地元以外は知らない「東武の宇都宮駅」意外な一面

https://toyokeizai.net/articles/-/659921?display=b 【地元以外は知らない「東武の宇都宮駅」意外な一面】より

百貨店と一体となった東武宇都宮駅の入り口(記者撮影)

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北関東を代表する都市である栃木県宇都宮市の玄関口、JR宇都宮駅までは東北新幹線を使えば東京駅から約50分で行くことができる。東口は2023年8月開業の次世代型路面電車(LRT)「宇都宮ライトレール」の停留場が新たな交通の拠点となりそうだ。

一方で、正面玄関といえる西口から延びる「大通り」は路線バスが列をなしてひっきりなしに往来している。その路線バスに乗って宇都宮二荒山神社の大きな鳥居の前を過ぎるとまもなく、同市の「もう1つの玄関口」である東武宇都宮駅前に到着する。

百貨店併設のターミナルビル

東武宇都宮駅は新栃木駅から分岐した東武宇都宮線の終点。駅は百貨店と一体になったターミナルビルに位置する。ホームは浅草やほかの私鉄のターミナルと比べれば小振りの1面2線の頭端式。2階部分のホームから改札を出ると、正面で出迎えるのは東武宇都宮百貨店の入り口だ。百貨店のフロアとしては3階に当たる。

百貨店は遠くからも見える「ツインタワー」の青い看板がランドマークの1つになっている。池袋店や船橋店と異なり、東武グループ内で別会社の「東武宇都宮百貨店」が県内の大田原店・栃木市役所店とともに運営している。

宇都宮店の開業は1959年11月28日。東武東上線のターミナルにある池袋店より2年半早いのは、意外に感じるかもしれない。

1998年発行の『東武鉄道百年史』によると、1950年代半ば、宇都宮市内に大規模な商業施設の建設計画が相次ぐ中で「『東武宇都宮駅にも百貨店を擁した駅ビルを建設してほしい』という声が市民の間に高まり、市議会でもたびたびその話題が取り上げられるようになった。そして、当社に対しても公式に出店要請があった」。同社としても「流通業に進出するのならこの時期をおいてない、と考えていたときでもあったので、早速その要請を受けることにした」という。

屋上に観覧車があったころの東武宇都宮百貨店(東武博物館提供)

そこでバスターミナルと一体化した駅舎に百貨店を併設した5階建てのビルを建設。1~4階が売り場で5階には大食堂とホール、屋上に遊園地を設置した。同百年史は「当社にとって、百貨店事業は初めてである。その成否は、池袋に開業するつもりの百貨店にも影響する」として、採用した従業員を松坂屋銀座店で研修させ、「準備万端を整えて開店に臨んだ」と振り返っている。

「ツインタワー」にホテルがあった

1971年には50レーンのボウリング場と500台収容の駐車場の「パーキングビル」がオープン。1973年に5階屋内の「メキシ館」、6階屋上の「アメリ館」からなるレジャー施設「東武ランド」も誕生した。「仮面ライダーなどのショーや、シーズンごとにバラエティにとんだイベントを提供し、チビッコたちの人気であった」(『東武宇都宮百貨店30年の記録』)という。

1973年に新館が完成した後の東武宇都宮百貨店(東武博物館提供)

東武ランドと同時に「新館」のツインタワーの9~12階に東武ホテルが開業した。こちらも東武グループのビジネスホテルのなかで歴史が古い部類に入る。その1年2カ月ほど前に東武ホテル第1号である「高輪東武ホテル」(現・品川東武ホテル)が品川駅西口に開業したばかりだった。

最上階13階はスカイレストラン。「北関東一番の高いレストランで、ホテル、レストランのお客様のため、宇都宮初のクリスタルエレベーターを設置した。特に眺望は素晴らしく、市内の夜景が一望できる新名所となった」(同)。

いまは1991年にオープンした「宇都宮東武ホテルグランデ」が大通りの北側で営業をしていて、新館のホテルがあった階は事務所になっている。ボウリング場やレジャー施設は時代の流れのなかで姿を消していった。

百貨店は1995年に東京街道側の「西館」が開業してグランドオープンを迎えた。

売り場面積は3万2633平方メートルを誇る。鉄道駅直結のうえ路線バスの本数も多く、公共交通機関でのアクセスに恵まれた百貨店ではあるが、北関東のクルマ社会を反映して駐車場が充実している。

1995年にグランドオープンした東武宇都宮百貨店(東武博物館提供)

2001年開業の「プラザパーキング(第3)」は、大谷石建築として有名なカトリック松が峰教会の面する通りの上空を「プラザブリッジ」で越えた先にある。ボウリング場跡の下の階にある第1パーキングや提携駐車場を含めて計1600台を停められるという。街中にありながら大規模な駐車場を有している点が強みになっているといえそうだ。

同百貨店総務部担当部長の髙木史枝さんは宇都宮市の出身。遊園地があったころを「子どもたちが遊んでいる間に親御さんたちが買い物をし、レストランで食事をして帰る、といった『ザ・百貨店』でした」と懐かしむ。そのうえで「1959年にオープンしてから60年以上、この地で百貨店を継続してこられたのは地域のお客さまに支えられてのことですので、これからも生活のお役に立てる百貨店でありたいと思っています」と強調する。

繁華街近くに用地を確保

東武宇都宮線は1931年に開業した。東武鉄道百年史は当時の状況について、宇都宮と栃木の往来は小山経由だったため「これを直結する線路ができれば、利用客は大幅に時間と費用を節約することができる。当社のねらいはそこにあり、日光線建設で多忙中だったにもかかわらず、あえてこの建設に踏み切ったのである」と解説する。

「用地買収で特筆すべきは、終点・東武宇都宮駅の位置を、繁華街近くに確保できたことである。同駅の位置や面積いかんによっては、利用者にかなりの不便を強いるものになるため、この用地取得が、同線の死命を制するものとされていた」という。

開業当初の東武宇都宮駅

開業当初の東武宇都宮駅(岩田武氏所蔵、東武博物館提供)

沿線の河川敷からの砂利輸送で貨物収入も伸び、1940年には「東武宇都宮駅は、日光線関係の駅としては東武日光駅に次ぐ収入をあげるようになり、建設目的に沿う営業成績が見込まれることになった」(同)。

かつては浅草直通列車があり、2020年までは350型車両による特急「しもつけ」も運行されていた。現在はワンマン運転の20400型車両のみとなり、日中は1時間に上下2本ずつ発着。渡辺貞夫氏の「カリフォルニア・シャワー」の発車メロディが“ジャズの街宇都宮”をアピールしている。以前の「Passenger」は東武の駅で初の発車メロディだったという。

2022年10月、東武宇都宮線がいつになくにぎわった。いちご一会とちぎ国体の総合開会式当日、航空自衛隊のブルーインパルスが「カンセキスタジアムとちぎ」の上空を展示飛行。会場最寄りの西川田駅に見物を終えた人々が押し寄せた。が、もともと電車は運行本数が少ない。東武宇都宮駅の熊倉与一駅長は「西川田駅で入場規制をしたのは初めてではないか。宇都宮など近隣からの利用が多かった」と振り返る。

東武宇都宮駅の熊倉与一駅長

東武宇都宮駅に停まる20400型電車と熊倉与一駅長(記者撮影)

栃木市出身の熊倉駅長は「東武線の中でも県庁の最寄り駅となっているのは、何を隠そう東武宇都宮駅だけです」と指摘する。確かに栃木県庁舎は大通りを渡った先にあり、歩いていくことができる。東京、埼玉、千葉、栃木、群馬にかけて広い路線網を持つ東武鉄道のなかで、県庁(都庁)まで電車を降りて徒歩で……という好立地なのは同駅しかない。

利用客は高校生のほか、官公庁に勤務する人の姿も目立つ。「百貨店の従業員や、10時の開店に合わせていらっしゃるお客さまもいます」(熊倉駅長)。

「西の東武」の将来は?

県庁に近い大通り周辺は金融機関などの支店の店舗が軒を並べるオフィス街となっている。駅前には元気寿司の1号店という東武店。東へ延びるアーケード商店街のオリオン通りもにぎわう。南には松が峰教会や宇都宮市役所、戊辰戦争の舞台でもある宇都宮城跡がある。

さらに東武の駅前から路線バスで西に向かうと大谷エリア。採石場跡の大谷資料館や大谷景観公園、坂東三十三観音の札所の1つ大谷観音で知られる大谷寺、高さが約27mある平和観音を有する観光地だ。

東武宇都宮駅と東武宇都宮百貨店

2023年7月には東武の新型特急「スペーシアX」が日光線にデビューする。その翌月にJR宇都宮駅東口のLRTが開業する。将来の西側延伸ルートも本格的に動き出しそうだ。東武宇都宮駅付近を経由し、県教育会館付近までの約5kmを2030年代前半の開業を目指して整備する計画で、さらに大谷観光地付近への延伸も検討する。まずはLRTの開業で何かと注目が集まりそうな宇都宮。「西の東武」あたりまで足を伸ばせば、地元の人しか知らない街の意外な一面が見つかるかもしれない。

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