https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75933?site=nli 【数字の「18」に関わる各種の話題-「18」という数字で皆さんは何を思い浮かべるのだろうか-】より
中村 亮一
はじめに
数字の「18」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。歌舞伎の好きな人は「十八番」かもしれないし、スポーツが好きな人は「ゴルフの18ホール」を思い出すかもしれない。あるいは、高校を卒業する「18歳」が頭に思い浮かぶ人もいるだろう。
今回は、この数字の「18」について、それが現れてくる例やその理由等について調べてみた。
十八番(じゅうはちばん、おはこ)
「十八番(じゅうはちばん、おはこ)」というのは、一般的には、自分の得意とする芸や技のことを指している。その人がよくやる動作や癖、よく口にする言葉、を指す場合もあるようだ。
その語源には、いくつかの説があるようで、最も有名なのは、歌舞伎に関するものである。
それは、歌舞伎で、江戸時代の天保3年(1832年)に、市川家の初代團十郎・二代目團十郎・四代目團十郎がそれぞれ得意としていた荒事の演目18種を、七代目市川團十郎が選んで「歌舞妓狂言組十八番」(後に略して、「歌舞伎十八番」)と呼んだことに由来している、というものである。
「歌舞伎十八番」というのは、『勧進帳』、『不破』、『鳴神』、『暫』、『不動』、『嫐』、『象引』、『助六』、『押戻』、『外郎売』、『矢の根』、『関羽』、『景清』、『七つ面』、『毛抜』、『解脱』、『蛇柳』、『鎌髭』を指している。この中で、現代においても人気が高く、上演回数が多いのは『助六(すけろく)』、『勧進帳(かんじんちょう)』、『暫(しばらく)』ということになるだろう。
それでは、なぜ「18」という数が選ばれたのか。これについても諸説あって、どれが正しいかは明らかではないようだが、1つの説としては、後術する仏教の言葉「十八界」から、18という数字の持つ「必要なものすべて」という意味に由来しているといわれているようだ。
また、十八番を「おはこ」と読むようになった理由については、家の代名詞ともいえる歌舞伎十八番の台本は、市川家にとって家宝のようなものであったことから、代々の当主が立派な箱に入れて大切に保管していたことから、いつしか十八番を「御箱(おはこ)」と呼ぶようになったという説が有名である。一方で、箱の中身を真作と認定する鑑定家の署名を「箱書き」と言い、認定された芸の意味から「おはこ」になったとする説もある。
歌舞伎に由来する言葉は、「お家芸」、「大詰」、「黒幕」、「正念場」等、数多いが、「十八番」もその1つとなっている。
ゴルフのホールは18ホール
ゴルフは1ラウンドが18ホールとなっている。
なぜ「10」とか「20」とかいった切りの良い数字ではなくて、「18」という数字になっているのかについても諸説あるようだ。
最も有力な説とされているのが、ゴルフ発祥の地とされるスコットランドにある世界最古のゴルフ場であるセントアンドリュース・オールドコースが18ホールだったから、というものである。セントアンドリュース・オールドコースは、ゴルフの4大メジャー選手権の1つである全英オープンの開催コースの1つになっている。それまでは場所によってホールの数は様々だったが、その後に設計されていったゴルフコースは、セントアンドリュース・オールドコースの評判により、これを標準モデルとする形で18ホールになっていった、とのことである。
それでは、セントアンドリュース・オールドコースは何故18ホールだったのか、ということになる。これについては、そもそもセントアンドリュース・オールドコースは、18世紀の半ばには22ホールのコースだった(当時のコースはアウトとインで同じホールでプレーされており、全体では22 ホールのコースとなっていた)。ところが、コースに市の土地が含まれていて、1764年に市が不動産転用を理由に一部返還を求めてきたこともあり、コースの改造が行われて、結果的に4ホールが削られることになって、最終的に18ホールになったとのことである。
別のよく話に出てくる説としては、スコットランドのリンクスコースは、海岸線沿いにあって、北極からの風が吹き込むことから、とても寒く、この寒さをしのぐため、ゴルファーは、1ホール終える度にスコッチをキャップ1杯飲んでいた。そのスコッチがなくなるのがちょうど18ホールを終えた時だったことから、いつの間にかゴルフは18ホールが基準になった、というのがあるようだ。ウィスキーの1杯もゴルフの1打も「ワンショット」というのはこれに由来しているとされる。ただし、こちらの説は気の利いたスコットランドのジョークと言われているようだ。
いずれにしても、このように、「18」という数字に合理的な意味合い等があったわけでもなく、偶然18ホールになっていったようである。因みに、1ラウンドが18ホールという正式なルールができたのは、1950年代になってからということで、比較的最近のことである。
十八界
「18」と言う数字は、仏教に関りのある数字となっている。
「十八界(じゅうはっかい)」というのは、仏教用語で、眼・耳・鼻・舌・身・意の6種の感覚器官である「六根(ろっこん)」と、その対象となる色・声・香・味・触・法の6種の「六境(ろっきょう)」と、六根が六境を認識する眼識・耳識・鼻識・舌識・身識・意識の6種の心の働きである「六識(ろくしき)」の合計18種の範疇、十八境界、のことを指している。
仏教において、世界を構成する一切の法を分類した三つの範疇のことを「三科(さんか)」といい、五蘊、十二処、十八界のことをいう。なお、六根・六境・六識の三範疇をいうこともある。
このように「18」は全てを表す意味を有している。
また、阿弥陀如来(あみだにょらい)は四十八の願(がん)を立てたとされるが、その48の中でも18番目の願が「念仏をする人達を必ず救済する」というもので、最も大事な願とされ、「弥陀の十八願」と言われている。このため、市川團十郎は、この「18」という数字を選んだとも言われている。
なお、毎月18日は、観音菩薩の縁日になっている。
多くの国で18歳は成人年齢
成人年齢は各国によって異なっているが、多くの国で18歳が成人年齢となっている。
日本も以前は20歳以上が成年者とされていたが、2022年4月1日の民法改正により、18歳が成年となっている。
・婚姻できる年齢も18歳(2022年4月1日の民法改正以前は、男性は18歳、女性は16歳)。
・選挙権年齢については、以前は20歳以上であったが、2015年6月の公職選挙法の改正により、18歳以上に引き下げられた。
・道路交通法では、普通自動車や大型自動二輪車、大型特殊自動車、けん引などの運転免許が18歳から取得できる。
欧州主要国(英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン等)、中国、インド、オーストラリア等も18歳が成人年齢となっている。米国とカナダも基本的には18歳が成人年齢となっているが、州によっては、19歳や21歳等となっている。これらの多くの国で、選挙権や自動車運転免許の取得年齢が18歳となっている。
中国では「18」はラッキーナンバー
中国の伝統では、18 は「十八(shí bā)」と発音され、「確実に金持ちになる」との意味を有する「實發(shì fā)」との類似性からラッキーナンバーと見なされている。
ユダヤ教では「18」はラッキーナンバー
ユダヤ教の数秘術の適用によると、「生命」あるいは「生きている」という意味を有するחי (チャイ)の文字を足すと 18 になることから、18 はラッキーナンバーと見なされている。
結婚式へ贈り物等は18の倍数の金額等で行われているようだ。
オーストラリアン・フットボールは1チーム18人
オーストラリアン・フットボールの競技場(フィールド、ピッチ)は、ラグビーやサッカーの競技場である約100m×70mに比べて、135m~185m×110m~155mの楕円形となっており、かなり広いものとなっている。このため、オーストラリアン・フットボールは18人というかなりの人数でプレーされる。
オーストラリアン・フットボールのプレーヤーは、この競技場の中を縦横無尽に走り回らなければならないことから、その運動量はサッカーの2倍といわれている。
日本のプロ野球の18番はエースナンバー
日本のプロ野球の18番はエースナンバーと言われているが、この理由としては、プロ野球草創期に伝説的な活躍をした若林忠志や野口二郎、スタルヒンらが18番をつけていたことが挙げられるようだ。また、歌舞伎の十八番(おはこ)がその由来であるという説もあるようだ。
ペントミノは18種類
「ポリオミノ (polyomino) 」というのは、複数の正方形を辺でつなげた多角形のことをいうが、このうちの5つの正方形を辺につなげた多角形のことを「ペントミノ(pentomino)」と呼んでいる。
この時、回転・鏡像によって同じになるものを同一と考えると、以下の図表の上の2行の12種類あることになる。ところが、鏡像を別物とすると、3行目の6種類が増えて、18種類になる。さらに回転も異なるとみなすと63種類になる。
ポリオミノ
数学における数字としての「18」
「18」が、数学の場面で現れてくる例としては、以下の通りである。
・2つのエマープの差は必ず18の倍数となる。
「エマープ(emirp)」(素数(prime)を逆にした綴り)とは、素数でありかつ10進数表記で逆から数字を読むと元の数とは異なる素数になる自然数のこと
31-13=18 71-17=54
これは、2の倍数かつ9の倍数となることから証明される。
その他
その他に、数字の「18」や「十八」が現れるケースとして、例えば以下のものが挙げられる。
・十八史略:史記・漢書・後漢書・三国志・晋書・宋書・南斉書・梁書・陳書・魏書・北斉書・周書・隋書・南史・北史・新唐書・新五代史・続宋編年資治通鑑
・武芸十八般:剣術・弓術・柔術・手裏剣術・槍術・薙刀術・棒術・杖術・鎖鎌術・水術・十手術・鉄扇術・捕縄術・馬術・抜刀術・砲術・刺又術・短刀術
・獣の数字6661の合計数は18
・毎月18日は、例えば、以下の記念日に制定されている。
(1) 頭髪の日:「とう(10)はつ(8)」の語呂合せ
(2) ファーストエイドの日:1で「ファースト」、8に濁点を附けて「エイド」と読む語呂合せ
※ファーストエイドとは、応急手当・救急救命等のこと
(3) ホタテの日:ホタテの「ホ」を分解すると「十八」になる。
1 これについては、研究員の眼「数字の「6」に関わる各種の話題-時間の単位の関係は「6」の倍数となっており、自然現象等でも多く観測される-」(2023.2.9)で紹介した。
最後に
今回は数字の「18」について、それが現れてくる例やその理由等について、報告してきた。
「18」という数字は、2でも3でも割り切れて、6や9という約数も有していることから、結構使い勝手の良いきれいな数字だとの印象があるように思われる。また、「十八番」という言葉も一般に広く知れ渡っていることから、結構この数字に良いイメージを有している方も多いのではないかと思われる。
いずれにしても、「18」という数字も、各種の場面で現われてくる数字だということを認識していただければと思っている。
0コメント