育ちます。
柔軟かつ丈夫な「心の器」とは、ケース・バイ・ケースで、状況に応じて、感情にフタをすることもできるし、感情を感じて解放することもできる、そんな器です。
そして、「心の器」づくりがさらに進めば、やがて、フタをした感情とも向き合うことができるようになります。
一旦フタをした感情を、静かに感じて、安全に解放できるようになるのです。
というわけで、ここまでのところをまとめますと、感情を感じて解放することも、感情にフタをすることも、状況に応じて、どちらもできるようになることが大切、ということです。
ちなみに、アクティング・アウトを頻繁にする人は感情にフタをする力が弱い、とも言えます。
つまり、自分では抱えきれない感情を衝動的に行動や態度で表してしまう人は、感情にフタをする力が十分ではないわけです。
(アクティング・アウトについて、詳しくは前回の投稿をご参照ください)
ビジネスの世界で普及しつつあるアンガー・マネジメントにおいても、「感情の直接的な発散を頻繁にしていると、心の膜が薄くなって、ますます怒りっぽくなる」ということを教えていますね。
アクティング・アウトを頻繁にやっていると、「心の器」が脆弱化してしまい、感情にフタをする力も弱まってしまうのです。
ただ、アクティング・アウトも心を守る方法の一つですから、それをまったくなくすことはできません。
大切なのは、アクティング・アウトの頻度を少しずつ減らしながら、「心の器」を育んでいくことです。
そして、そのためのカギを握るのが、感情とのつきあい方なのです。
以上、今回は、自己実現のための第3の原則として「感情とのつきあい方を学ぶ」というお話をしました。
感情とのつきあい方に関しては、大切なことがいくつもあり、詳しくお話しすると本一冊くらいのボリュームになりそうな気がするので、いずれ、このテーマで本を書いてみたいと思います。
あと、ご参考までに、感情とのつきあい方を習得する上で、非常に効果的な手法としては、
マインドフルネス認知療法弁証法的行動療法(DBT)アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT)などの手法があります。
これらの手法はどれも、マインドフルネスと心理療法を組み合わせたもので、極めて効果的です。僕もよく活用しており、その恩恵にあずかっています。
ちなみに、マインドフルネスというのは、今この瞬間の自分の心の状態にあるがままに気づくためのエクササイズのことです。
このマインドフルネスは、Google や Intel をはじめとする先端企業が社員のストレス解消や能力開発のために取り入れていることで話題になったので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
さて、今回はこのあたりにしまして、ワークセッションの提案をしたいと思います。
今回はシンプルです。
今回の記事を読んで感じたことや気づいたことを下のコメント欄にご記入ください。
これが、今回のワークセッションです。
前回までも、たくさんの方がコメントしてくださっていて、とても楽しく読ませていただいてます。皆さんの書き込みを読むと、僕自身、視野が広がりますし、多くのヒントが得られます。一つご了承いただきたいのですが、ご質問を含むコメントに対しては、個別にご回答するのは難しいのが現状です(^^;
お一人おひとりのご質問にしっかりお答えしたいという気持ちもあるのですが、ご回答するためには、それなりのボリュームの文章を書く必要があり、たくさんの方がコメントして下さっていることを考えると、ご質問に回答する時間を作る余裕がないのが現状です。
ですので、個別のご質問に対してはお答えできないことをご了承ください m(_ _)m
ですが、皆さんの書き込みは、すべて読ませていただいております。感じたことや気づいたことをアウトプットすることで、理解と気づきが深まり、学んだことが定着しますので、よかったらぜひ、書き込んでみてください。あなたの書き込みを楽しみにしています。
https://meiekisakomentalclinic.com/blog/408/ 【マインドフルネスと弁証法的行動療法】より
院長 丹羽 亮平 先生
名駅さこうメンタルクリニック 院長 丹羽亮平 日本精神神経学会認定 精神科専門医
子どものこころ専門医 日本児童青年精神医学会 認定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医制度指導医 厚生労働省 精神保健指定医
子どものこころ専門医機構 認定指導医
僕は日常的にささいなマインドフルネスを取り入れていますが、(例えば、階段を上るとき、シャワーを浴びる時など。)休日はマインドフルネスを行う時間を約10分くらい、やや長めに設定してます。
マインドフルネスは自分や周囲の出来事を『把握』『対処』するちからのトレーニングであり、最終的に、自分が気持ちに(ある程度ですが…)コントロールする・振り回されないことが目標です。
僕もマインドフルネスの効果があるように感じています。
マインドフルネスについて、境界型パーソナリティ障害に対する弁証法的行動療法(DBT)においても治療の核になることで知られております。
弁証法的行動療法とは、境界型パーソナリティ障害に対し有効性が認められ、特化された治療です。標準的な認知行動療法のにもプロセスを土台として、
①自分自身の感情と行動反応を把握し受け入れることが重要視されている
②治療中の治療者と患者との関係が強調されている
③弁証法的なアプローチ(簡単にいうと、『あるテーマに対し対立した二つの意見を話し合いながら、より高次な回答を導き出す。』という感じでしょうか。)
不安な感情を受けいれるスキル(苦悩耐性スキル)は特にマインドフルネスを行う中で培われると考えられています。
日々のマインドフルネスをみなさんにお勧めしております。
参照:『弁証法的行動療法マニュアル』金剛出版
https://www.youtube.com/watch?v=-QhBp2kkQSc
https://www.armg.jp/journal/glossary/act%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%97%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%82%B9%EF%BC%86%E3%82%B3%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%94%E3%83%BC/ 【ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)】より
[人材/組織開発]
ACTとは
ACT(アクト)とは、Acceptance and Commitment Therapy(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の略称で、認知行動療法の中の1つの心理療法です注1。元々は心理療法やカウンセリングにおいてメンタルヘルスの問題に対し用いられていましたが、近年ではACTトレーニングとして健康な人々への教育などでの活用も盛んになっています。
ACTでは、心理的柔軟性と呼ばれる行動的側面を増やしていくことで、自分の行動を妨げる思考や感情にとらわれることなく、いきいきした生活を送ることを実現しようとします。具体的には、セラピストとの会話や自身の日常での実践を通じて、「いま、この瞬間」自分の中にある思考や感情を受け容れながら(アクセプタンス)、自分自身が大切にしたい価値に向かって行動パターンを作り上げる(コミットメント)ことを目指します。欧米の有名 IT 企業でも取り入れられている「マインドフルネス」の方法も使いながら、行動変容を促す手法として注目されています。
ACTの様々な問題に対する効果は、多数の研究をまとめたメタ分析をさらに20件レビューした論文によっても明らかにされています1)。また産業領域においてもさまざまな研究と実践が行われつつあり、生産性やウェルビーイングの向上との関連が示されてきています。したがって、ストレス対処のセルフケアをはじめ、生活習慣の改善や職場の安全教育、キャリアやリーダーシップ開発等にも活用が期待されています。
心理的柔軟性とは
心理的柔軟性とは、勝手に湧き上がる自分の思考や感情にとらわれることなく、自分自身が大切にしたい考えをより採用し、いきいきとした生活を送るための行動的側面のことです。具体的には専門用語になりますが、アクセプタンス、脱フュージョン、「今、この瞬間」への柔軟な注意、文脈としての自己、価値、コミットされた行為、と呼ばれる6つのコアプロセスから構成される行動のパターンのことを指します。それぞれについて簡単に説明します。
・アクセプタンス:自分の思考や感情をあるがままに観察しようとする
・脱フュージョン:自分の思考の内容と距離をとり、思考とアクションの自動的な結びつきを弱める
・「今、この瞬間」への柔軟な注意:過去を思い出してつらくなったり、将来の心配を延々としてしまったりせずに、現在の瞬間に注意を向ける
・文脈としての自己:自分は○○である、といった思い込みや執着を弱め、自分の中に生じる思考や感情そのものと、それを感じている自分の違いについて区別できるようにする
・価値:望む人生の方向を意識し言語化する
・コミットされた行為:望む人生の方向に向かうための目標を設定し、アクションを実行する
先が見えない予測困難な時代といわれている今、どのように自身の思考や感情と付き合っていくかが大切になります。この状況に適応する鍵である従業員の心理的柔軟性を高めて、生産性やウェルビーイング向上を図るため、人事担当者の方はACTの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
注1 ACTは「認知行動療法の『第三の波』」、または「第三世代の認知行動療法」とも呼ばれますが、近年では文脈的認知行動療法と称されることが多いです。
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