木村聡雄教授

https://gendaihaiku.gr.jp/learn/page-4786/page-8375/ 【木村聡雄 GHOC 現代俳句オープンカレッジ講師】より

【俳号】木村聡雄(きむらとしお)【所属結社】吟遊

【俳歴】「俳句評論」準同人 「未定」編集代表・同人 「吟遊」創刊同人

【受賞歴】平成9年「未来図」新人賞受賞

【句集・評論など】

句集『彼方』(邑書林)  句集『いばら姫』(ふらんす堂)

対訳アンソロジー編集『眠れない星』(七月堂)共著

対訳アンソロジー編集『水の星』(北溟社)共著 評論『俳句のルール』(笠間書院)共著

英文評論『アメリカン・ハイク』(米レキシントン社)共著

【講師歴】自作句英訳講座(現俳国際部)

【講演など】

「俳句新時代」(アメリカ俳句協会 大会講演 2013 シカゴ)

「世界的視点から俳句を考察する」(インド大使館 印日文学祭講演 2015 東京)

【得意分野】

選者○ 講師○ 講演○執筆(俳句○ 評論○ 随筆○)

(1)海外俳句の特徴、歴史 (2)もちより自作句英訳 など。


https://www.youtube.com/watch?v=7m5CsylC_X4

https://gendaihaiku.gr.jp/page-13420/ 【海外俳句の鑑賞  木村聡雄】より

ブライスの見たもうひとつの短詩型 ――川柳 日本の風刺詩  木村聡雄

 イギリス人俳文学者、R. H. ブライス(一八九八~一九六四)は、世界中の俳句、とりわけ英米の俳句の展開におそらくは最大級の影響を与えた一人である。第一次大戦中はロンドンで良心的兵役拒否により三年間収監され、その後ロンドン大学で学ぶ。一九二五年には当時の京城帝国大学に外国人教師として赴任した。その後、第二次大戦中は日本で交戦国民間人拘留所に三年以上収容され、戦後は学習院大学教授となった。昭和天皇の終戦後の「人間宣言」の英文草稿を作成、また当時の皇太子(現上皇陛下)の英語個人教授を十数年務めたこともよく知られた話であろう。彼の俳句に関する多くの著作は、英語圏をはじめとしていわば事実上の俳句の教科書として支持され、戦後の欧米の俳人たちを生み出す原動力のひとつとなった。近年、海外俳人の来日時には私自身も幾度か、ブライスの墓所(境内の鈴木大拙の墓のすぐ近く)のある北鎌倉の東慶寺へと一緒に墓参しことがあるが、海外俳人たちのブライスへの畏敬の念を感じたものである。

 ブライス生誕百二十五周年にあたる昨二〇二三年、新たな翻訳書が出版された。『日本の風刺詩 川柳』(西原克政訳、花伝社/原著は一九四九年)である。(訳者の西原克政氏は私が二〇代はじめころの大学院時代からの英米文学研究仲間でもある。)これ以前には、二〇〇四年に日本で初めてのブライスの翻訳『俳句』(村松友次・三石庸子共訳)が、国際俳句協会(HIA)とも関係の深かった永田書房から出版されただけで、それから十九年を経て、このたび二冊目の翻訳書の登場となった。

 本書は第一章(序論)と第二章(川柳名句選)からなる。何百句か取り上げられている例句一句一句はブライス自身が英訳していて、それぞれに付されたコメントは川柳作品の本質にせまろうとするものである。挿絵として川柳漫画(谷脇素文)もふんだんに掲載されてあたかも絵本のようにも楽しめる。第一章は書物全体の四分の一ほどの長さだが、これがいわゆる本文であって、ここにブライスの考える川柳と俳句の定義が示されている。その書き出しは、

川柳は、自然の事柄ではなく人間の本質への「瞬間の幻」を表現するものである。

という一文である。谷川俊太郎の英訳をもこなす訳者による的確な和訳に、読者は気づけばもうブライスの見た川柳の世界に浸かることになるだろう。川柳との比較のために語られる俳句へのブライスの言葉は、それ自体が彼の捉えた俳句の特質を語るものである。

俳句は個別の物の性質を表現し、それを通して、すべての物の本質を表そうとする。

俳句は、読者の想像力を頼りにすることがなにより必要である。

 第一部の後半で川柳の起源(十八世紀、元禄から天明時代)とその技法について分析を示した後、第二部では川柳をテーマごとに分類し解説を加えている。有名な俳句のパロディーも挙げられている。

いざさらば居酒屋のあるところまで 古川柳

Now then!  Right up to  The wine shop!

 近年書かれたものかとさえ思われる一句、人間の特質は何百年経っても変わらないと気づかされるような古くて新しい作品と言えるだろう。元の句は言うまでもないが、ブライスの芭蕉英訳がつけられているので引いておこう。

いざさらば雪見にころぶところまで 松尾芭蕉

Now then,  Let’s go snow-viewing  Till we tumble over!

 次の鶴亀句はどこかで聞いたことがあるような理屈っぽい句と言えようか。

かめ淋し鶴に別れて九千年  水平坊

The tortoise,  parting from the crane,  Is lonely for nine thousand years.

 ところが、同じ主題の古川柳でも次の句では、ただ受け入れるほかないわれわれの生死を、前の句に書かれた「淋し」という人間味をも意図的に切り捨てて、あたかも天上からただ見つめているかのようである。

鶴の死ぬのを亀がみてゐる 古川柳

The tortoise, Is watching The crane die.

 以下の句は、和歌・狂歌だけでなく川柳・俳句においてもありそうな状況だろう。

ほととぎす二十六字は案じさせ 古川柳

“Hototogisu,” Makes us think Of twenty six more syllables.

 われわれなら残りの十二字をなんとかひねり出さなければ、といったところだろうか。

 俳人にとって川柳の魅力とは何だろうか。広く認知されたいわゆるサラリーマン川柳の類いなら俳人も頭をひねって楽しめそうである。しかしながら現代の川柳作家たちに交じって川柳を作るとなるとどうだろう。いずれにせよ、ブライスが捉えた川柳の変わらない本質を味わうには最適の一冊であることは間違いない。

(英訳はすべて、R.H.ブライス


https://shop.kasamashoin.jp/bd/isbn/9784305708403/ 【俳句のルール】より

井上 泰至(編) / 片山 由美子(著) / 浦川 聡子(著) / 井上 弘美(著) / 石塚 修(著) / 中岡 毅雄(著) / 深沢 眞二(著) / 岸本 尚毅(著) / 青木 亮人(著) / 木村 聡雄(著) / 森澤 多美子(著)

紹介

これだけ知れば楽しく読める/詠める10の俳句のルールをやさしく説明 !

高校の教科書に載っている作品を中心に、俳句の魅力を味わうのに十分な10のルールを選びました。初めて俳句を読む人々を思い浮かべて書かれた、わかりやすくて本格的な俳句案内書です。

俳句の面白さとは、わずかな素材と、たった一つのレトリックに込めた「感じ」を読み取るところにあると言っていいでしょう。そのためには、多少のルールを了解しておくことが不可欠です。

本書を読まれた方は、読む以前よりも、この小さな詩を自力で読み解く視点を確実に得られるでしょう。そして、たとえ俳句を詠まなくても、場合によっては写真を撮ろうとする衝動に駆られることでしょう。

よりよい写真を撮ったり、人の心を動かす文章を書いたりすることへの大切なヒントをも、本書は内蔵しています。そうした「視点」を得られることこそ、本書の「ねらい」です。

執筆は、井上泰至/片山由美子/浦川聡子/井上弘美/石塚 修/中岡毅雄/深沢眞二/岸本尚毅/青木亮人/木村聡雄/森澤多美子。

目次

●はじめに

俳句―そのルールに潜む「日本らしさ」のプログラム

▼井上泰至

・俳句占い・技巧のない句にもあるルール・しっかりと観察し繊細に言葉を選ぶ

・リズムと文字が交錯する美の世界・ルールを知れば俳句はますます楽しい

・俳句という「器」の日本らしさ

第1章●季語(きご)

―俳句にはなぜ季語が必要なのでしょう?

▼井上泰至

・季節感―豊かでドラマチックな四季・安定感があるから連想が働く

・なぜ、ルールとしての「季語」は生まれたか?・人間くさい季語たち

・俳句の生み出す時間

第2章●定型・字余り(ていけい・じあまり)―なぜ俳句は五七五なのでしょう?

▼片山由美子

・俳句は五・七・五 ・五・七・五というリズム ・五・七・五を成り立たせているもの

・字余り・字足らず・定型と破調

第3章●省略・連想(しょうりゃく・れんそう)

―短い俳句は何を省略すれば効果的なのでしょう?

▼浦川聡子

・省略―想像の翼を広げるために・省略は日本の伝統芸能にも見られる

・短い俳句に「説明」は要らない・一点に焦点を絞り、あとは潔く捨てる

・当たり前すぎる形容詞や動詞を再点検する・「理由」や「経過」は述べなくていい

・こういう省略をしてはならない・連想を磨く……究極の省略・何を削り、何を残すか

第4章●切字・切れ(きれじ・きれ)

―俳句にはなぜ「切れ」があるのでしょう?

▼井上弘美

・切字「や」のはたらき・切字「かな」のはたらき・切字「けり」のはたらき

・その他の「切字」

第5章●句会(くかい)

―俳句はどうして集団で作り、批評しあうのでしょう?

▼石塚 修

・作者が読者と入りまじる文学・句会のすすめ方・句会の歴史的な変遷・句会の教育的な意義

第6章●文語と口語(ぶんご と こうご)

―俳句も現代の詩なのに、どうして文語で詠むのでしょう?

▼中岡毅雄

・口語で表現する現代詩・高浜虚子の「大根の葉」の句・文語表現の魅力を体験してみよう

・韻文としての俳句の性質・文語表現には格調がある・文語表現は省略が効く①

・文語文体は省略が効く②・例以外としての口語俳句

第7章●滑稽・ユーモア(こっけい・ゆーもあ)

―俳句はどうしてユーモアの詩と言われるのでしょう?

▼深沢眞二

・スローガンと俳句・思いを、ユーモアにくるんで・日本語の詩の展開

・『古今和歌集』仮名序の説明する和歌・和歌から連歌が派生すること

・連歌が長く続けられてゆくこと・俳諧が連歌から分かれた事情

・俳句にユーモアが必要なわけ・現代、古典の俳諧を読む際に注意したいこと

第8章●写生と月並(しゃせいとつきなみ)

―俳句はなぜ実際にモノを見ることを重視するのでしょう?

▼岸本尚毅

・写生句とはどんな句か・写生と近代・「見たまま」「ありのまま」の意味

・「写生」一本やりでは限界がある

第9章●無季・自由律(むき・じゆうりつ)

―季語も定型もない俳句とはどういうものなのでしょう?

▼青木亮人

・俳句の条件・俳句史の流れ・「俳句的」とは?・中村草田男を例に

・「万緑」をあえて使ったワケ・『もののけ姫』のような自然が「万緑」・「俳句」とは

・自由律における「俳句」・無季句における「俳句」・自由律や無季句を貫く「俳句」性とは

第 10 章●国際俳句(こくさいはいく)

―世界中でハイクが詠まれているのはなぜでしょう?

▼木村聡雄

・俳句の二十一世紀・至るところ俳句・三行自由詩・自然とそのほかの主題

・日本発、世界へ・短さが意味すること・極東の島国への興味・俳句への憧れ

・国際俳句とは何か

●おわりに

どうすれば、俳句はおもしろく読めるのか、楽しく学べるのか

▼井上泰至

・俳句的視点を身につける・日本語表現のエッセンス

●俳句用語解説

森澤多美子

●執筆者一覧

著者プロフィール

井上 泰至(イノウエ ヤスシ)

防衛大学校教授。公益社団法人日本伝統俳句協会常務理事。著書に、『雨月物語の世界 上田秋成の怪異の正体』(角川選書、2009年)、『春雨物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫、2010年)、『子規の内なる江戸 俳句革新というドラマ』(角川学芸出版、2011年)、『江戸の発禁本』(角川選書、2013年)、『雑食系書架記』(学芸みらい社、2014年)、『近代俳句の誕生 子規から虚子へ』(日本伝統俳句協会、2015年)など。NHK木曜時代劇『まんまこと〜麻之助裁定帳』(2015年7月〜10月)の俳句を担当する。

片山 由美子(カタヤマ ユミコ)

公益社団法人俳人協会理事、俳誌「狩」副主宰。元青山学院女子短期大学非常勤講師。評論『現代俳句との対話』(本阿弥書店、一九九三年。俳人協会評論新人賞受賞)、『俳句を読むということ』(角川書店、二〇〇六年。俳人協会評論賞受賞)、『現代俳句女流百人』(牧羊社、一九九三年)、句集『風待月』(角川書店、二〇〇四年)、『香雨』(ふらんす堂、二〇一二年)など。

浦川 聡子(ウラカワ サトコ)

編集者。俳人。現代俳句協会所属、俳誌「晨」同人。放送大学非常勤講師。別冊NHK俳句『もっと知りたい 美しい季節のことば』(NHK出版、二〇一三年)、句集『クロイツェル・ソナタ』(ふらんす堂、一九九八年)、『水の宅急便』(ふらんす堂、二〇〇二年)、『眠れる木』(深夜叢書社、二〇一二年)など。

井上 弘美(イノウエ ヒロミ)

公益社団法人俳人協会評議員。「汀」主宰。「泉」同人。武蔵野大学非常勤講師。朝日新聞京都俳壇選者。句集『あをぞら』(富士見書房、二〇〇二年)、『汀』(角川マガジンズ、二〇〇八年)、NHK俳句『俳句上達9つのコツ―じぶんらしい句を詠むために』(NHK出版、二〇一三年)など。

石塚 修(イシヅカ オサム)

筑波大学教授(日本古典文学・近世文学、国語教育研究)。『茶の湯ブンガク講座 近松・芭蕉から漱石・谷崎まで』(淡交社、二〇一六年)、『納豆のはなし 文豪も愛した納豆と日本人の暮らし』(大修館書店、二〇一六年)、『西鶴の文芸と茶の湯』(思文閣出版、二〇一四年)、『中学校・高等学校 国語科教育法研究』(共著、東洋館出版社、二〇一三年)など。第25回茶道文化学術奨励賞受賞(二〇一四年度)。

中岡 毅雄(ナカオカ タケオ)

俳人。「藍生」所属。評論『高浜虚子論』(角川書店、一九九七年。俳人協会評論新人賞)、評論『壺中の天地 現代俳句の考証と試論』(角川学芸出版、二〇一一年。俳人協会評論賞)、NHK俳句『俳句文法心得帖』(NHK出版、二〇一一年)、句集『一碧』(花神社、二〇〇〇年)、『啓示』(ふらんす堂、二〇〇九年)など。

深沢 眞二(フカサワ シンジ)

和光大学教授(日本古典文学、連歌・俳諧研究)。『風雅と笑い―芭蕉叢考』(清文堂出版、二〇〇四年)、『連句の教室 ことばを付けて遊ぶ』(平凡社新書、二〇一三年)、『旅する俳諧師―芭蕉叢考 二』(清文堂出版、二〇一五年)、『芭蕉・蕪村 春夏秋冬を詠む 春夏編』『芭蕉・蕪村 春夏秋冬を詠む 秋冬編』(共著、三弥井書店、二〇一五〜六年)など。

岸本 尚毅(キシモト ナオキ)

俳人。俳誌「天為」「屋根」同人。岩手日報俳壇選者、山陽新聞俳壇選者。句集『舜』(花神社、一九九二年)、『俳句の力学』(ウエップ、二〇一三年。第23回俳人協会評論新人賞)、『高浜虚子 俳句の力』(三省堂、二〇一〇年。第26回俳人協会評論賞)など。

青木 亮人(アオキ マコト)

愛媛大学准教授(近現代俳句研究)。俳句評論集『その眼、俳人につき』(邑書林、二〇一三年。俳人協会評論新人賞及び愛媛出版文化賞大賞)、論文「汽罐車のシンフォニー 山口誓子の連作俳句について」(『昭和文学研究』七三号、二〇一六年)、評論「批評家たちの「写生」 小林秀雄」(俳句雑誌『翔臨』七六号、二〇一三年〜連載中)など。

木村 聡雄(キムラ トシオ)

日本大学教授(比較文学/英米文学研究)。俳人。現代俳句協会国際部長。国際俳句交流協会理事。日本PENクラブ会員。句集『彼方』(邑書林、二〇〇一年)、『いばら姫』(ふらんす堂、二〇一〇年)、論文 “A New Era for Haiku”(Frogpond, U.S., 37-1, 2014)、評論『英米文学にみる仮想と現実』(共著、彩流社、二〇一四年)、解説に『丸善イギリス文化事典』(共著、丸善出版、二〇一四年)など。

森澤 多美子(モリサワ タミコ)

国立高等専門学校機構沼津工業高等専門学校准教授(日本古典文学・近世文学研究)。元静岡県富士見中学校・高等学校教諭。報告「素描・滝の本連水ー芭蕉を愛した明治俳人」(大輪靖宏編『江戸文学の冒険』翰林書房 二〇〇七年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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