Facebook今野 華都子さん投稿記事
「天然」と「自然」──言葉が映す、日本人の世界の見え方
私たちがふだん何気なく使っている「天然」と「自然」。実はこの二つの言葉には、日本人の“世界の感じ方”そのものが映し出されています。
今日は、その言葉の移り変わりをたどりながら、日本人がどんな世界を生き、そしてどんな世界を大切にしてきたのか感じてみたいと思います。
もともとの「天然」─「おのずから成るもの」
古代から中世にかけて使われてきた「天然(てんねん)」という言葉には、
「天のまま」「おのずから成り出るもの」という意味が込められていました。ここでいう「天」とは、単なる空のことではありません。“天地(あめつち)”そのものの根源に流れる力です。日本人が大切にしてきた「むすひ」に近いニュアンスです。
ですから「天然」とは、人もまた天地の一部として共に呼吸し、いのちを巡らせていく世界観を支える言葉だったのです。
「自然(じねん/しぜん)」は、もともと中国の思想から入ってきた言葉です。
老荘思想や仏教の世界では、自然(じねん)=自ずからそうなることつまり「作為のない、あるがままの状態」を表していました。ここまでは「天然」とも、どこか似た響きがあります。
しかし、この「自然」はやがて大きな転換点を迎えます。
明治以降──「Nature」の訳語としての「自然」
明治時代、西洋の思想や科学が一気に日本に流れ込んできました。
その時、英語の “Nature” を翻訳するために「自然」が使われるようになります。
西洋の Nature は、人間とは別に存在する客観的な外界法則で説明できる物質世界を意味します。その影響で日本語の「自然」も、次第に人間の外側にあるもの観察し、研究し、ときには支配する対象としての意味が強くなっていきました。
つまり、「おのずから成るいのちの循環」という有機的な感覚は薄れ、世界を「分けて見る」近代的な視点が広がっていったのです。
「天然」から「自然」へ──言葉が示す世界観の変化
• 天然:天とともにある。人もいのちの営みの一部。• 自然:人の外にある。観察の対象。
これは言い換えれば、「共に生きる世界」から「分けて見る世界」へと視点が変わったということ。
科学や産業が発展するきっかけとなった一方で、どこか「いのちの響き合い」を感じる力が弱まってしまった…そんな側面もあるのかもしれません。
だからこそ今、改めて“天然”の感覚「天とともに、おのずから成る世界」に心を向けることが大切なのだと感じています。
「自然に生きる」は “ナチュラル” ではなく、ほんらいは “じねん(おのずから)に生きる” ということ。作為を超えて、天地の理に身を委ねる生き方。
言葉を辿ることは、私たちがどんな世界に生きてきたのか、そしてこれからどんな世界を生み出すのかを見つめ直す道でもあります。
言葉は、いつも世界を映してくれる鏡ですね。全国古事記塾主宰 今野華都子 記す
https://yujyaku.blog.fc2.com/blog-entry-1364.html 【■ 蓮の葉も破れ尽きたり枯れ蓮】より
( はすのはも やぶれつきたり かれはちす )
蓮(はす)は、夏に清らかな花を咲かせ、短歌や俳句にもよく詠まれる。また、その葉・姿に関しては、夏に「蓮の葉」、秋に「破れ蓮(やれはちす)」、冬に「枯れ蓮(かれはちす)」というように名を変え、それぞれ独特の情趣をもって詠まれる。
掲句は、そんな蓮の葉・姿の変化をとらえて詠んだ句だが、「破れ蓮」の破れ尽きた姿を、「枯れ蓮」としてとらえて詠んだものである。実景を見ると、まさに精も根も尽き果てた感じである。
ところで、蓮に関してはいくつも季語があり、整理すると以下のようになる。
【春】 蓮植う
【夏】 蓮、はす、はちす、蓮の花、蓮華
紅蓮、白蓮、蓮(の)葉、蓮(の)浮葉
【秋】 蓮の実、破(れ)蓮、敗苛、やれはす
やれはちす、秋の蓮、蓮の飯
【冬】 枯(れ)蓮、かれはす、かれはちす
蓮枯る、蓮の骨、蓮根掘る
こう見てみると、蓮は年間通して親しまれた植物であることが分かる。事実、蓮は古来から日本人に馴染みが深く、万葉集にもかなり歌われている。中国でも大いにもてはやされ、蓮を詠んだ漢詩は枚挙にいとまがないという。
蓮の葉に関して言えば、「露を宿した蓮の葉」が儚さを象徴し、「破れ蓮」は、敗荷とも書き、敗残の惨めな姿を髣髴させる。そして、「枯れ蓮」は、茎も折れ、まさに力尽きた荒涼とした情景を思い起こさせる。
しかしながら、来年の春には蓮が植えられ、5月には小さな円形の葉が水面に浮いて「蓮の浮葉」を形成し、泥中から長い茎を出して清楚な花をつける。「蓮は泥より出でて泥に染まらず」。何とも面白き植物である。
【枯蓮、蓮枯るの参考句】
蓮枯れて池あさましき時雨かな (与謝蕪村)
蓮枯れて夕栄うつる湖水かな (正岡子規)
枯蓮の折れたる影は折れてをる (富安風生)
枯蓮や水垢見れば流れゐる (水原秋桜子)
蓮枯るるすべて終るといふ相 (富安風生) *相(すがた)
https://ameblo.jp/yujyaku/entry-12496078821.html 【蓮池にて 二句】より
■ 蓮池にて 二句
蓮の葉に隠れてござる莟かな( はすのはに かくれてござる つぼみかな )
蓮の葉の戦ぎに響く牛蛙( はすのはの そよぎにひびく うしがえる )
先週の土曜日、例により2週間ぶりに京都の植物園に行ってきた。
前に行った時は、紫陽花が花盛りだっが、今その主役も蓮に変わりつつある。まだ、莟のものも多かったが、あと一週間もすれば満開になるだろう。
本日の掲句の第一句は、いくつもの蓮の莟が大きな葉に隠れて、まさに開花しようと待ち構えているのを見て詠んだ句である。「蓮の葉」は「蓮」「蓮の花」とともに夏の季語。水面に浮かんでいるものは特に「蓮の浮葉」ともいう。
第二句は、蓮池を眺めている時に強い風が吹いてきて、蓮の葉が大きく揺れると同時に、牛蛙のバスーンのような声が聞こえてきた様子を詠んだもの。こういう句は現場に行かないと詠めない。
*戦ぐ(そよぐ):風に吹かれて草や木の葉などがかすかに音をたてて揺れ動く様。
*牛蛙:アカガエル科アカガエル属のカエルの一種。北米原産。体長11cmから18cmセンチほど。牛のように、低く大きな声で鳴くことから、この名がついた。食用にもなり、食用蛙ともよばれる。
因みに、蓮に関しては、これまで何句も詠んでいるが、比較的ましなものを以下に再掲したい。
【関連句】
① 濁りなき蓮にピンクのグラデーション ② 透けるとはシースルーとも蓮の花
③ 皓皓と葉叢に浮かぶ蓮華かな
①、②ともに、花そのものに注目して詠んだ句で、「グラデーション」、「シースルー」というカタカナ語を入れてみた。
③は、蓮の花が、まるで緑の雲海(葉叢)の中に白く浮かぶように咲いている様子を見て詠んだ。「蓮華(れんげ)」は蓮の花の別称。
蓮は、ハス科ハス属の多年性水生植物で、原産地はインド。(エジプト、中国という説もある。)現在、様々な品種があるが、大きくは紅色・白色の花を咲かせる東洋産種と、黄色の花を咲かせるアメリカ産種の2種類に分かれるそうだ。
花期は7月~8月。花は開閉を繰り返し4日間咲く。1日目は半開まで、2日目は全開、3日目は最大に開き、4日目は朝から散り始め、午後には完全に散る。最も美しいのは2日目だそうだ。
「蓮の花」の参考句は、これまで何回か掲載したことがあるので、今回は「蓮の葉」で詠んだものを選定し、いくつか掲載した。
【蓮の葉の参考句】
蓮の葉を透す暑さのさめてゆく (阿部みどり女)
蓮の葉のひたすら青き梅雨かな (久保田万太郎)
くつがへる蓮の葉水を打ちすくひ (松本たかし)
蓮の葉のまぶしきものをこぼしけり (片山由美子)
裂け目より蓮の葉へ水ひろがりぬ (中田剛)
https://ameblo.jp/w7w7kp/entry-12691171619.html【蓮の葉 2021年8月9日(月)】より
蓮の葉の傘差してくる河童かな いわきり秋月
(はすのはのかささしてくる かっぱかな)
【季語】 蓮の葉 (はすのは) 晩夏 【子季語】 蓮の巻葉、蓮青葉
【解説】 夏の初め、柄を伸ばして水面に浮かんでいるのが「蓮の浮葉」。これに対し、成長し水面を抜き出し巻葉となり、やがて直径六十センチもの葉となって空中に広がるのが「蓮の葉」である。
仏教では涅槃の境地を象徴する神聖な花とされ、仏はこの花の上に座す。また、泥の中から伸びて美しい花を咲かせるところから、中国では聖人の花とされた。花が終わったあとの実床が蜂の巣に似ていることから「はちす」といわれ、和名の「はす」はそれを略したものである。実床の中の黒い実と地下茎(蓮根)は食用になる。
【例句】
大島 蓼太(おおしま りょうた)に 笙涼し遥かに蓮の葉分船 があります。
大島 蓼太は、享保3年(1718年) - 天明7年9月7日(1787年10月17日))は、江戸時代の俳人。本姓は吉川。諱は陽喬、通称は平助、雅号は雪中庵、里席、宜来、老鳥、豊来、空摩など多数。与謝蕪村、加舎白雄などと共に中興五傑の一人。
【掲句】
河童は想像上の動物ですが、子供の頃は本当に居ると信じていて、河童にはへそがないから
へそを取りにくると恐れていました。大人のからかいだったのですね。
河童が蓮の葉の傘を差している絵を昔見たような気がします。
蓮の葉は、里芋の葉のように、綺麗なころころした水玉ができ、弾くのですよ。
睡蓮の葉は割れ目があるから、傘になりませんから、区別して覚えて下さい。
芥川龍之介の1927年(昭和2年)の忌日。を 「河童忌(かっぱき)」といい、龍之介が生前に好んで河童の絵を描き、また短編小説『河童』があることにちなむ。俳句の季語です。(^o^)昨日でオリンピックがおわりました。感動をありがとう!!良いことがありますように
今日も元気で頑張りましょう。
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