https://note.com/kobachou/n/n3cf2e354d89e 【芥川龍之介 茜さすとはどういうことか】より 小林十之助
竹の芽も茜さしたる彼岸かな
大正十一年二月十八日、薄田泣菫宛ての手紙に添えられたこの句に、註がついて、 茜さす 赤みをおびる。 芥川龍之介全集
さて、茜さすとは、あかね‐さす【茜さす】 〔枕〕 (茜色に照りはえる意で)「日」「昼」「照る」「君」「紫」などにかかる。
広辞苑
あかね-さす 【茜さす】 (枕詞)
(1)茜色に照り映える意から,「日」「昼」「照る」にかかる。「―日は照らせれど/万葉 169」
(2)紫(古代紫)は赤みを帯びていることから,「紫」にかかる。「―紫野行き標野(シメノ)行き/万葉 20」
(3)照り映えて美しいの意で,「君」にかかる。「―君が心し忘れかねつも/万葉 3857」
大辞林
あかね‐さす【×茜さす】
〔枕〕茜色に鮮やかに照り映える意から、「日」「昼」「紫」「君」などにかかる。「―日は照らせれど」〈万・一六九〉「―紫野行き標野(しめの)行き」〈万・二〇〉
大辞泉
あかねさす【茜さす】
(枕詞)
茜色に照り映える意から,「日」「昼」「照る」にかかる。
新辞林
あかねさす【茜さす】《枕詞》
赤い色がさして、美しく照り輝くことから、「日」「昼」「紫」「君」などにかかる。
《万葉集・二〇》 「あかねさす紫野(ムラサキノ)行き」
学研古語辞典
あかね‐さ・す【茜さす】
〔連語〕茜色がさす。赤く照り映える。
1 赤い色がさして光り輝く意から、「日」「昼」「光」「朝日」等にかかる。
2 紫色、蘇芳(すおう)色との色彩としての類似から、同音の「紫草(むらさき)」および地名「周防(すおう)」にかかる。
3 顔が赤く照り輝いている意で、「君」にかかる。紅顔、紅頬(こうきょう)の意のほめことば。一説に、赤心、すなわち真心のある意でかかるという。
日本国語大辞典
この註はないほうがよいだろう。これは明らかに光が当たっている様子で、しかも「竹の芽」の意味があいまいにされている。一体解説者は「竹の芽」を何だと考えているのであろうか。
どうやったら竹の芽が赤くなるのか?
そして「も」が解っていない註である。
こんなことをいまさら書いてもなんだが。
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000152122&page=ref_view 【「紫雲」とはどういう現象か。言い伝えなどもあれば知りたい。】より
『日本国語大辞典 第6巻』p460「紫雲」
“紫雲”はむらさきの雲で「めでたいしるし」で「念仏行者の臨終などにあたって、阿弥陀仏がこの雲に乗って来迎するという」と書かれている。神仙・道教思想が起源で、「徳の高い天子・君子が在位する時に現れる」とも。また仏教において紫雲は、「念仏行者の臨終が正しく浄土往生であることを証明するものとされた」とある。
『日本民俗大辞典 下 た〜わ・索引』p273「虹」
「虹」の項目に説明あり。虹に良く似た現象で、「雲の一部が美しく色づくこと」があり、これを”彩雲”(さいうん)という。昔は吉兆とされ、「景雲・慶雲・紫雲・瑞雲と呼ばれ、慶雲あるいは神護景雲のように年号まで変えたことがあった」とある。
この解説の参考文献『市と行商の民俗(交通・交易伝承の研究 2)』を確認したが、索引や目次に「彩雲」「紫雲」はない。索引に「虹と市 97,101」とあるので該当頁を確認したが、上記辞典ほどの情報は見当たらなかった。
**ここまでで”紫雲”は”彩雲”の呼び名の一つと分かったので、”彩雲”を調べてみる。**
『オックスフォード気象辞典』p90「彩雲現象」あり。
『お天気なんでも小事典』(1008972612)p127「雲が色づいて見えるのはなぜ?」に解説あり。
“彩雲”は、太陽光が雲の粒などの障害物の後ろに回り込む「回折(かいせつ)」という性質によって、雲が色づいて見える現象のこと。分かりやすい図がある。
『雲のカタログ』p123「彩雲」の簡単な解説とカラー写真が3点あり。
『空を見る』p16~19「彩雲」
「彩雲」が吉兆のしるしであることや、紫雲を含むいろんな呼び方がされること、雲が色づいて見える要因となる「回折(かいせつ)現象」について解説している。カラー写真がある。
『雲の名前の手帖』
索引には載っていないが探すと、p186に簡単な解説、p188に彩雲の写真、巻末付録p9にp188の写真の解説あり。
『楽しい気象観察図鑑』p142~「色分れして見える雲 光環・彩雲」
良く見られる雲は巻積雲で太陽の近くにあると特に美しい色が付くとある。写真もあり。
『最新気象の事典』p197「彩雲」簡単な解説のみ。
『気象ハンドブック』p75「雲粒による光学現象」の文中で解説。
*この他“彩雲”は『平凡社大百科事典6』(10223376)p7、『日本大百科全書9』(10392285)p298でも、「めでたいことのある前兆」「縁起の良い現象」と書かれている。
*『最新気象百科』(1010542379)p553~554にも解説あり。他にも気象関係の本には”彩雲”の説明がありそう。
追記:当館に所蔵する天気のことわざ関連の辞典も確認したが、雲に特化したものはなく、探すのに時間を要するので調査をここまでとした。
0コメント