Facebook・兼井 浩さん投稿記事
シアトル首長の手紙
1854年、開拓者である白人に、先祖代々住みなれた豊かな土地を取りあげられ、不毛な居留地へと追いやられることになった先住民の首長シアトルは、大地への惜別の念を込め、時の大統領フランクリン・ピアスにに一通の手紙を送ったのです。
それは、大地と人間との深いかかわりを語る、シンプルで美しい言葉。
まさしく「共生」の思想、エコロジーの基本を語る普遍的思想でした。
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遥かな空は 涙を拭い 今日は美しく晴れた。明日は 雲が空を覆うだろう。けれど 私の言葉は 星のように変わらない。
ワシントンの大首長が 土地を買いたいと言ってきた。どうしたら 空が買えると言うのだろう? そして 大地を。 私には わからない。
風の匂いや 水のきらめきをあなたはいったい どうやって買おうと言うのだろう?
すべて この地上にあるものは 私たちにとって 神聖なもの。
松の葉の 一本 一本 岸辺の砂の 一粒 一粒 深い森を満たす霧や 草原になびく草の葉 葉陰で羽音をたてる 虫の一匹一匹にいたるまで すべては 私たちの遠い記憶の中で 神聖に輝くもの。
私の体に 血がめぐるように 木々の中を 樹液が流れている。私は この大地の一部で 大地は 私自身なのだ。香りたつ花は 私たちの姉妹。 熊や 鹿や 大鷲は 私たちの兄弟。岩山の険しさも 草原のみずみずしさも 小馬の体の温もりも すべて 同じひとつの家族のもの。
川を流れるまぶしい水は ただの水ではない。それは 祖父の そのまた祖父たちの血。
小川のせせらぎは 祖母の そのまた祖母たちの声。
湖の水面に揺れる ほのかな影は 私たちの 遠い思い出を語る。川は 私たちの兄弟。
渇きを癒し カヌーを運び 子どもたちに 惜しげもなく食べ物を与える。
だから白い人よ どうかあなたの兄弟にするように 川に優しくして欲しい。
空気は すばらしいもの。それは すべての生き物の命を支え その命に 魂を吹き込む。
生まれたばかりの私に 初めての息を与えてくれた風は死んでゆく私の 最期の吐息を受け入れる風。だから白い人よ どうかこの大地と空気を 神聖なままにしておいて欲しい。
草原の花々が甘く染めた 風の香りを嗅ぐ場所として。
死んで 星々の間を歩くころになると 白い人は 自分が生まれた土地のことを 忘れてしまう。けれど私たちは死んだ後でも この美しい土地のことを決して忘れはしない。
私たちを生んでくれた 母なる大地を。私が立っているこの大地は 私の祖父や祖母たちの灰からできている。大地は 私たちの命によって 豊かなのだ。
それなのに 白い人は 母なる大地を 父なる空をまるで 羊か 光るビーズ玉のように 売り買いしようとする。大地を むさぼりつくし 後には 砂漠しか残さない。
白い人の町の景色は 私たちの目に痛い。白い人の町の音は 私たちの耳に痛い。
水面を駆けぬける風の音や 雨が洗い清めた空の匂い 松の香りに染まった やわらかい闇のほうが どんなにかいいだろう。
夜鷹の さみしげな鳴き声や 夜の池のほとりの カエルのおしゃべりを 聞くことができなかったら人生にはいったい どんな意味があるというのだろう。
私には わからない。白い人には なぜ 煙を吐いて走る鉄の馬のほうが バッファローよりも 大切なのか。私たちの命をつなぐために その命をくれるバッファローよりも。
私には あなたがたの望むものが わからない。
バッファローが 殺しつくされてしまったら野生の馬が すべて飼いならされてしまったら
いったい どうなってしまうのだろう?
聖なる森の奥深くまで 人間の匂いがたちこめたときいったい なにが起こるのだろう?
獣たちが いなかったら 人間は いったい何なのだろう?
獣たちが すべて消えてしまったら深い魂のさみしさから 人間も死んでしまうだろう。
大地は 私たちに属しているのではない。私たちが 大地に属しているのだ。
たおやかな丘の眺めが 電線で汚されるとき 薮は どうなるだろう?もう ない。
鷲は どこにいるだろう?もう いない。
足の速い小馬と 狩りに別れを告げるのは どんなにか 辛いことだろう。
それは 命の歓びに満ちた暮らしの終わり。
そして ただ生き延びるためだけの 戦いがはじまる。
最後の赤き勇者が 荒野と共に消え去り その記憶を留めるものが平原の上を流れる雲の影だけになったとき 岸辺は残っているだろうか。
森は 繁っているだろうか。
私たちの魂の ひとかけらでも まだ この土地に残っているだろうか。
一つだけ 確かなことは どんな人間も 赤い人も 白い人も わけることはできない ということ。
私たちは結局 おなじひとつの兄弟なのだ。
私たちが大地の一部であるように あなたがたもまた この大地の一部なのだ。
大地が 私たちにとって かけがえがないようにあなたがたにとっても かけがえのないものなのだ。
だから 白い人よ。私たちが 子どもたちに伝えてきたように
あなたの子どもたちにも 伝えてほしい。
大地は 私たちの母。大地にふりかかることは すべて 私たち 大地の息子と娘たちにも ふりかかるのだと。
あらゆるものが つながっている。私たちが この命の織り物を織ったのではない。
私たちは その中の一本の糸にすぎないのだ。
生まれたばかりの赤ん坊が 母親の胸の鼓動を 慕うように私たちは この大地を慕っている。
もし私たちが どうしても ここを立ち去らなければ ならないのだとしたら どうか白い人よ 私たちが大切にしたように この大地を大切にしてほしい。
美しい大地の思い出を 受けとったときのままの姿で 心に刻みつけておいてほしい。
そしてあなたの子どもの そのまた子どもたちのためにこの大地を守りつづけ 私たちが愛したように 愛してほしい。いつまでも。どうか いつまでも。
Chief Seattle(1786-1866)
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