自然を愛し、言葉を愛し、人間を愛した人生

Facebook相田 公弘さん投稿記事· 加島祥造さんの詩です。

あなたが生きているかぎり けっして なくならないものがある。命だ。

あなたが居るかぎり けっして いなくならないものがある。命だ。

あなたが立ち去るとき かならず 共に去るものがある。命だ。

あなたがどこへ行こうと かならず つきそって行くもの それは あなたがこの世から外へ 行くときだってそうだ。おお、だから勇気を持ちなさい。

それは あなたが生きているかぎり かならず 生きようとするあなたをヘルプするものだ

そして死ぬときも--

おお、あなたの命は、先に立って行ってくれるのだ あの未知の邦へ--

なぜなら 命のほうが あなたよりも 勇気があるからだ。

あなたという自意識が 命という無意識に手をひかれて あの邦へゆくのだ。

なぜなら 命はあの邦からきたのであり あの邦を よく知っているからだ。

おお勇気をだして 両腕をひろげ 抱きしめてごらんその時 あなたは知るだろう

命は 愛のことだと。それは誰ひとり あなたから奪えないものだと。

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あなたの命は 誰よりも あなたを愛しているんだ

命はあなたが 夕暮の林のなかを ひとりで歩いている時も あなたと共にいる---

ほかのことは 忘れたっていいんだ

だが忘れないでほしい 命はいつもいつも あなたを愛している

https://book.asahi.com/article/14279121 【加島祥造「タオ――老子」 争わず、自由に生きる道 KADOKAWA・小林順さん】より

 仕事柄、会いたい人に会えることがある。ささやかな交流ではあったが、赤瀬川原平さんと吉村昭さんに接することができたのは大切な思い出だ。一方、ついに会うことの叶(かな)わなかった一人が、『タオ――老子』の著者、加島祥造(かじましょうぞう)さんだ。

 本書は思想家・老子が著した『老子道徳経』の自由現代語訳である。加島さんは英文学者・詩人であり、フォークナーやクリスティーの翻訳者としても知られる。老子には無数の解説書や研究書があるが、加島さんは独自の解釈でこれを現代詩に生まれ変わらせた。

 「天と地のむこうの道(タオ)につながるもうひとつの自分がある。その自分にもどれば人に嘲(あざ)けられたって褒められたってふふんという顔ができる。(中略)たかの知れた自分だけれど社会だって、たかの知れた社会なんだ」「タオの働きをよく知る人は、何か行為をする時、争わないのだよ。争わないで、するのだよ」

 この本に出会ったのは30歳を過ぎた頃だっただろうか。自由な心、争わないことの価値を説く言葉が胸に響いた。以来、迷ったときにいつも読み返す。

 老境に差し掛かった頃、加島さんは都会を離れて信州・伊那谷に移住、老子の教えを実践するタオイストとして生きた。文庫版あとがきには「タオ的な生きかたは、高齢に達した私にもまだできないのです」とある。その心境をじかにうかがってみたかった。

 遥(はる)か遠い時代の言葉がこうして今に届き、私たちの心を動かすことの不思議を思うと、編集者としてなすべき仕事はまだ尽きない。=朝日新聞2021年3月17日掲載

https://www.news-postseven.com/archives/20160119_377951.html?DETAIL 【46万部の詩集『求めない』を生んだ故・加島祥造氏の言葉】より

〈求めない──すると心が静かになる〉〈求めない──するとひとから自由になる〉〈求めない―─すると自分が無意識にさがしていたものに気づく〉──。「求めない──」で始まる短いフレーズを100篇ほど収録したベストセラー詩集『求めない』(小学館)の著者・加島祥造氏が亡くなった(享年92)。同氏は、信州の大自然から“求めすぎる”現代人にどんなメッセージを残したのか。

 加島祥造氏は1923(大正12)年、東京・神田の商家に生まれた。早大を卒業後、信州大や青山学院女子短大などで英文学を教え、フォークナーやM・トウェインなどの翻訳を多数手がけた。若い頃には詩作グループ「荒地」に名を連ねた詩人でもあった。

 その後、古希を迎えて「老子」に出会い、東洋思想に傾倒。長野県南部の伊那谷にひとり移住した。晩年は豊かな自然に囲まれながら、詩を詠み、花木を写生する生活を送った。長男の裕吾氏が語る。

「80代になっても歩くのが速い、頑健な人でした。しかし、一昨年の2月に脳出血を起こし、左半身が麻痺状態に。入退院を繰り返しながら療養していましたが、体の衰えもあり、昨年12月25日に旅立ちました」

 加島氏は2005年の夏から、ふとした瞬間に湧いてきた言葉をノートやチラシの裏に書きつけた。「歩いている時や飯を食っている時も、腹から出てきた」という言葉が積もり積もって詩集に結実した。担当編集者が語る。

「たまたま加島さんの親族に知り合いがいたんです。加島さんが『求めない──』で始まる詩を大量に書き留めていることに気づいて、『まとめると本になるのではないか』と相談されました。もともと世間に発表する予定はなかったのに、読み手を想定しているかのようだった。逃避的スタンスで『頑張らなくてもいい』と自己肯定する癒やし本とは明らかに異なりました」

『求めない』は、〈求めない──すると簡素な暮しになる〉から始まる。基本的に1つの短句を1ページで紹介するスタイルだが、見開き右ページは「求めない──」だけで、左ページにその続きがくるパターンもある。リズムが単調ではなく、余韻を感じさせる構成だ。

 ほぼ正方形(縦14センチ、横13センチ)という珍しい判型も目を引き、2007年7月に初版1万2000部でスタートした同書はすぐに増刷。メディアにも大きく取り上げられ、文庫と合わせて累計46万部のベストセラーとなった。

 読者の6割強が女性で、愛読者ハガキでは、「求めすぎている自分に気がついた」「探していたことの答えがこの本にあった」「心に光が差し込んだ」といった感想が届いた。

〈簡素な暮しになる〉の詩のあとは、以下のように続く。

〈求めない──するといまじゅうぶんに持っていると気づく

求めない──するといま持っているものがいきいきとしてくる

求めない──するとそれでも案外生きてゆけると知る

求めない──すると改めて人間は求めるものだと知る

求めない──するとキョロキョロしていた自分が可笑しくなる

求めない──するとちょっとはずかしくなるよあんなクダラヌものを求めていたのか、と〉

 加島氏は求めない生き方を説く一方で、人間が「何かを求めずにはいられない存在」であることも認めていた。2007年11月に本誌インタビューで、求めない生き方にたどり着いた経緯をこう答えている。

「とにかく私は『追い求める』という言葉がべったりついてくるほど追い求める人間だったね。55歳の時には若い女性を求めて、自分の家を出たんだ。

 すばらしい人だったよ。求めると応えてくれるから有頂天になってますます求めていったら、2年して、私を放り出した。これから先、頼りにならないと思われたんだろうね。家族からは見放され、恋人も去って、私はかなり惨めな状態に落ちた。

 その時初めて、『あまりに求めたから失敗したんだ。求めないことが人間の惨めさを避ける大きな方法なんだ』と身にしみたんだね」

 そう言って恋人に感謝し、こう続ける。

「面白いことに、人間は、失うと入ってくるようにできている。老子が失うことを肯定しているのも、そういうことだよ。『なるたけ、あんた、自分を空っぽにしなさい。すると新しいものが入ってくるよ。持っているものを握りしめていると、新しいものは入ってこないよ』とね」

『求めない』が出版された前年には、ヒルズ族と呼ばれた堀江貴文氏や村上世彰氏が逮捕され、金銭や物を貪欲に求める生き方に疑問が呈されていた。

「“足るを知る”という老子の思想から生まれた加島さんのメッセージが、当時の世相に合っていたのでしょう。求める心を少しだけ抑えれば人生が楽になるという教えは、今でも心に響きます」(前出・担当編集者)

〈求めない──すると君に求めているひとは去ってゆく

求めない──すると君に求めないひとは君とともにいる〉

 自然を愛し、言葉を愛し、人間を愛した人生だった。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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