https://globe.asahi.com/article/13708394 【健康な人の体に39種も ウイルスは体内で何をしているのか】より
2020.09.11
ウイルスの遺伝子を増幅して調べるPCR法での検査の様子=2020年5月21日、横浜市青葉区の横浜総合病院、池田良撮影
ウイルスに感染すれば即、病気になるというイメージがある。しかし、健康な人の体の中にもウイルスはたくさんいる。いったい病気を起こさないウイルスは何をしているのか?
東京大医科学研究所の佐藤佳准教授(38)のグループは、健康な人の体にいるウイルスを網羅的に調べた。その結果、少なくとも39種類のウイルスがひそんでいることがわかったという論文を今年発表した。血液、脳、心臓、大腸、肺、肝臓、筋肉……。27種類の組織にウイルスがいた。
胃の細胞には、ヘルペスウイルスが見つかった。胃で働いている遺伝子を調べると二つのパターンに分けられ、ヘルペスウイルスが見つかった人とそうでない人が、それぞれにあてはまりやすいことがわかった。それが何を意味しているのかくわしくはわからない。研究は始まったばかりだ。
「健康な人の全身で網羅的に調べたのは初めて」と佐藤さんは話す。そもそも、健康な人の組織をとって、ウイルスを調べること自体がむずかしい。今回は、米国のゲノムプロジェクトが蓄積していたデータを使って解析した。事故などで死亡した547人の全身の組織のRNAデータだ。RNAは、各細胞で必要な遺伝情報のDNAが、いったん写し取られたもので、RNAを読めば、その細胞でどの遺伝子が働いているかがわかる。そのRNA情報の中に混ざっている、ウイルスの遺伝情報を探して突き止めた。
東京大医科学研究所の佐藤佳准教授=本人提供
健康な人の体にウイルスがひそんでいること、それも長期間に及ぶことは知られている。たとえば子どもの頃に水ぼうそうにかかった後、ウイルスは神経節に長い間潜んでいるが、病気を起こすことはない。ところが、免疫の働きが落ちた時などに、強い痛みや発疹が「帯状疱疹(ほうしん)」として皮膚の近くに現れる。
こうした仕組みがくわしくわかってくると、ある宿主では病気を起こさないのに、別の種で激しい病気を起こす現象の解明にもつながるかもしれない。新型コロナウイルスはコウモリを宿主とするときには病気を起こさず共生しているが、人では病気を起こす。多くの人は軽症で、一部が重症化する。コウモリでは免疫が働いていないのか、それとも強く働いていてウイルスを抑えているのか。佐藤さんらの研究は、そのなぞを解く鍵の一つになるかもしれない。
東京大医科学研究所の佐藤佳准教授の研究室=本人提供
ウイルスは人の細胞だけでなく、人の体の中にいる細菌の中にも感染していることが最近の研究でわかってきた。研究者の注目を集めているが、実態はまだよくわかっていない。
大阪市立大と東京大のグループは、健康な日本人101人の便の中にある細菌とウイルスの遺伝情報を読み、データベースをつくった。細菌約600種、細菌に感染するウイルス「ファージ」は分類可能なものだけで約450種も見つけた。
どのようなファージが多いかについて、さらにくわしく調べると、個人差が大きいこともわかった。8週間追跡してどのようなファージが増えたり減ったりしてるかを調べたが、あまり変わらずに状態が安定していることもわかった。
腸内細菌がさまざまな病気とかかわることが知られている。ファージが腸内細菌に与える影響が解明されれば、腸内細菌の乱れにかかわる病気の治療につながる可能性もある。
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00008.html 【ヒト組織ヴァイローム(ウイルス叢)の網羅的描出】より
-健常人の体内における"隠れた"ウイルス感染の様相-
発表のポイント
健常人547人の51か所(種類)の組織における遺伝子発現データの大規模バイオインフォマティクス解析により、健常人の体内における"隠れた"ウイルス感染の様相を網羅的に明らかにした。
さまざまなウイルスが健常なヒトの体内において不顕性感染しており、ヒトの免疫状態や健康状態に関与している可能性が示唆された。
本研究成果は、ヒトとさまざまなウイルスの共生関係の一端を明らかにしたものであり、本研究の手法は、汎用性が高く、新型コロナウイルス感染症を含めたさまざまなウイルス研究に応用・展開が可能である。
概要
東京大学医科学研究所 感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授らは、大規模な遺伝子発現データの解析により健常なヒト体内に存在するヴァイローム(ウイルス叢)(※1)の様相を網羅的に解明しました。
ヴァイローム(ウイルス叢)とは、ヒト体内に存在するウイルスの総体のことであり、病気を発症していない健常人においても、ヘルペスウイルスをはじめとしたさまざまなウイルスが、さまざまな組織に、病状を示すことなく感染していると考えられています。これまでのウイルス学の研究においては、病気を引き起こすウイルスについて、病気を発症した感染患者に対する解析が中心であったため、健常人において、どのようなウイルスが、体内のどこに、どの程度(不顕性)感染しているのかについては未解明でした。
本研究では、米国のゲノムプロジェクトであるGenotype-Tissue Expression(GTEx)プロジェクト(※2)の提供する、547人の51種類の組織から取得された、計8,991サンプルのRNAシーケンスデータ(※3)を対象に大規模なメタゲノム解析(※4)を行いました。米国国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)に登録された5,561種類の脊椎動物および無脊椎動物に感染するウイルスゲノム情報を用いて、対象サンプル中に含まれるさまざまなウイルスに由来すると考えられる配列を網羅的に検出し、定量化しました。
その結果、健常人のさまざまな組織において、さまざまなウイルスが感染していることを見出しました。さらに、ウイルスの有無とヒトの遺伝子発現情報とを比較することで、いくつかのウイルスのウイルス陽性の検体・組織において、ウイルス感染に対する免疫応答因子であるインターフェロンを含む自然免疫応答や、免疫細胞の一種であるB細胞の活性化が誘導されていることを見出しました。
さらに、本研究において、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)が胃に常在していること、および、胃におけるHHV-7の有無がヒトの遺伝子発現状態と強く関連していること、加えて、HHV-7が胃の何らかの生理的機能に影響を与えている可能性が明らかになりました。
本研究結果は、ヒト体内に存在するウイルスが、ヒトの免疫状態や生理的機能に関与していることを強く示唆するものです。本研究成果は、2020年6月4日英国科学雑誌「BMC Biology」(オンライン版)に公開されました。
研究内容
ウイルスの中には、ヒトに感染して病原性を持つものだけではなく、病原性を示さずに不顕性感染をしているものがあることが知られています。すなわち、特に顕著な病徴(症状)を示していない健常人においても、不顕性感染しているウイルスが、生体内のさまざまな組織においてヴァイローム(ウイルス叢)を形成していると考えられています。しかし、健常人から、心臓や脳などのさまざまな体内の組織を取得することはできないため、ヒトがどのようなウイルスに常態的に感染しているのか、また、それらのウイルスの感染がヒトにどのような影響を与えるのかなどについては明らかではありませんでした。
本研究グループは、シーケンス技術(※5)の進展によって近年盛んに行われているメタゲノム解析を応用した解析手法を独自に構築し、健常人の遺伝子発現データセットを対象に大規模解析を行うことでこの問題に取り組みました。大規模インフォマティクス解析の実施には、東京大学医科学研究所のスーパーコンピューターHIROKANEを駆使しました。
具体的には、米国のゲノムプロジェクトであるGTExプロジェクトに登録されている健常人547人の51種類の組織からなる合計8,991のRNAシーケンスデータを対象に、5,561種類のウイルスゲノム情報を用いてメタ解析を実施することで、健常人の各組織におけるさまざまなウイルスの感染を解析し、ヒトの組織ヴァイロームを網羅的に解明することに成功しました(図1)。
図1 本研究で明らかにしたヒト組織ヴァイローム
スーパーコンピューターSHIROKANEを用いた大規模バイオインフォマティクス解析により、健常人におけるウイルス感染の様相を網羅的に同定しました。さまざまな組織にわたって感染が見られるウイルス(例:EBV, HSV-1)がある一方で、HCVなど組織特異的なウイルス感染も見られました。さらに、胃においてHHV-7感染が高頻度に観察されました。また、コロナウイルスの一種であるヒトコロナウイルス229E型(HCoV-229E)も、低頻度であるものの検出されています。
その結果、健常なヒトの体内において、少なくとも39種類のウイルスが常在的に感染していることを明らかにしました。また、さまざまな組織に感染するウイルス(ヘルペスウイルスの一種であるエプスタイン-バールウイルス[EBV]、単純ヘルペスウイルス1型[HSV-1]など)が存在する一方で、高い組織特異性を持つウイルス(C型肝炎ウイルス[HCV]など)が存在することも明らかになりました。さらに、これまで組織特異性が知られていなかったHHV-7が、胃に高い割合で局在していることが明らかとなりました(図1、2)。
図2 胃におけるHHV-7感染と遺伝子発現プロファイルの関連
胃のヒト遺伝子の発現状態は、大きく異なる2つの群(図中 群1、群2)に分かれました。さらに、HHV-7の感染は群1に高頻度に見られるが、群2にはほとんど見られないことが分かりました。すなわち、HHV-7の有無が、胃の遺伝子発現パターンと関連していることを示唆しています。
また、ウイルス感染の有無とヒト遺伝子発現との関連解析を行うことで、不顕性感染しているウイルスに対しても、ヒトの体内においてインターフェロンの発現や免疫細胞の一種であるB細胞の活性化などの免疫応答が潜在的に生じていることも分かりました(図2)。
以上の結果は、健常なヒトの体内に存在するヴァイロームが、ヒトの免疫状態や生理的機能に関与していることを示唆するものです。
本研究は、大規模バイオインフォマティクス解析によって、普段認識されることのない健常なヒトの体内に存在する“隠れた”ウイルス叢を網羅的に描出することに成功するとともに、ウイルスと宿主の新たな関係性の一端を明らかにした研究として意義のあるものと考えられます。また、本研究で用いた研究手法(メタトランスクリプトーム解析)(※6)は、きわめて汎用的であり、さまざまなシーケンスデータに適用可能であることから、あらゆるウイルス研究への応用が可能です。
今回のヒト組織ヴァイローム(ウイルス叢)の網羅的描出は、ウイルスと宿主の相互作用のさらなる解明に役立つとともに、新型コロナウイルス感染症を含めたウイルス感染症の制圧法の開発に向けた基礎学術基盤の形成につながる成果であるといえます。
本研究の支援
本研究は、熊田 隆一 大学院生に対する科学技術振興機構 AIPチャレンジ、伊東 潤平 博士研究員(学振PD)に対する日本学術振興会 特別研究員奨励費(PD 19J01713)、佐藤 佳 准教授に対する新学術領域研究「ネオウイルス学」(16H06429, 16K21723, 17H05813, 19H04826)、科学研究費補助金 基盤研究B(18H02662)、日本医療研究開発機構 感染症研究革新イニシアティブ(J-PRIDE)(19fm0208006h0003)、日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(20fk0108146h0001)、科学技術振興機構CRESTの支援の下で実施されました。
発表雑誌
雑誌名:「BMC Biology」6月4日オンライン版
論文タイトル:A tissue level atlas of the healthy human virome
著者:熊田 隆一1, 伊東 潤平1, 高橋健太2, 鈴木忠樹2, 佐藤 佳1*
(1東京大学医科学研究所システムウイルス学分野;2国立感染症研究所所感染病理部)
DOI番号:10.1186/s12915-020-00785-5
URL:https://bmcbiol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12915-020-00785-5
用語解説
(※1)ヴァイローム (virome)
ある領域に存在するウイルスの総体のこと。ウイルス叢とも言い、近年活発に研究が進められているマイクロバイオーム(微生物叢)の一部です。本研究では、ヒトの体内に組織特異的に存在するヒト組織ヴァイロームに着目しました。↑
(※2)Genotype-Tissue Expression(GTEx)プロジェクト
ヒトの組織特異的な遺伝子発現と遺伝子制御、および、それらに関連するゲノムの変異を調べるための大規模なデータセットを提供する米国のゲノムプロジェクトのことです。 ↑
(※3)RNAシーケンスデータ
サンプル中に存在するRNAの配列情報。主に、遺伝子発現(転写産物)を定量化する用途で取得される。トランスクリプトームとも呼ばれます。 ↑
(※4)メタゲノム解析
サンプル中に存在するゲノムDNAを網羅的に解析する手法のこと。主に、サンプル中に含まれる、微生物群集を調べるために用いられます。 ↑
(※5)シーケンス技術
塩基配列解読技術。次世代シーケンサーを用いることで、並列的に高速に、核酸の塩基配列情報を決定することが可能です。 ↑
(※6)メタトランスクリプトーム解析
サンプル中に存在するRNAを網羅的に解析する手法のこと。本研究では、RNAシーケンスデータに含まれる、ヒト遺伝子由来の配列とウイルス由来の配列のプロファイルを網羅的に取得しました。
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20200907/pdf/20200907.pdf 【インターフェロン産生を抑制する SARS-CoV-2 タンパク質の発見】より
1.発表者:
佐藤 佳(東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野
准教授)
2.発表のポイント:
◆新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の病徴のひとつに、インターフェロン応答(注
1)が顕著に抑制されていることが報告されているが、そのメカニズムは不明であった。
◆本研究では、インターフェロン応答が抑制されるメカニズムのひとつとして、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が持つタンパク質のひとつ ORF3b(注2)に、強いインターフェ
ロン抑制活性(注3)効果があることを見いだした。
◆現在流行中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の配列を網羅的に解析した結果、インタ
ーフェロン抑制活性が増強した ORF3b 変異体(注4)が出現していることを明らかにした。
3.発表概要:
東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤准教授
らは、ウイルス感染に対する免疫応答の中枢を担うインターフェロン産生を抑制する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のタンパク質 ORF3b を発見しました。
SARS-CoV-2 ORF3b タンパク質のインターフェロン抑制活性は、2002~2003 年に世界各
国で流行した SARS ウイルス(SARS-CoV)の ORF3b タンパク質よりも強いことから、
ORF3b タンパク質の機能が、COVID-19 の病態進行と関連している可能性が考えられます。
また、現在全世界で流行しているウイルスの配列を網羅的に解析した結果、インターフェロン抑制効果が増強した ORF3b 変異体が出現していることを見いだしました。
本研究成果は、2020 年 9 月 4 日英国科学雑誌「Cell Reports」オンライン版に公開されま
した。
4.発表内容:
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、2020 年 9 月現在、全世界において 2,000 万人以
上が感染、80 万人以上を死に至らしめている災厄です。現在、世界中でワクチンや抗ウイル
ス薬の開発が進められていますが、昨年末に突如出現したこのウイルスについては不明な点
が多く、感染病態の原理についてはほとんど明らかとなっていません。
過去の研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染者の解析から、この感染
症の特徴のひとつとして、ウイルス感染に対する生体防御の中枢を担うインターフェロンと
いう物質の産生が、インフルエンザや SARS などの他の呼吸器感染症に比べて顕著に抑制さ
れていることが明らかとなっています。このインターフェロン産生の抑制が COVID-19 の病
態進行と関連すると考えられていますが、その原理については明らかとなっていませんでし
た。
本研究グループはまず、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)と SARS ウイルス(SARSCoV)それぞれが保有する遺伝子の長さを比較しました。その結果、SARS-CoV に比べ、SARS-CoV-2 の ORF3b という遺伝子の長さが顕著に短いことを見いだしました。
これまでに、SARS-CoV の ORF3b 遺伝子には、インターフェロン産生を抑制する機能があ
ることが知られていました。そこで、遺伝子の長さの違いが、SARS-CoV-2 感染時のインタ
ーフェロン産生を抑制する機能と関連している可能性を疑い、SARS-CoV-2 の ORF3b の機能解析を実施しました。
その結果、驚くべきことに、SARS-CoV-2 の ORF3b タンパク質は、SARS-CoV の ORF3b
タンパク質よりも強いインターフェロン阻害活性があることを見いだしました。また、コウモリやセンザンコウで同定されている、SARS-CoV-2 に近縁なウイルスの ORF3b タンパク質についても同様に解析した結果、SARS-CoV-2 の ORF3b タンパク質と同様、強いインターフェロン阻害活性があることを明らかにしました。
さらに、GISAID という公共データベースに登録された 17,000 以上の世界で流行している
ウイルスの配列を網羅的に解析したところ、エクアドルで ORF3b の長さが部分的に伸長して
いる配列を持つウイルスを同定しました。この配列を再構築し、実験を行った結果、この
ORF3b 変異体は、世界で流行している SARS-CoV-2 の ORF3b に比べ、より強いインターフ
ェロン抑制効果を示すことを明らかにしました。そして、このウイルスを同定したエクアドルの医師にコンタクトを取ったところ、このウイルスに感染していた 2 名の COVID-19 患者は、2 名ともが重症、うち 1 名は死亡していたことが判明しました。
以上の結果から、新型コロナウイルスの ORF3b タンパク質には強いインターフェロン抑制
効果があり、それが COVID19 の病態と関連している可能性があることが示唆されました。ま
た、現在の流行の中で出現した ORF3b 遺伝子の変異によって、インターフェロンを抑制する
活性が増強されることを明らかにしました。
しかし、このウイルスの病原性が強まっていることを示す証拠はありません。このような変異体は、17,000 以上の配列を解析し、わずか 2 配列しか検出されていません。このことから、このような変異体が出現し、強毒株として流行する可能性は極めて低いと考えられます。
また一方で試験管内での実験では、この ORF3b 変異体のインターフェロン阻害活性は顕著
に高いことから、ウイルス遺伝子の配列を解析することによって、ウイルスの病原性を評価する指標のひとつとして使用できる可能性はあると考えています。
<本研究への支援>
本研究は、佐藤 佳 准教授に対する日本医療研究開発機構 新興・再興感染症に対する革新的医
薬品等開発推進研究事業(19fk0108171h0001、20fk0108270h0001、20fk0108146h0001)、
科学技術振興機構(JST) 国際緊急共同研究・調査支援プログラム(J-RAPID)(JPMJJR2007)、
新学術領域研究「ネオウイルス学」(16H06429、16K21723、17H05813、19H04826)、科
学研究費補助金 基盤研究 B(18H02662)の支援の下で実施されました。
5.発表雑誌:
雑誌名:「Cell Reports」9 月 4 日オンライン版
論文タイトル:SARS-CoV-2 ORF3b is a potent interferon antagonist whose activity is
increased by a naturally occurring elongation variant
著者:Yoriyuki Konno#, Izumi Kimura#, Keiya Uriu, Masaya Fukushi, Takashi Irie, Yoshio
Koyanagi, Daniel Sauter, Robert J. Gifford, USFQ-COVID19 consortium, So
Nakagawa, Kei Sato* (#Equal contribution; *corresponding author)
DOI:https://doi.org/10.1016/j.celrep.2020.108185
URL:https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(20)31174-8
6.問い合わせ先:
〈研究についてのお問い合わせ〉
東京大学医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野
准教授 佐藤 佳(さとう けい)
電話番号:03-6409-2212
FAX:03-6409-2213
メールアドレス:ksato[at]ims.u-tokyo.ac.jp
〈報道についてのお問い合わせ〉
東京大学医科学研究所 国際学術連携室(広報)
清水 麻子
電話番号 :090-9832-9760
メールアドレス:koho[at]ims.u-tokyo.ac.jp
〈JST 事業についてのお問い合わせ〉
科学技術振興機構 国際部
佐藤 正樹
電話番号:03-5214-7375
FAX:03-5214-7379
メールアドレス:rapid[at]jst.go.jp
7.用語解説:
(注 1)インターフェロン応答
ウイルス感染を感知し、それを伝えるための「インターフェロン」という物質を産生する、生体の免疫応答のひとつ。
(注2)ORF3b
SARS-CoV-2、および、SARS-CoV が持っているウイルス遺伝子のひとつ。先行研究から、
SARS-CoV の ORF3b には、インターフェロン応答を抑制する機能があることが明らかとなっていた。
(注3)インターフェロン抑制活性
ウイルス感染を感知することによって産生されるシグナル物質「インターフェロン」の産生を阻害する、ウイルスタンパク質の機能。
(注4)ORF3b 変異体
終止コドンが復帰変異することにより、遺伝子長が長くなった変異体。
8.添付資料:
本研究の概要
SARS-CoV 関連ウイルスの ORF3b タンパク質に比べ、SARS-CoV-2 関連ウイルスの ORF3bタンパク質のインターフェロン抑制活性は顕著に高い。また、現在流行している SARS-CoV2 の中で、ORF3b 遺伝子の長さが部分的に伸長することにより、インターフェロン活性が増強している変異体が出現していることを見いだした。
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