集合無意識はカオスそのもの
https://care-heart.net/yungu-mandala/ 【心理学者ユングと曼荼羅の癒し】より
マンダラを考えるとき、宗教やアートとともに欠かせないのが、心理学になります。その心理学と深く結びつけたのが、スイスの精神医学者カール・グスタフ・ユングです。
その名と存在は、分析心理学の第一人者としても有名なところです。
よく知られるところの「意識」「無意識」の構造については、このユングから成っているのです。
このユングが、強い関心を示し、クライエントとの関わりの中で、治療に導入したのが、「マンダラ」なのです。
ユングは、マンダラに関する個人的な経験も含めたものを「赤の書」に著して、残しています。
では、ユングがなぜマンダラに魅了されて、治療にまで導入したのかを、ユングという人とともに探ってみましょう。
1 ユングという人について
ユングという人は、単なる精神医学者・・・という枠組みでは語りきれないくらいの人だったといいます。
一言で言えは、不可思議な性格の人でありました。一説では、宗教的な資質やカリスマ性に恵まれていたとも言われています。また、一方では、男性的な魅力に富んでおり、多くの女性を惑わせたとも言われ、決別に至ったフロイトもユングの虜になったとのことなのです。
1−1 心身ともに不安定なユング
ユング
若い頃のユングというのは、とても不安定な心の持ち主であったということが、語り継がれています。
第一次世界大戦の直前には、「全ヨーロッパが血の海に沈む」というようなビジョンさえも見ていたため、ユング自信が、「第一次世界大戦の始まりを予知した」というような解釈さえしたのです。
このように、ユングは、治療者という立場であるにもかかわらず、その一方で彼自身が患者なのではないかと思われるような、かなり微妙な精神の持ち主でした。
2 曼荼羅(マンダラ)がユングの中から現れた
ユングのマンダラに対する関心というのは、2つの方向から芽生えました。
その一つは、ユング自身の個人的体験に由来するものでした。もう一つは、心を病む人々と関わる中で見出したものでした。
2−1 ユングの中から現れた曼荼羅(マンダラ)
その一つ目は、ユングが精神的に危機の状態に陥った時の自己治癒の過程で自然に現れてきたものでした。
1912年にユングは、心理学者のフロイトと決別したのでした。その後、方向を見定めることができなくなり、精神状態が不安定になりました。それは、ほんの一時のことではなく、1916年頃まで続いていたと言われます。
そのような状況下で、彼は自分の中から湧き上がってくるものに導かれて、円形の図をたくさん描いていたのです。それは、ユング自身の心の治療に大きな影響を及ぼしました。そして、それは、マンダラにとても似ていたのです。
その経験があって、ユングは心の治療にマンダラを見出したのでした。
2−2 患者から見出したマンダラ
ユング自身の経験の後、回復期にある患者に絵を描かせてみるということを試みました。すると、マンダラ的な図を描くことが分かったのです。それは、絵のみでなく夢や幻想においても円を始めとする象徴的図形が患者の心から自発的に生じてくるのを発見しました。
このようなマンダラは、心の分裂の危機の状態を感じる時に、統合しようとする心の内部の働きとして生じたもので、自己治癒の存在なのだと捉えました。
この二つの経験を経て、とあるチベットの文献から、マンダラというものは、宗教的に大きな意味を持つものとしてその存在を知ったのでした。
3 ユングの曼荼羅(マンダラ)の特徴
本来の仏教におけるマンダラの意味というのは、「自己が自在する」ということに対して否定的であり、「欲望」というものを否定するものになっています。つまり、マンダラを生み出した根源は、修行から始まったのです。
しかし、ユングのマンダラは「個性化」という概念を打ち出しています。
人並みの欲望を持った大人を、よりよく育むための有効的な手段として位置付けたのです。
心を病む人々は、主体性を失っています。そのような状況に陥っていた人の個性を蘇らせることを担うのがマンダラだと捉えたのです。
仏教的な考え方が、自己否定と捉えた時に、ユングのマンダラの存在というのは、自己肯定という対極の考え方を持っています。
4 ユングの心理学と曼荼羅(マンダラ)
ユングといえば「意識」「個人的無意識」「集合的無意識」のキーワードになります。
この、キーワードの中でも、マンダラと最も近いものは「集合的無意識」になります。
この「集合的無意識」というのは、全ての人類に共通しているものと言い切っています。
というのは、東洋において仏教の世界観を示したマンダラを西洋にいるユングが何も知らずに描いていた・・というところにもあります。
西洋・東洋と区別なく、それぞれに伝わるものや神話にも共通したテーマを扱うものも多いことから、人類の心の奥深くには「共通した何か」があると考え、気づいたのでした。
具体的な例をあげれば、「太陽への崇拝」や「母性」などです。
とても普遍的なテーマだということに気付かれるでしょう。
ユングの壮大な考え方や研究は、今のこの世に「大人のマンダラ塗り絵」や「マンダラアート」として再び蘇ってきているのです。
5 まとめ
ユングのマンダラは、心を癒す治療のツールからスタートしました。現代の人々も、少なからず「自分の心を癒して、本来の自分を取り戻したい」というところからスタートされている方もいると思います。
または、「無」に近い、没頭する時間を作り上げる必要を感じているのではないでしょうか?
ユングのマンダラは「自己肯定」という優しさを含んでいます。
あなたがご自分に厳しい方だとしたら、この優しい時間をほんの少し取り入れてみるのはいかがですか?
https://www.careshikaku.com/shinri_guide/xuchang 【心理学の三大巨匠!フロイト・ユング・アドラーの学説を知る】より
3人の心理学研究者の違い
心理学を学ぶ上で避けて通れない三大巨匠といえば、フロイト、ユング、アドラーの3人です。心理学について詳しくない場合でも、名前だけは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
同じ時代を生きた3人は、力動精神医学を研究する精神科医であったということもあり、学説に共通点も見られます。しかし、フロイトの弟子であったユングも、共同研究者のアドラーも、フロイトが提唱した「無意識」の概念を継承しつつ、異なる考えを持って研究を進めていきました。
今回は、3人の学説の違いを簡単に紹介していきます。
・「意識は氷山の一角」フロイトの無意識論
・「自分の性質を捉え、自己実現を試みる」ユングのタイプ論
・「人は行動の理由を過去に求める」アドラーの個人心理学
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「意識は氷山の一角」フロイトの無意識論
フロイトは、人間の行動にはすべて心理的な裏付けがあり、それは「無意識」だとしました。私たちの発言・行動の多くは、意識的でも、無意識の影響が大きいというものです。このフロイトの無意識の学説は、現在のカウンセリング技法に広く浸透しています。
この他にもフロイトは画期的な考えをいくつも提示しました。ここではその中の一例をご紹介いたします。
夢は無意識のあらわれ
フロイトは患者の心を分析するために、人間の無意識が顕著に現れる「夢」に着目しました。無意識は、自ら自覚できない性質のものです。フロイトは夢の分析で、無意識を探ることとしました。目が覚めた時に、リアルに感情が動くような体験を、あなたもしたことがあるのではないでしょうか?
エス・自我・超自我
フロイトは、すべての人間には「エス(欲望)」と呼ばれる無意識層があるとしました。これは自分にとって気持ちの良いものを求め、嫌なものは避けたいという気持ちです。
しかし、人間は成長の過程で社会に触れ、善意や倫理などの外圧と欲望であるエスを調整していくすべを身につけます。このときのエスと戦う心理的構造を「自我」と呼び、特に音楽・絵画・舞踏などは、自我の力でエスを変形させた結果であると唱えました。この考え方は、後の芸術観に大きな影響を与えることとなります。
また、教育などで形成される良心を「超自我」と呼び、こちらも周囲に迷惑をかけないように自我を変形させた形であるとしました。変形のレベルは人によって差があり、過剰になると他者に対して攻撃的になったり、場合によっては精神を患う場合もあると考えました。
「自分の性質を捉え、自己実現を試みる」ユングのタイプ論
フロイトと師弟関係にあったユングは、フロイトの一部の学説に疑問を感じるようになっていきます。現代カウンセリングで頻繁に用いられている「タイプ論」は彼の学説です。ユングは人間を「内向」と「外向」の2つのタイプに分類しました。外向に分類される人は社交的ですが、世の中の流行に流されやすい傾向があります。一方、内向に分類される人は、我慢強さを持ちますが、気分に左右される傾向があります。
ユングはさらに、人間の心を4つのタイプに分類しました。「思考」「感情」「感覚」「直観」です。
思考
物事を理屈で考えようとするタイプ。論理性を重視し、好き嫌いなどの感情論は除いて物事を判断します。主に男性に多いと言われます。
感情
「思考」とは正反対のタイプ。好きか嫌いか、また自分にとって心地よいかどうかを基準に物事を判断します。女性に多いと言われています。
感覚
目の前の物事を、あるがままに判断するタイプ。自分の価値基準や論理的なストーリーを挟まず、見たものをそのままに捉えるタイプです。化学者に向いていると言われます。
直観
思いつきやひらめきを重視するタイプ。論理的でもなければ感情的でもなく、あるがままに物事を見ることもなく、本質のみを捉えるタイプです。
ユングは人のタイプを「外向」と「内向」に分け、さらに心のタイプを「思考」「感情」「感覚」「直観」に分けることにで、人間を2×4=8のタイプに分類しました。
さらに自分がどのタイプに属するかを知り、自分の優れた面や弱い面を認識することが自己を高めることにつながると考えました。ユングはこうした過程を「個性化の過程」と名づけ、自己実現のために不可欠であると唱えました。
「人は行動の理由を過去に求める」アドラーの個人心理学
2013年のベストセラー『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社・岸見一郎/古賀史健:著)で紹介され、日本でも知られるようになったアドラー。
「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」と断言したアドラーの考え方は、現代の社会に通じるところが多く、共感者が相次いでいます。
アドラー心理学の基本
アドラーは個人の心は分割できないと主張し、個人心理学という理論を提唱しました。最も有名な考えは、先ず人間は行動をとり、過去に行動の理由を求めるというものです。
たとえば幼少期に虐待を受けた人が、精神病にかかったとします。この場合、「幼少期の虐待が原因で精神病になった」のではなく、「精神病になった理由を幼児期の虐待のせいにした」と捉えます。人は原因によって行動するのではなく、現在の目的によって行動しているのだとするのが、アドラー心理学の考え方の特徴です。
たとえ不幸な事故に遭ったとしても、その人が前向きに生きていくかどうかは起こってしまった過去とは関係なく、その人が「いま」どのような理想や目的を持てるかに関係します。過去は関係なく、いまの自分に原因や行動を求めるアドラーのような考え方を厳しいとする人もいますが、重要な人生論として、いまも多くの人々に共感されています。
「課題の分離」があなたを解放する?
社会人として働いている場合、「相手の機嫌を損ねたくない」という理由で、しぶしぶ飲み会に参加した経験がある人も多いのではないでしょうか。しかし、よく考えてみると、あなたが飲み会を断ったことによって相手がどのように感じるかは、あなたではなく相手の問題であるとも言えます。
このように、相手の課題に対して「これは自分の課題ではない」と認識することを「課題の分離」と呼びます。このような考え方をすることで「人生はそれぞれの人のもので、相手の人生まで必要以上に抱え込まなくても良い」という考え方にもつながっていきます。
心理学を学ぶことで人生観が変わる!?
いかがでしたか? フロイトの無意識論をもとに展開された各学説はそれぞれ興味深く、どの学説もなるほどと思う部分があるのではないでしょうか。
心理学はあなたの生き方や人生観を変えることもある、とても奥が深い学問です。人の心のメカニズムは未知の部分がまだ多く、学べば学ぶほど発見があります。
もっと知りたいと思った人は、スクールでさまざまな心理学を学んでみるのも面白いかもしれません。学んで得た知識は、対人関係にも生かせ、心理カウンセラーなどの仕事につなげることもできますよ!
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