https://weekly-haiku.blogspot.com/2016/10/blog-post_73.html 【数学×俳句イベント『数学俳句』という試み 横山明日希】より
2016/10/5イベント報告
数学×俳句イベント『数学俳句』という試み
横山明日希
◆大規模の数学イベント内で『数学俳句』
先日、『数学俳句』という、その名前の通り数学用語、数学的性質を用いた俳句の企画を開催致しました。
アスキードワンゴと株式会社すうがくぶんかの共同主催で、35時間続けて数々の数学者や数学ファンが集まり講演、プレゼンをする中、1企画異質だった時間を提供することとなりました。
今回、この文を執筆している横山明日希と、関悦史さんの2人で出演。そして聴講者として四ッ谷龍さん、生駒大祐さんにお越し頂きました。
下の写真を見れば、異様な光景だと感じるでしょう。
私は“数学のお兄さん”と名乗り、数学が好きでその楽しさを伝えるという活動をしている身ですが、その切り口として俳句を組み合わせる事を少し前から取り組ませて頂いておりました。
本文では、企画で取り上げさせて頂いた数学俳句に触れつつなぜ私がこういった試みをしているかの想いの部分を書かせて頂きます。
◆数学で情景を描く
会場で企画中に取り上げた俳句は以下の作品。
十三夜素数定理と巨大数 shumatsuki
夕焼けや落葉松の影フラクタル Bunbun
点対称配置四便器台風圏 四ッ谷龍
汝と別れメルセンヌ素数となるか 生駒大祐
樹形図は下界を秋と思ふなり ナツメヤシ子
秋の空天に向かって続く数 せきゅーん
はじめて目にするような単語もあるかもしれません。すべての用語を解説するには余白が少ないため割愛させて頂きますが、せっかくなのでいくつか取り上げさせて頂きます。
例えばBunbunさんの句。「フラクタル」とは日本語で言うなら「自己相似」と呼ばれるもの。もしこのフラクタルの意味を知らなかったとしても、夕焼けの強い光が落葉松の影を強烈につくっている姿が思い浮かぶはずです。
その影もしくは落葉松自体をフラクタルというのか…のように少しだけ数学的な理解が出来るかもしれません。ここに、“木の枝がフラクタルの性質を持っていて、その性質によって雨風は通すが光は通さない構造となっている”という性質を含めると、影がくっきりと黒くなるにもかかわらず木が風をしっかりと通してくれる情景がより鮮明に描かれます。
また、四ッ谷龍さんの句のように「点対称」という言葉を用いる事で一定の規則性がある事を想像させ、かつ、実際に頭の中でその情景を180度回転させてみたり、生駒大祐さんの句のように「メルセンヌ素数」という2のn乗から1を引いた素数という“比較的珍しいかつ美しい表記が可能な素数”を用いて別れた後のわずかな希望(でもその希望は叶わないのでしょう)を描いたりと、情景描写を数学用語がサポートしてくれるのです。
そして俳句の情景描写へのサポートとしてだけでなく、私としてはこのように数学用語を入れ、その用語を深く理解する事で数学分野への知識がつき、さらには興味を少なからず持ってくれる事に価値を感じているのです。
◆数学俳句で数学も俳句も身近に
例として取り上げさせて頂いたものはほんの少しではありますが、今回の企画の中でも「俳句の発見感、数学の発見感が似ている」といった話や「一定のルールの中で表現する」といった共通点の話を関悦史さんとお話させて頂きました。おそらくこういった会をさらに続けていくことで、まだ私が気づいていない意外な共通点が潜んでいるのではないかとワクワクしておりますので、また機会を持てたらと考えております。
また、今回のこの文を読んで頂いた方にも少しでも「数学って面白そう」と感じてもらえたのであれば私としては嬉しく思います。
数学を楽しむ事というのは、決してハードルが高い事でないのです。そして、僕も今回『数学俳句』という企画を実施することで俳句を身近に感じる事が出来ました。
「数学」と「俳句」といった一見関係ない分野が融合する事が、その分野に興味持つ人を増やし、分野自体にも新しい風を吹き込むきっかけになるのかもしれません。
https://logmi.jp/business/articles/162830 【17文字にロマンを込めて--知られざる「数学俳句」の世界】より
ロマンティック数学俳句を詠んでみよう
ロマンティック数学ナイト@東京 2016年08月19日に開催
数学好きが集まり、数学への想いを語り合う、熱気あふれるイベント「ロマンティック数学ナイト」が8月19日に開催されました。数学のお兄さんこと横山明日希氏は、Twitter上で「数学俳句」を募り、集まったおよそ370句のなかから優秀作品を発表。17文字に込められた数学とロマンを紹介しました。
横山明日希氏:みなさんこんばんは。すごいですね、みなさん、さすがですね。
ちょっと僕は、ゆっくり喋りたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。
僕はですね、ロマンティック数学俳句を詠んでみようということで、みなさん、お気付きですか? (会場の)壁に実は、数学俳句が貼られておりました。
今日は、この17文字に込められた数学とロマンというのをお話させていただきたいと思っております。
簡単に、ちょっと自己紹介をさせていただければと思いますが、横山明日希と申します。明日に希望を持っていると、だいぶプレッシャーを感じている名前ですけども、自称数学のお兄さんで、もう早9年目ですね、活動させていただいております。
Webライターとか、いろいろとさせていただいています。キーワードとしては、ちょっとずれてしまっていますが、科学・数学を身近に、ということです。
どのようなことをさせてもらっているかというと、数学で短歌を詠んだりとか、数学で展示会したりとか、恋愛と数学を絡めたりとか、いろいろなものと数学を絡めてみようということをさせてもらったりしています。
これは、存在しない虚数を粘土で作ってみた。「存在する虚数」という作品です。
こんなことをさせていただいています。
今日は、こういったことをさせていただけたらと思っています。
みなさん、「17」ってなんですか? (会場から「素数」の声)
はい、ありがとうございます。素数ですが、今日は、短歌の文字数として使わせていただきます。
「819」、こちらは、今日(イベント開催日)ですけども、今日俳句の日です。実はこのロマンティック数学ナイトのためにですね、ロマンティック数学俳句コンテスト、これを開催させていただきまして、Twitter上でおよそ370句集まりました。
その俳句の一部を、みなさんにロマンを感じていただきながら、ご紹介させていただければと思っておりますので、ぜひ楽しみながら聞いていただけたらと思っております。
数学者たちが俳句に登場
どんどんいきます。ロマン×数学×俳句ということで、いくつか章に分けさせていただきました。
まずは、数学者編です。人のネタだけを使うのはよくないと思いまして、私もいくつか俳句を詠ませていただきまして、ところどころ箸休め程度にいれさせていただいております。
ご存知ですか、この2人。リーマンとペレルマン、その通りでございます。彼らはすごいロマンを作ってくださいました。
「数学のロマン リーマン ペレルマン(作者:横山)」と、完全に韻を踏むだけの短歌でございます。
一応、関係性はあります。リーマン多様体の安全性定理というのをペレルマンが実は証明していたみたいなのもあったりしますが、実は繋がっている。これもロマンだよねみたいな狙いで書かせてもらっています。
このような感じで進めていきたいと思います。意外と今のところ、数学的な性質があるよね、というところで、次こちら。ラマヌジャンについて俳句詠んでいただいた方、いらっしゃいました。
「ラマヌジャン 立方の和で 書けるじゃん!(作者:みつます)」 。
(会場笑)
1の3乗と、12の3乗と表すこともできますし、9の3乗たす10の3乗で表すこともできる、すごいじゃんと。
どんどん行きたいと思います。
「俳句では 字足らずだろう フェルマーよ(作者:コロちゃんぬ)」 。
もうあんな余白がないと言っていたフェルマーが17文字の俳句を書けるはずがないというところになっておりますね。数学者編でも数学の俳句を詠んでいただきました。ロマンを感じますね。
恋心も数学にたとえられる?
まぁ、ロマンと言えば、これを忘れてはいけないと。「愛ですよ」と。恋心編を進めていきたいと思います。まずは僕が自分で傷つきますね。「自明である」。こちらについて詠ませていただきました。
「愛してる 自明と言わず 声にして」と。ちょっと心当たりのある方は、お帰りになられた後、愛してるよと、言ってあげてください。自明だと言わず、伝えてあげてください。そんな感じでちょっと進めていただきたいと思っています。
続いては、このような2本の直線のグラフを想像されながら詠まれた俳句がございました。
「交われど 傾き変えねば 離れてく(作者:kazuya)」
(会場拍手)
出会うだけではだめだと、そこからその人に合わせて道を変えていかなければ離れてしまうと、まるで僕のことを言っているような感じだと最近思ってはいますが、どんどん進めます。
続いてです。「ちょっと式の答えは違ってはいますが、公式の違う答えが間違っているかもしれないですが、こういうシチュエーションってどういうシチュエーションだっけ」というお話です。
「途中式 とばしていいよ 夏の恋(作者:y0k0t0m0)」 。
夏だから、とばしていいよね、と。ただ、とばすと答えを間違うよと、そういった俳句でございます。
(会場拍手)
季語は入らなくても、記号は入る
いいですね、いいですね。
どんどん続けていきますね。数学俳句の難点、難しいところは季語です。いやいやみなさん、季語は入れられないかもしれないけど、数学俳句、記号は入ります!
(会場拍手)
最後、記号を入れた俳句を3つ、紹介いたします。
先ほどの i がでてきました。どんな感じの俳句が詠まれたのでしょう。
「曖昧な アイを形に 複素数(作者:なちゅ)」と。
愛もアイも見えません、ということですね。
このような俳句や、こちら。
「カッコつけ 先になんでも やるあなた(作者:かしくらゆう)」と。 括弧をつけています、先に計算をやってしまうということでございます。
最後、みなさん大好きな点Pですね。
(会場笑)
みなさん、点P大好きだと思います。
そしてみなさん、ロマンティックなことが大好きだと思いますが、さぁどうなるかという話です。こちらの俳句ですね。
「点Pと ロマンティックは 止まらない(作者:y0k0t0m0)」。
(会場笑)
ということでございます。ありがとうございます。
今日はちょっと簡単にご紹介させていただくかたちなんですけども最後にちょっとお伝えしたいことがありまして数学を語るには17文字では余白が少なすぎる、とは言い切れないんじゃないかなということが、みなさんに伝わればいいのかなと思っています。
このような感じで、数学を数学だけではなくて俳句や短歌とか、いろんなかたちで数学を感じてもらえたらいいなと、そういった活動を私、させていただいております。
今日も少しでも楽しいなと思ってもらえたら私は嬉しい限りでございます。
というところで、お話を終わらせていただきます。ありがとうございました。
Occurred on 2016-08-19, Published at 2016-10-07 21:00
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