https://www.sofia-inc.com/blog/9594.html 【対話とは?対話が必要な理由や対話を行うポイント、対話を取り入れる方法を解説】より
近年雇用形態が多様化し、立場の異なるさまざまな価値観を持つ人が同じ組織で働くようになりました。スムーズに仕事を進めるためには、お互いを理解し合い、チームの全員が同じ目標に向かっていくことが必要です。しかし、価値観の違いやコミュニケーション不足などからチーム内で誤解が生じ、仕事がうまく進まない場面が増えている企業も少なくないようです。
そんななか、組織力を高めるための手段としての「対話(ダイアローグ)」が注目されています。この記事では対話とはどんなものなのか、解説していきます
対話とは?会話との違い
対話とは、お互いの立場や意見の違いを理解し、そのずれをすりあわせることを目的に行うものです。会話も対話も、2人もしくは少数で話し合うことですが、会話には明確な目的やゴールがありません。それに対して、対話では何かしらのテーマに基づいて、それぞれの意見を述べ合います。
職場においては、どのような場面で対話が必要となるのでしょうか。関係性が悪くなってしまった上司と部下を例に考えてみましょう。
関係性が悪くなったきっかけは、オフィスで上司が部下に「あいさつをしろ」と叱ったことでした。
上司は「あいさつは社会のルールであり、あいさつができなければ社会人として恥ずかしい。」との価値観に基づいての発言です。そしてその深層に、「他社に出向いたときに失礼な人間と思われたらかわいそうだ」との感情があるのですが、上司自身もそれには気がついていません。
それに対して部下は、「ちょっとあいさつしなかっただけであんな言い方はひどい。上司は私を嫌っているに違いない」と感じてしまいます。その結果部下はますますあいさつすることを拒み、二人の関係はこじれていきます。
このように、言葉を交わしていてもその意味を共有できていないために、認識がすれ違ってコミュニケーションに問題が生じてしまう場面は決して少なくありません。
このようなときには、「対話」が有効です。部下と対話をすることで、上司は「あいさつは社会のルール」との固定観念があったことに気がつきます。そしてそれが自分にとっては正論であっても、人に押しつけるべきことではないのでは、とも考えました。
そして「あいさつしなければ、失礼な人間だと思われてあなたが損をするのではないかと心配だ」と自分の本心を部下に伝えたことで、部下は「上司が自分を嫌っている」との考えが勝手な思い込みであったこと、そして自分に対する思いやりに気がつきます。
対話の場では、通常の会話とはちがい、自分の行動や発言の根源にある感情や考え方、価値観などについて掘り下げて語ります。それは、普段の生活では自分でもあまり意識することのないものを言語化し、相手の言葉と同じ地平に並べ、客観的に見てみること、つまり外在化することです。どちらが正しい、正しくないといった理論理屈で片付けようとすると角が立つような問題を取り扱うときや、あちらを立てればこちらが立たないというような利害関係の袋小路にはまってしまった際に、対話は効果的なコミュニケーション手法です
解決の糸口がないままに単なる「会話」を重ね、関係を維持することもできますが、直面している課題の解決にはつながりません。答えの出ない状態でフラストレーションを抱えたまま過ごすよりも、「対話」することでお互いの意味と考え方の違いを確認し、理解しあった上で課題に向き合うほうが建設的です。
組織内に何らかの課題が生じ、なかなか解決できないときには、「会話」で足りるのか、「対話」するべきなのかを考える必要があるでしょう。
なぜ対話が必要なのか
それでは企業において、なぜ「対話」が必要となるのか、詳しく解説します。
それぞれの置かれた立場が違うため
人はそれぞれ置かれた立場が違い、無意識にその立場から人や物事を見て発言しているものです。例えば上司は上司であるがゆえ、部下に対してはどうしても「指導しよう」という意識が働きます。対話をすれば、相手の立場に沿ったものの見方をするきっかけになります。
それぞれが持つ感情や欲求が違うため
同じ事柄に対しても、人はそれぞれ持つ感情や欲求は異なります。例えば仕事でミスして上司に叱られたときでも、普段から上司を苦手と感じていれば「あんな言い方はひどい」と思いますし、信頼を寄せていれば「励ましてもらった」と捉えるでしょう。相手がどう感じるかは上司には想像もコントロールもできないため、理解するには対話が必要になります。
これまでの習慣や文化の違いがあるため
物事に対する受け止め方は、これまで育ってきたなかで身に付いた習慣や、文化の違いも大きく影響します。
欧米ではディベートや議論、対話を積極的に取り入れる文化がありますが、これは人種の多様性が高く、「異なる背景、異なる価値観を持っているのは当然」という前提があるためです。
一方、戦後において日本の職場は人材の同一性が高く、「背中を見て学ぶ」「察して動く」などハイコンテクストな文化が形成されてきました。しかし現在は雇用形態の多様化、共働き世帯の増加や企業のグローバル化が進み、欧米諸国と同様に人材の多様性が高まってきています。多様性の時代においてはこれまでの習慣が通用しない場面が増えていくため、文化や価値観の違いを理解するために、対話の必要性も必然と高まってきているのです。
個人の意識は常に変化するため
個人の意識は、本人にも自覚されていない部分が多く、知らず知らずのうちに変化しています。自分自身ですらつかめていない自分の意識を、他人が把握するのは困難です。対話をすることで、相手を理解すると同時に、無意識だった自分の価値観や考えに気がつくこともあるのです。
対話をする際に意識したい4つのポイント
これまで述べてきたように組織内の関係性に起因する問題の解決に取り組む際には、お互いの意識のズレを修正する対話が有効です。ここからは、対話をする際に意識したいポイントを4つ紹介します。
互いに尊重しあうこと
対話をする際には、互いに尊重しあうことが大切です。人にはこれまで生きてきた中で培ってきた価値観があり、それに優劣はありません。相手の考え方について、いい・悪いと判断しないことが大切です。
また、尊重と尊敬は異なります。相手が上司だからといって、人物的に尊敬する必要はありません。ただその人が話すことはその人の価値観に基づくものであると理解し、受け入れるだけでいいのです。それが互いに尊重しあうということです。
個人の価値観を否定しないこと
例え相手の価値観が自分とは真逆のものであっても、それを否定しないことも大切です。その人にとってそれが正しいと考えることであれば、それを認めましょう。認める=その考えに賛同するということではありません。自分は自分の価値観を大切にしつつ、相手も同様に相手の価値観を守ることを認めるということです。
自分を客観的に見ること(外在化)
もう一つ大切なことは、問題や状態を自分から切り離して客観的に見たり、考えたりすることです。これを「外在化」といいます。問題を自分の感情と切り離して他人事のように考えることで、それについて話しやすくなったりする効果があります。とはいえ、外在化は簡単なものではありません。
仕事の場で外在化を行う際のポイントは、自分の発言や行動、感情の根底にある自分自身の「価値観」に目を向けることです。「なぜ自分はこのような気持ちになったのか」「なぜ自分はこのような発言や行動をしたのか?」「なぜこの人とは意見が噛み合わないのか」といった問いについて一つひとつ考えることで、自分自身がどのような価値観を持っているのかが見えてくるでしょう。
組織内で起こる問題の原因はすべて人と人との関係性に紐づいており、人の発言や行動、感情の根底には一人ひとり異なる価値観があります。問題の背景にある関係性を紐解き、その向こう側にある個人の価値観に目を向けることで、問題解決の糸口がつかみやすくなります。
社会的な価値観と個人的な価値観を切り離して考えること
仕事を進める際には、個人的な価値観からいったん離れ、社会的な価値観を尊重するべき場面もあります。仕事にかかわる対話の場においては、個人的な価値観を否定するのではなく認めた上で、なぜ社会的な価値観を優先すべきなのか、それぞれをどうすり合わせていくのかについて話し合うようにしましょう。
例えばチームの仕事なのに、「1人でやったほうが早いから」と勝手に進めてしまうAさん。どうやら「個人のパフォーマンスを上げたほうが社に貢献できる」と考えているようです。しかし会社としては、組織的な成長を考え、Aさんにリーダーとしてほかの人に仕事を割り振り、全体としての効率を上げてほしいと考えているケースがあります。そのような場合には、上司がきちんとAさんと対話をし、Aさんの効率を上げたいという価値観を、組織の一員として活かしてもらうよう働きかけるといいでしょう。
壊れた社内の関係性を対話で解決できる? 「対話型組織開発」の手法を紹介
対話には、お互いの認識のずれをすりあわせて相互理解を深め、関係性のもつれを解きほぐしていく効果があります。組織に対話を取り入れるひとつの手段として、「対話型組織開発」があります。対話型組織開発とは、あらかじめ用意された場での対話を通して一人ひとりが組織の課題に気づき、関係性の改善に向けた行動変革につなげていくものです。対話を通して社員がお互いの価値観を理解しあい、「こうありたい」という組織の将来像をともに作り上げていくことで、変革に主体的に取り組みやすくなる効果があります。
ここでは、対話型組織開発を行う際に用いられる、代表的な手法を2つ紹介します。
ワールドカフェ
ワールドカフェとは、何人かの会議での討論のやり方の一形式で、お茶を飲んでくつろいでいるような和やかな雰囲気で会議をすることを指します。各参加者が対話を通じて、「気づき」を得ることを目的としています。1955年に、アメリカ合衆国のファニータ・ブラウンとデイヴィッド・アイザックスがビジネスや学術的なリーダーを招いて話しあいを行った場で、偶発的に編み出された方法です。
一般的には以下の流れで行われます。
第一ラウンド
まずは4〜5人程度の少数グループで、1つのテーマについて模造紙にメモをとりながら話しあいます。
第二ラウンド
テーブルのホストとなった人以外の参加者は自由にほかのテーブルに移動し、移動先のテーブルで話しあわれていたテーマについて話しあいを続けます。
第三ラウンド
参加者は全員元のテーブルに戻り、移動先で話しあった内容や新たに得た情報をもとに、再度意見を出しあいます。
全体セッション
参加者全員でこれまでに出たアイデアや意見を共有します。
ワールドカフェのラウンド数に決まりはなく、全体セッションまでに何ラウンド行ってもかまいません。ワールドカフェは、フォーマルな会議よりも、移動も発言も自由でオープンであるため発想が豊かになり、意見も活発になる効果があります。
ワールドカフェは大人数で行えることがメリットですが、規模が大きくなるほどファシリテーターのスキルが重要になってくる点には注意が必要です。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
アプリシエイティブ・インクワイアリーも、組織活性化アプローチのひとつです。アプリシエイティブは「価値を見いだす」、インクワイアリーは「問いかけ」を意味し、AIは「問いかけによって価値を見いだす」取り組みを指します。
一般的に、なにか物事を改善していくときには、あるべき姿と現状とのギャップから問題点を考え、それを解決するアプローチが取られます。これはいってみれば、「自分たちの否定」から入る考え方ですが、これを逆の発想で、「できている状態を見つける」プロセスに変えていくのがAIです。
まず組織の強みはなにかを自分たちに問いかけ、そこからなりたい姿を描き、それを実現するよう設計し、そしてそれが決められたことであるかのように実行していくことで問題を解決する手法です。
「強みや価値」「なりたい姿」といったポジティブな問いかけは、充足感ややりがいを生み出します。これから組織を発展させようというモチベーションやエンゲージメントを高めるためには最適な手法です。
まとめ
「対話」と「会話」は似た言葉ですが、会話は日常のなかで行われるのに対して、対話は通常のコミュニケーションでは解決できないような問題が生じた際に、あえて相互理解を深めるための場を用意して行うことが特徴です。
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