月の神話

https://contest.japias.jp/tqj2008/100335/japan.html 【月の神話(日本)】より

月読尊つきよみのみこと

日本には、八百万の神々がいます。神々の物語は、日本最古の歴史書である『古事記』や『日本書紀』だけでなく、『風土記』や『日本霊異記』、そして口承でも伝えられています。

『古事記』によると、天と地が分かれ始めたとき、天御中主神や高皇産霊尊ら五柱の神が生まれ、次に国常立尊が生まれて天地ができ、さらに雲や、泥や砂の神も生まれました。 そして、夫婦の創造神である伊弉諾尊いざなぎのみことと伊弉再尊いざなみのみことが生まれて国ができます。ふたりは、岩と土の神や、風や木の神、山や川、野の神などたくさんの 神々を生み、火の神を生みます。 しかし、伊弉再尊は火の神を生んだときに、身を焼かれて死んでしまいます。 嘆き悲しんだ伊弉諾尊は、黄泉の国まで亡き妻を求めておもむき、帰るように説得します。

しかし彼女が、黄泉の国の神にかけあっているのを待つあいだに、見てはいけないといわれたその姿を、伊弉諾尊は見てしまいます。蛆のわいたその恐ろしい姿に、伊弉諾尊は驚いて逃げ帰ってしまいます。伊弉諾尊は、黄泉の国の汚れをはらうために水辺で身を清めます。

衣や腕輪などを脱ぎ捨てるとそれぞれが神になり、左の眼を洗うと月の神である月読尊が、鼻を洗うと須佐之男命が生まれました。

「次に、右の御目洗ひたまふ時に成りませる神の名は、月読の命」。『古事記』は、次々に生まれる神々のひとりとして、月の神誕生のようすを、淡々と記しています。そして、伊弉諾尊は、天照大神あまてらすおおみかみには天上界を、 月読尊には夜の世界を、須佐之男命には海の世界を治めるように 命じました。ギリシアやローマの神話では女神だった月の神は、日本では男性の神。 「月読」は月を数えること。月齢を読むことに由来する名前です。

『万葉集』巻十三にこんな歌があります。

天橋も長くもがも。高山も高くもがも。

月読のもてる復若水いとり来て、君にまつりて、をち得しむもの

                            ――詠み人知らず

「天への橋をいくらでも長く、高い山もいくらでも高くあればよい。月読がもっている若返りの水を取って、思う君に差し上げて、若返らせようものを」。

欠けてはふたたび満ちる月には、若返りの水があるとされていたのです。

かぐや姫

『竹取物語』は、平安時代初期につくられたといわれる日本最古の物語です。 竹取の翁が、光る竹の中にかぐや姫を見つけた時の描写。

「三寸ばかりなる人いと美しうて居たり。……美しきこと限なし。いと幼ければ、籠に入れて養ふ」。光る竹のなかの美しい娘は、長じてさらに美しくなり、幾人もの貴公子から求婚されながら、難題を出してはそれを拒みます。

帝からの熱烈なお召しにも応えようとしません。 そしてある年の春から、かぐや姫は月を見ては嘆き悲しむようになるのです。

「月の顔見るは忌む事に制しけれども、ともすれば、人間にも月を見ては、いみじく泣き給ふ」。 「月を見ることは慎むべき事だと止めたけれども」とあります。当時、月を見るのは不吉なこととされていました。月は、恐れの対象でもあったといわれています。そして、八月望月、中秋の名月の夜、かぐや姫は告白します。

「おのが身は、この國の人のもあらず、月の都の人なり」。月の国の人は、たいへん美しく年もとらないのだといいます。 帝の兵や翁たちの必死の抵抗も虚しく、かぐや姫は月の都に帰って行きます。

不死の薬を残して、 かぐや姫を失った翁と媼は、血の涙を流して悲しみ、その薬を飲まずに病み伏してしまいます。 帝も嘆き悲しみ、かぐや姫に逢えないあれば不死の薬も何になろうと、富士山の頂でそれを燃やしてしまいます。

怪物の影

沖縄の宮古島にも、月の影についての物語があります。太陽と月は、人々を長生きさせるために、若返りの水「変若水」をかけようと考えます。アカリヤザガマという怪物に変若水と死水をもたせて、変若水を人に、死水を蛇にかけるように命じます。

ところが、途中であらわれた蛇が変若水を浴びてしまったため、アカリヤザガマは人に死水をかけてしまいます。そのために人は死ぬようになってしまったのです。怒った太陽は、アカリヤザガマを月に上げ、桶をかついで立っているように命じました。

月の影は、アカリヤザガマの姿だということです。

月のなかの少年

あるところに怠け者の少年がいました。彼は母親から水くみを命じられたのに、ちっとも出かけません。やっと出かけると今度は帰って来ません。心配になった母親が探しに出かけます。

川で神魚である鮭にたずねると、少年は怠けた罰として神々に、月に上げられてしまったといいます。

月に影があるのは、桶をもったその少年の姿だということです。

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