榠樝の花 ・ カリンの実

https://gptelemann.wordpress.com/2009/07/19/%E7%85%A7%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%82%93%E5%90%9B%E3%81%AE%E4%BF%B3%E5%8F%A5%E6%AD%B3%E6%99%82%E8%A8%98%E3%80%80%E3%80%8C-%E6%A6%A0%E6%A8%9D%E3%81%AE%E8%8A%B1%E3%80%80%E3%83%BB%E3%80%80%E3%82%AB%E3%83%AA/ 【照れまん君の俳句歳時記 「 榠樝の花 ・ カリンの実」】より

人界と森のあはひや花榠樝  照れまん( じんかいと もり の あわいや はなかりん)

            (1)      

           2008 04 15

 「    カリンカ カリンカ カリンカ マヤ

        庭にはいちご 私のマリンカ  エイ

       カリンカ カリンカ カリンカ マヤ   ~~」

  ――もしもし、照れまんさん 何を歌ってはりますの?

    のりのりで曲を速くしたりして・・・・。違うでしょ~??? ――

 「今回は、カリンカ じゃないの??」

 ――何を言うてはりますの? 今回はカリンか?やて???カリン でしょう。

 「え~~っ、カリンカでなく、カリンか? カリンか? 榠樝か、カリン・・・か?」

 お~い、誰か一発 照れまんさんを殴ってちょうだい。 ハ~イ ポカ 

 「デ~オ~、イテテ・イテテ・イテテ・イテテ・・・・。」

 ――ところで、カリンカ とか、マリンカ ってなんですのん? ――

 「カリンカは植物の カリーナで ガマズミ と言うらしい。

 マリンカは植物の マリーナで エゾイチゴ らしいですよ?」

 ――え~~っ、初めて聞きました~。 「ワタシも初めて 言いました。」

           (2)

              2008 04 15

  被子植物門・双子植物綱・バラ目・バラ科・ナシ亜科・ボケ属  カリン

  学名 : Chaenomeles sinesiis   カエノメレス シネンシス

   Chaino (開ける) + melon (リンゴ)で裂けたリンゴと言う意味。

   ギリシャ語では melon は リンゴなのだろうか?

   みんな、リンゴと書いてある。

  原産 : 中国

  別名 : 安蘭樹(あんらんじゅ) ・ 喰わず梨

 日本に渡来したのは非常に古いらしく、いつ頃入ってきたかははっきりとは

解らないそうです。 おそらく、千年前には入っていたようです。

            (3)      

      新しい葉(ノコギリ葉)と蕾    2008 04 15

  榠樝  この漢字、ちょっと カリン とは読めませんね。

  普通は 「花梨」と書きます。その他、「花櫚」(カリン)、或いは「唐木瓜」

(からぼけ)と書くようです。

 榠樝 の漢字の語源を調べてみましたが、「字通」には見つかりませんでした。

中国では、昔カリンを  榠樝 と書いたらしい。今では 木瓜 (もっくわ) と書くそうです。 日本では 木瓜 と書けば ボケ と読み 朱の花の咲く木瓜のことですから、

ややこしいですね。

確かに、実(み)はちょっと木瓜似ています。

 以前書いた 「木瓜の花と実」 ← ボケの記事はこちら・・・・。

           (4) 

 上の写真。 榠樝の木が何本も植えてあるように見えますが、これは一本です。

低い所で枝が分かれると、みんな上を向いて伸びるので、何本も木があるように

見えてしまいます。

 さて、いよいよ俳句ですが、 「榠樝の花」 は 晩春、春の季語。

傍題に、「くわりんの花」・「からぼけの花」・「西洋 榠樝」・「メドラー」 など。

この辺りでは、4~5月にかけて、花が咲いています。

 メドラー  Medlar 又は Common Medlar と言うのは、セイヨウカリンで、

ボケ属ではなく、セイヨウカリン属の植物。  学名は Mespilus germanica     

 俳句では  「榠樝」か、「くわりん」の表記の句が多いようです。

       榠樝の花数えたくなるやさしさに    相馬遷子

    (かりんのはな かぞえたくなる やさしさに )    そうませんこ

 カリンの花は何とも言えぬ優しさと気品があります。桜や梅など、他の木々の

ように、枝にあまり多くの花を付けません。

その奥ゆかしさに、思わず花の数を数えたくなってしまいます。

           (5)

                  2009 04 09

      甲斐犬もくわりんの花も夜明け前      黒田杏子

 甲斐の国は、山に囲まれているので、日の出は遅いのでしょう。日の出には

まだだいぶありながら、やや明るくなってきているのでしょうか。

犬にも 榠樝の花にも、もうすぐ夜明けですよ、と言う句。ただそれだけを詠むのであれば、「~夜明けかな」でも 「朝(あした)かな」、でもいいのです。ところが、「夜明け前」としています。それに、系助詞の「も」が使われています。系助詞の「も」を使うと面白いことが

起きます。

 この句のように、並列の系助詞の「も」を使うと裏の意味が作りやすいのです。

たとえば、「私も好きです」と書けば、当然その裏に「あなたも好きですね。」ということです。ところが、この系助詞の 「も」 は安易に使ってしまうと、句格が低くなると言う欠点があります。

 前掲の句では、「A も、B も~」と犬とカリンが書かれています。ところが、ここには、「~C も、~D も~」ということが隠されていると想像されます。

この CとD に何を想像するかで、まったく意味が違ってきます。 私はこのように読んでみます。「C は私」で「D は俳句」・・・・、ではないかと思います。

犬もカリンも夜明け前だけれども、「私」も 「私の俳句」にとっても、今は「夜明け前」なんですよ、ということではないでしょうか?           

 「夜明け前」と書くと、何となくのっぴきならないものを感じてしまいます。

島崎藤村の小説「夜明け前}は確か木曾地方だったでしょうか。掲句は、甲斐の国のようです。           

 甲斐といえば、俳人の飯田蛇笏氏や飯田龍太氏のような、素晴しい格調高い俳句を詠まれた俳句宗匠の郷里。

 黒田杏子氏の胸中に、自分や自分自身の俳句活動に、俳句維新のような、新しい旅立ちへの並々ならぬ決意のようなものがおありだったのではないでしょうか。

 榠樝の花は咲いてから実になるまでに時間が掛かります。それに実は生食することは出来ません。ゆっくりと、ホワイトリカーの中などで、抽出・熟成されていきます。

 眼前の甲斐犬・ 榠樝の花 を詠みながら、私と私自身の俳句の未来が、これらに重ねられているのでしょうか。 続いて俳句を読んでみます。

      小暗きに散り敷くことよ花かりん       岸田稚魚

           (6)  

       カリンの6~7cmの青い実    2009 06 26

  榠樝の花が咲いた後、やがて実が成ります。「 榠樝の実」 は 俳句では 秋の季語。      

 言い換え、傍題に、「花梨の実」・「かりんの実」・「くわりんの実」・「あんらん樹」

・「唐梨」(からなし)・「きぼけ」・「海棠木瓜」(かいどうぼけ) があります。

カリンは、初めは青い実ですが、秋になると、黄色く熟れて来ます。春のカリンの季語の時には、必ず「花」とか「咲く」と書かなければなりませんが、秋の場合は  榠樝の実 と必ずしも書かなければならないということはありません。ただ 「カリン」 とだけ書かれている場合もあります。カリンだけで、実のことを言う場合がありますので、注意が必要です。

 俳人の臼田亜浪氏が、かりんの花と実の両方の句を作っておられますので、書いてみます。

      榠樝咲くと見て眠りたり霽れてをり     臼田亜浪

     (かりんさくと みて ねむりたり はれており)      うすだあろう

      秋風の榠樝二三顆寝て見ゆる        臼田亜浪

一句目。普通は「晴れる」と書きますが、「霽れる」なんて見たことがありません。

 霽れる (はれる)  声符は セイ。 雨後に晴れるの意。

眠る前にかりんが咲いているのを見た時には小雨が降っていたのでしょう。目覚めてみると雨が止んでいて、すっかり晴れていたというのです。

二句目、部屋でごろりと横になっても かりんの実が見えるのです。田氏のお宅の庭には、 榠樝の木が植えてあったのでしょう。        

 その他、 榠樝の実の俳句を 載せてみます。

      くわりんあり鳥羽僧正の絵巻あり       後藤 夜半

      生家にもくわりん二十は付いている      阿波野青畝

      くらがりに傷つき匂ふかりんの実       橋本多佳子

 素晴しい句ばかりです。

          (7)     

        7月になり 少し色づき始めた実     2009 07 16

 カリンは ビタミンC ・ リンゴ酸・クエン酸・タンニン・アミグダリンなどが含まれ

昔から漢方薬に用いられていたようです。喉や咳にいいようです。

現在は、ホワイトリカーなどに漬け、果実酒として飲まれることも多いようです。とても体にいいそうです。 

       産土神や旅の鞄にくわりんの実       角川春樹

 産土神(うぶすながみ) と言うのは、その人が生まれた土地の守護神。確か、父源義氏は富山県のご出身。調べてみると春樹氏も富山県出身と書いてあります。

 ちょうど、果実の収穫をしていたので、写真に撮らせて貰いました。

        (8)

   2009 11 07

上の写真。ジャガイモみたいですが、カリンの実です。とれとれの採れたてです。

  続いて、榠樝の幹を見てみます。

         (9)

                           2008 04 15

  榠樝の樹皮が剥がれかけています。この木の樹皮は毎年剥がれるそうです。

それで、雲紋状・うろこ状の不思議な模様が幹に現れるようです。榠樝の木材は、赤くて固いので、古くから飾り棚や机などの家具材や、床の間の床柱に使われているそうです。

 長くなりましたが、最期にもう一枚、 榠樝の花の写真を・・・・。

           (10)     

  2009 04 09  私は榠樝の花を昨年初めて見ました。

 畑の一番上の段に咲いています。昔はまだまだ上に沢山の畑がありましたが、今ではこの上は荒れてしまい、雑木林になっています。この畑の持ち主のお家には、今は誰も住んでいません。 五月の連休に、息子さんが都会より帰って来て、草刈をしていたのが見えたので、登って見ました。私より7~8歳年上。懐かしいね、と言う話をしながら、このピンクの花の咲く木の名前を聞いた所榠樝だと教えてくれました。

「実が熟れたらあげるけえ、 榠樝酒を作りんさい」 と・・・・。

お兄さんは、自分ではまったく作ったことがなく、母親が生きている頃には、作ってくれていたそうだ。「たった2個でも出来るよ!」と・・・・。

お母様が亡くなられて、もう20数年がたったようだ。       

      二個二個の果実酒の夢 花榠樝    照れまん

 今回は、畑に咲いている  榠樝・カリン の花と実  を載せてみました。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

0コメント

  • 1000 / 1000