http://www.kazan.or.jp/J/QA/topic/topic22.html 【火山の形状と地形 アスピーテ・トロイデ・ベロニーテ・ホマーテ】より
Question #92
Q 単成火山に特に興味をもっています。昨年夏、五島列島の小値賀島に 行ってきましたが今年は福江島を訪問しようと思っています。福江市 西南にはホマーテが8つ以上地図で認められます。この狭い地域に 海上(黒島、黄島等)もふくめて全てホマーテであるのはなぜで しょうか。 (6/18/98)
平木 英治:会社員:49
A
福江市の西南ではなくて南東には,鬼岳を含む複数のスコリア丘が密集した 玄武岩溶岩からなる地域があります.御指摘の小値賀島も同様にスコリア丘が 狭い場所に密集した玄武岩火山の地域です.これらのスコリア丘は伊豆半島の 大室山と同じような単成火山です.単成火山は地殻が引っ張られている場所に よく出現します(質問42の小山さんの回答も参考にして下さい).福江島や 小値賀島にこのような単成火山が密集する理由は,五島列島周辺の地殻が部分 的に開いているためであると思います.なお,ホマテとは形の割に大きい 火口を持つ火山砕屑丘のことで古くに用いられた言葉ですが,アスピーテ・ト ロイデ・ベロニーテなどと同様に,現在の火山学ではほとんど使用しません. (6/20/98)
中田節也(東大・火山センター)
Question #618
Q 鹿児島県山川町の者です。私の町に「竹山」という山が有ります。今,私の職場で,この山が「トロイデ」か「コニーデ」か問題になっています。是非,判定をお願いします。また,「トロイデ」「コニーデ」の違いをわかりやすく簡単に説明してください。 (05/19/00)
こーじ:地方公務員:31
A 竹山は確かに変わった形の山ですよね.3月に近くまで行きましたが,海岸へりにぬ っと烏帽子のように立っている姿はとても印象的です.この山はどうやってできたん だろうと不思議に感じられるのも当然でしょう.
さて,トロイデ,コニーデなどの言葉は,20世紀の始めごろドイツ人のシュナイダー が,火山を地形で分類した言葉です.簡単に言うと,トロイデは釣鐘のような,急傾 斜で上に凸の山腹を持つ火山,コニーデは富士山のような円錐形で,上に凹な山腹を 持つ火山のことです.シュナイダーの分類には,他にもアスピーテやホマーテなどが あり,学校の地理の授業で習った方も多いのではないでしょうか.ところが現在では 日本や世界の火山研究者の間では,使われていないのです.理由の一つには,火山を 外形だけで分類しているので,実際の内部構造や発達成長史を反映していないことが あります.そのため現在では,構造や成因を反映した,成層火山や溶岩ドーム,盾状 火山という言い方を使うようになっています.おおまかには,トロイデは溶岩ドーム ,コニーデは成層火山に相当しますが,実際には異なることがよくあるので,できれ ばシュナイダーの分類は使わないほうが良いかと思います.
さて肝心の竹山です.正確な年代はわかっていませんが,これは古い火山のマグマの 通り道が,硬いために侵食に耐えて残ったものと考えられています.こういうものを ,火山岩頸(かざんがんけい)と呼びます.竹山は,もとは地下にあったものが,今は 侵食されて地表に飛び出しているように見えるわけです. (6/05/00)
川辺禎久(工業技術院・地質調査所・火山地質)
Question #2758
Q こんにちは。火山の分類についてお伺いします。日本の中学校では溶岩の粘性によって楯状、成層、釣鐘状火山の3つに分類していますが、外国ではFissure, Shield, Dome, Ash-Cinder, Composite, Calderaなどに分けて教えられているようです。これらもまた溶岩の粘性による分類なのでしょうか?分類の基準とその種類について教えてください。 (09/27/02)
ナオッグ:教師:27
A こんにちはナオッグさん.火山の分類ということですね.
昔はもっぱら火山の地形だけで分類していました.例えばシュナイダー(1911)のコニ ーデ,トロイデといった分類は今でもマスコミや観光地の説明などで残っています. しかし今は表面の地形だけでは,その火山の成り立ちを必ずしも反映していないこと がわかってきたので,シュナイダーの分類は学術用語としては使われません.現在で は内部構造により注目した,成層火山,盾状火山などの用語が使われます.
盾状火山は粘性の低い,あまり爆発的噴火をしないマグマが,主に溶岩となって重な り,傾斜が緩やかな山体を作った火山です.ハワイが盾状火山の典型で,英語では Shield Volcanoです.一方,成層火山は粘性がやや高く,爆発的噴火による熱いマグ マのしぶき(火砕物)の割合が多いため,溶岩と火砕物の互層からなる傾斜の大きな山 体を持つ火山です.英語ではStrato Volcanoです.成層火山はスコリア丘(Scoria Cone, Cinder Cone)や溶岩ドーム(Lava Dome)などを火山体全体として含むことが多 いので,外国ではComposit Volcano(複合火山)と呼ぶことがあります.富士山や三宅 島など日本の火山の大部分はこの成層火山です.
釣鐘状火山というのは火山学用語では使われません.おそらく溶岩ドームのことだと 思いますが,粘性の大きなマグマが爆発的な噴火をすることなく地表に噴出してでき ます.有珠山の昭和新山や雲仙の平成新山が典型例です.マグマが地下を移動すると きは板状になって移動すると考えられていますが,この板状のマグマが地表に達する と,割れ(Fissure)噴火を起こします.粘性の低いマグマの噴火に多く見られます. 1983年の三宅島噴火がその例です.
カルデラ(Caldera)は,噴火や崩壊でできた大きな火口状地形のことで,おおよそ直 径1.6-2km以上のものをいいます.大量のマグマが爆発的な噴火で一気に噴出してで きたもの(例:阿蘇カルデラ)や,噴出物は多くないが地下でどこかにマグマが移動し てしまってできたもの(例:2000年三宅島噴火のカルデラ)などがあります.
これらの火山の形の違いは,どんな噴火様式で,どんな噴出物を,どのくらいの噴出 率で噴火するかで決まってきます.その噴火様式を決める大きな要因としてマグマの 粘性がある,と理解されればいいかと思います.なお,Q&Aの#3010にもありますよう に,自然は完全に分類できるものではなく,中間的なもの,複合したもの,例外的な ものが少なからず存在します.学校の先生にはマグマの粘性だけで一意に火山の形が 決まるわけではないということも,頭の片隅にでも記憶にとどめておいていただける と幸いです.
(10/29/02)
川邉禎久(産業技術総合研究所・地球科学情報部門)
Question #3736
Q 高校で地理を教えていますが、アスピ-テやトロイデなどの火山地形は何語でしょうか。語尾からするとイタリア語などのラテン語起源のような感じがするのですが、いかがでしょうか。またいつ頃誰が提唱したのかも教えてください。 (12/31/02)
おおしま:高校教師:40
A 1911年にドイツ人のシュナイダーが火山を地形によって7つの基本形に分類し ました。アスピーテ(Aspite)は盾状火山で、トロイデ(Tholoide)は鐘状火 山 と訳されていますが溶岩ドームと同じです。これらの用語は地理の分野では まだ使われているようですが、火山学の分野では今はほとんど用いません。も はや日本と韓国以外ではこれらの用語は使っていないらしく、インターネットで 検索しても2国以外は引っかかりません。
(01/04/03)
中田節也(東京大学・地震研究所・火山センター)
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