https://mugen3.com/seimeiTOP.html 【生命の扉 生命誕生の歴史 40億年をご紹介】より
生命の扉について
人類の(私の)ルーツは?その謎を知りたくて生命の進化を紐解いてみました。一体生命は、どのようにして誕生したのでしょうか?我々人類は、どこから来てどこへ行こうとしているのでしょうか?
地球が誕生して46億年、さらに人類が誕生して40億年。その長い道のりを辿りながら私達人類の未来を考えてみたいと思います。
尚、この内容はNHKで放映された「生命」のビデオをベースにしており、要点を編集したものです。生命の進化につきましては、色々な説があり、日々研究がなされています。よって、この説が絶対に正しいということではありませんので、ご理解お願い致します。多少なりとも皆様の参考になれば幸いです。
はじめに
今から46億年前、誕生したばかりの地球はマグマの海に覆われていました。そのような劣悪な環境の中からどのようにして海ができ、生命の素材が生まれ、遺伝子が作られ、生命が誕生していったのでしょうか?また生物に共通の細胞はどのような過程を経て作り出されたのでしょうか?海に生命が誕生して私達の細胞ができるまで20億年、この気の遠くなるような創生の歴史を辿ってみたいと思います。
海の誕生
今から46億年前、誕生したばかりの地球、その表面はマグマの海に覆われていました。その1億年後、地球がゆっくりと冷え始めたその時、空の水蒸気が雨となって激しく降り始めたのです。いつ果てるとも知れない豪雨の後に地球に海が生まれました。海が出来た後の大気は二酸化炭素で溢れていました。厚い雲に閉ざされ僅かに届く太陽が空をオレンジ色に染めていました。海の温度は150度を超えていました。この灼熱の海に生命を作る材料が集められていったのです。
生命の材料はどうやって海に集められたか?
隕石が地球に衝突。実はこの隕石にはアミノ酸はじめ生命を作る材料が多く含まれていたのです。また、雷や紫外線のエネルギーによる化学反応からも生命の材料ができていったのです。
45億年前のある日の事、火星と同じ大きさの惑星が地球に衝突。これをジャイアント・インパクトと言いますが地球の歴史の中で最大の事件でした。この時に砕け散った一部が集まって月になったのです。このジャイアント・インパクトは海底にも大きな衝撃を与えました。海底には地球内部の様々な物質を吐き出すいわば煙突のようなものが立ち並びました。
原始の海に浮かぶ巨大な月、月と地球の距離は今の半分もありませんでした。巨大な月の引力で海は大きく揺れ始めました。潮の満ち引きは今よりはるかに大きく、干潮と満潮の差は10Mにも及びました。このいわゆる巨大フラスコのような海の中で生命につながる重要な化学反応が進んでいました。原始の海には私たちから見れば、猛毒のシアン化水素、青酸カリが溶け込んでいました。これら小さな分子は互いに結びつき更に大きな分子を作り出していきました。これがやがて、遺伝子を作り出してゆくのです。こうして生命の誕生に必要な材料はそろっていったのです。しかし、それらは単なる物質にしか過ぎません。生命が生まれる為にはさらに何かが必要なのです。物質から生命の飛躍、これが科学者達にとって最大の謎なのです。(ディーマ博士の説は下記に記載)
遺伝子はどのようにして作られたか?
カルフォルニア大学・デーマ博士の説
遺伝子は青酸カリから作られた核酸が鎖のように長くつながったものです。それは、そのまま音楽の調べになるほど不思議に調和の取れた並びをしています。一体どのようにして作られたのでしょうか?カルフォルニア大学のディーマ博士は遺伝子の誕生にも太古の海に浮かぶ巨大な月が関係していると考えています。原始の月の引力が引き起こす大きな潮の満ち引きが潮溜まりを作り、そこに遺伝子を作る物質が集められたと考えています。生命の素材をいっぱい含んだ原始の海。打ち寄せる波が岩に砕け、細かい無数の泡が作られてゆきます。原始の海の泡は消えることなく岩にとどまります。そして、繰り返し打ち寄せる波は生命の素材を泡が作る薄い膜の中に濃縮していくのです。
つまり、泡の中にまわりの物質が取り込まれていくのです。ある意味では膜の中は化学反応の為の小部屋ではないでしょうか。このような密閉された環境が無ければ、遺伝子の素材となる分子がただ拡散し薄まるばかりで、相互作用が出来ません。ですから、生命が誕生する為には、膜に包まれた空間が必要だったのです。膜に包まれた小部屋で化学反応が進んでゆきます。この安定した膜の中で、互いに試行錯誤を繰り返しながら、遺伝子DNAを作り上げていったのです。
最初の生命は?
最初の生命は分子の鎖の遺伝子を膜にくるんだ、ごく単純なものだと考えられています。しかし、ここには単なる物質を超えた能力が備わっているのです。周りにあるアミノ酸などの有機物質を膜の中に取り込み、自分の体を作っては成長を繰り返し、子孫を残してゆきます。このシステムこそが、生命そのものなのです。
今から40億年前、巨大な月の下で生命は第一歩を歩み始めたのです!硫化水素を利用し始めたバクテリアが最初の生命から進歩したものだと考えられています。最初の生命は有機物を食べるだけのものでした。今から38億年前、硫化水素で生き始めたバクテリアたちは、様々な形に進化してゆきました。硬い殻のようなを持つもの、柔らかい膜で体を包み込んだものもいました。これらのバクテリア達が私たちの遠い祖先なのです!
なぜ地球は青くなったのか?
二酸化炭素だらけの地球から生命に欠くことのできない酸素が生み出されたのはどうして?
二酸化炭素の空、太陽の強い紫外線、巨大な月がもたらした潮の満ち引き、硫化水素や青酸カリが溶け込む猛毒の海、今の地球とは全く違う環境が、生命誕生の引き金となったのです。そして、この原始の地球に酸素は存在しませんでした。酸素は物を一気に燃やす危険なガスなのです。
酸素は最初の生命にとって、もう毒ガスでした。ところが今の私たちの体を作る細胞は酸素が無くては生きていけません。最初は猛毒であったものが、生きていく上で欠かせないものになる、この大逆転は一体いどのようにして起きたのでしょうか?
原始の地球の大気はこの二酸化炭素が多く、厚い雲に覆われていました。その地球に酸素が溢れ始めるきっかけになったのは、大陸の出現だったのです。陸地は互いに衝突を繰り返しながら、次第に大陸へと成長してゆきました。これが二酸化炭素に溢れた大気に大きな影響を与えることになります。陸地の表面は何度も雨や風にさらされ、削り取られて海に流れ込んでゆきました。その中には、カルシュームやナトリュームなどそれまでの海には少なかったものが、大量に流れ込んでゆきました。それらが次々に二酸化炭素を吸収し始めたのです。
温室効果が弱まり、地球が冷え始めました。同時に厚い雲が薄まってゆきました。そして太陽の光が直接海へ差し込むようになったのです。この地球の変化が生命に大きな影響を与えることになります。35億年前、わずか百分の一ミリの体長で光合成をし、酸素を吐き出すバクテリアが誕生したのです。このバクテリアは太陽の光を使って、水と二酸化炭素から自分の手で食料を作り出すという画期的なシステムを生み出しました。陸地の出現によって、差し込み始めた太陽の光に見事に反応し、生命は大きな飛躍を成し遂げたのです。生命は宇宙からのエネルギーを常に利用できるようになったのです。
今から27億年前、当時の海の生存者、シアノバクテリアの大繁殖は、地球最初の人口大爆発でした。そしてこれが一気に地球環境を大きく変えていくことになるのです。シアノバクテリアは光合成の結果、その廃棄物として酸素を海の中へ吐き出すのです。太古の海はシアノバクテリアが吐き出す酸素で溢れ始めました。それが海水の中の鉄分と反応して大量の赤錆を海の底に降り積もらせてゆきました。
今、世界で使われている鉄資源のほとんどは、この時シアノバクテリアが出す酸素によって海に沈殿したものなのです。海の鉄を酸化し尽くした後もシアノバクテリアは、酸素を出し続けました。そして、大気にも次第に酸素が増えていきました。少しずつ大陸を成長させていく地球、酸素を吐き出し始めたシアノバクテリア、この二つが絡み合いオレンジ色の地球を青い地球へと変えていったのです。この酸素が地球の環境を変え、他の生命に大きな影響を与えることになるのです。
バクテリア達の運命はいかに
地球環境の大きな変化の中で、硫化水素を利用して生きていたあのバクテリア達は、どうゆう運命をたどったのでしょうか?実はそのバクテリア達のその運命が、私達と深く関わりあっていると考えられます。シアノバクテリアの登場が、かつての硫化水素に満ちた海を酸素に満ちた海へと変えていきました。酸素は硫化水素で生きるバクテリアにとっては、猛毒でした。酸素を浴びるとバクテリアの動きは弱まり、やがて死んでしまいます。
この危機の中で硫化水素で生きるバクテリアたちは、どう対応したのでしょうか?柔らかい膜を持ったバクテリアは酸素からできるだけ離れて暮らす安全策をとりました。一方、殻を持ったバクテリアは環境の変化に挑戦する、いわば開拓者です。溢れる酸素の中へ飛び込んでいきました。酸素が蔓延し始めた時、ミクロの生命達はどう対処していったのでしょうか?
バクテリア達の進化をたどっていくと、生命共通の原理が見えてくると考えられます。バクテリアには全滅はありません。進化しなかった古いバクテリアも、今も生き続けているのです。古いものと新しいものが共存しているのです。シアノバクテリア自身が自ら出した酸素を再利用する道を生み出し、続いてその周りにいた他のバクテリアがそれに習ったのです。一旦酸素を使うと、もう止められなくなります。なぜなら、酸素を利用するとこれまでに無い大きなエネルギーが得られるからです。
酸素の中に果敢に飛び込んでいったものの中から、試行錯誤の末に見事に適応できるように進化したものが登場しました。硫化水素の代わりに酸素を使うと、作り出されるエネルギーはこれまでの20倍にもなります。これによって動き回る能力は飛躍的に伸びたのです。酸素がもたらした膨大なエネルギーが、獰猛な肉食のバクテリアを生み出しました。盛んに動き回り、自分より大きな獲物に群がってゆきます。膜を食いちぎり、中へ入って相手の遺伝子を食い荒らすのです。そして、さらにバラバラに壊してゆきます。酸素がもたらした膨大なエネルギーが、そうした獰猛なバクテリアを生み出したのです。硫化水素の環境に残った、柔らかい膜を持ったバクテリア達も獲物になっていったに違いありません。そしてある時、柔らかい膜を持ったバクテリア達は、攻撃から身を守る為でしょうか、周りの仲間と結びつき、その体を大きくし始めたのです。
個性の異なる二つのバクテリアが私達の祖先?
先の柔らかい膜を持ったバクテリア達が周りの仲間と結びつき体を大きくし、遺伝子を中央に集め、それを新たに膜に包み込みました。核の誕生です。こうして、酸素に溢れた新しい地球環境が二つの違った個性を生み出したのです。一つは、酸素を利用して大きなエネルギーを生み出したもの、無駄なものは一切省きエネルギー効率を高めることに専念しました。まるで生きたエネルギー生産工場です。もう一つは、仲間と結びつき互いの遺伝子を集め、核という巨大なテータバンクを作り上げたのです。
今地球には様々な生命圏が広がっています。3,000万種とも言われる動物や植物が生きています。私たち人間もその中の1種類です。そして私達人間も他の生命と同じしくみの細胞で成り立っています。細胞の中へ入ってみると、中央にあるのは核です。全ての遺伝子情報がここに集められた巨大なデータバンクです。その周りを動き回っているのがミトコンドリア、酸素を使って細胞の全てのエネルギーを作り出すエネルギー生産工場です。実はこの核とミトコンドリアは今から20億年前、太古の海に生きたあの二つのバクテリアの子孫なのです。
細胞の誕生は、全く異なるバクテリアの合体
今から20億年前のある日の事、攻撃していたはずのミトコンドリアの祖先である酸素に適応した硬い殻を持つ獰猛なバクテリアが、核を持つ柔らかい膜を持ったバクテリアに飲み込まれてしまったのです。二つのバクテリアの合体、これが私たちを作る細胞の始まりだといわれています。中央に核、その周りに酸素で生きるバクテリアの子孫、ミトコンドリア。ミトコンドリアは分裂し、次第にその数を増やしてゆきます。そして、私達の細胞ではミトコンドリアの数は2,000以上にもなります。
こうして核を持ち、酸素で呼吸するという全く新しい生命が誕生したのです。全く違う進化をした二つのものが、突然一緒になって新しい生命を作り出します。例えばコンピュータという最先端の道具も一から作り出されたものではありません。全く別な目的で既に作られていたものを組み合わせた結果、コンピュータという画期的な製品が出来上がったのです。これと同じ様に、全ての生命は別々の能力を持ったもの同士が、合体し一緒になって出来上がったものなのです。
果てしなく広がるミクロの宇宙、細胞。今生きている私達の営みは、突き詰めればこのミクロの世界にたどり着きます。遺伝子の情報を元に指令を出す核、その指令を受けてエネルギーを作り、細胞内に供給するミトコンドリア。この二つの個性がそれぞれの役割を果たすことで、生きる営みの全てを生み出しているのです。ミトコンドリアが作り出したエネルギーで細胞を大きく成長し、複雑さを増してゆきます。そして、細胞を取り巻く環境の変化にもゆとりを持って対応する事ができるのです。海から陸へ、そして空へ…。様々な環境で生きる多様な生命、この豊かな世界を生み出したもの、それが細胞なのです。
生命のメカニズム
生命は次の新しい時代を切り開く時に、絶えずお互いに協力し合います。環境が変わり危機が訪れた時に、突然共に生きるという道を選び、新しい環境に適応してきました。ミクロの生命達が作った細胞。その細胞が集まり、私たちを始め全ての動物や植物の体を作っています。その全ての生きものはお互いに連携し合いながら共に地球生命体として多様な世界を作り上げてゆくのです。海に生命が誕生して私達の細胞ができるまで20億年、この気の遠くなるような長い年月をかけ、ミクロの生命達は共に生きるという命の大原則を作り上げたのです。
はじめに
カンブリア紀の海に繁栄した様々な生きもの達が繰り広げた進化の大爆発、それは、その後に生命の運命を決める重要な分かれ道でした。そして、その中のたった一つの道が私たち人間につながったのです。私たち人間は地球に生まれた生命が持っていた大きな可能性の中のたった一つの結果に過ぎないのです。第2話では、この5億3千万年前の人類につながる進化の不思議な過程を辿ってみたいと思います
プロローグ
今から5億3千万年前、恐竜の時代より遥か昔、陸には動物の姿は無く、草も木も生えていませんでした。岩と砂だけの荒涼とした大地がどこまでも続いていました。しかし海の中では、既に私達の知らない様々な生き物たちの世界が花開いていました。私たち人間や動物達の共通の祖先となる生き物も、この時代に登場しました。しかし、それだけではありません。今の動物には、つながらない奇妙で不思議な生き物達もいたのです。5億3千年前の海、それは生き物達がより良い形、より良い生き方を求めた壮大な進化の大実験場だったのです。つまり、生命がありとあらゆる形を試したデザイン・コンテストの時代があったのです。それはいわば、進化の大実験でした。その実験は一体どのようなものだったのでしょうか?
生命誕生は今から40億年前、細胞の誕生は20億年前、その10億年後には動物の出現(まだ小さくて、目に見える形ではありませんでしたが)、さらにその数億年後、約5億3千万年前のカンブリア紀に突然、様々の形を持った動物達が爆発的に現れたのでした。この動物達は一体どのような生き物だったのでしょうか?
カンブリア紀の奇妙な動物達
この時代の動物達は、生物学者の常識をはるかに超えた奇妙な生き物も数多く発見されました。このカンブリア紀の化石からの復元による生物の研究は、主にケンブリッジ大学で行われました。頭の先から象の鼻のようなパイプが伸び五つの目が頭から突き出しているのです。オパビニアという名前が付けられました。細い胴体から長く伸びた刺、どちらが前なのかもわかりません。
この生物はあまりに奇妙な形からハルキゲニアという名が付けられました。ネクトカリスは頭はエビのような形をしていますが、体は魚のようです。全く違う生物が合体したかに見える不思議な生き物です。花のような形をしたディノミスクス、でも植物ではなく動物なのです。花びらのように見える部分の内側に口と肛門が隣り合わせに付いています。口の周りに小さな歯のようなものを持つオドントグリフス「歯の生えたナゾ」という意味です。この口で何をどのようにして食べていたのでしょうか?
かつて、カンブリア紀の生物達は、単純なものばかりで種類も少ないと思われていました。しかし、ケンブリッジ大学のH・ウィッチントン博士達は、この時代の海には既に複雑な構造を持ち、様々な形をした生物達が満ち溢れていた事を明らかにしました。そして、その中には、現在の生物の分類には当てはまらない奇想天外な形をした生き物達もいました。カンブリア紀の海には、私達の想像を超えた不思議な世界が広がっていたのです!まさに、カンブリア紀は進化の大爆発だったのです。
進化の大爆発が起こった背景
カンブリア紀の不思議な生き物達は、なぜ、突然現れたのでしょうか?様々な形をした動物達、その体は無数の小さな細胞が集まって出来ています。しかし、最初の生命はたった一つの細胞で出来た単細胞生物でした。その細胞が集まり、最初の単純な動物が生まれたのは今から10億年ほど前だといわれています。地球に最初に現れた動物は、頭も足も無く形らしい形を持っていない単純な構造をした動物だったのです。しかし、その後の地球環境の変化と共に、動物も次第に進化を始めました。
7億5千万年前、地球の大陸はほとんど一つの塊に固まっていました。そして、6億年前には、大地の裂け目に海が入り込んで浅い海が大きく広がりました。浅い海には、陸から栄養分を豊富に含んだ土や砂が流れ込みます。しかも、この頃には酸素の濃度も高まり、生命は活発な行動が出来るようになってきたのです。この環境の中で、新しい進化が起こっていました。6億年前、この浅い海にはどんな動物が現れていたのでしょうか?
6億年前の動物達は、豊かな海の中で既に様々な形を持ち始めていました。しかし、素早く動き回るものはまだ少なく、水中を漂うか海の底にへばりついている者がほとんどでした。しかも体は柔らかく、種類も30種類ほどしかいませんでした。それから数千万年後のカンブリア紀に爆発的な進化が起こりました。この時代、一気に一万種類の動物が登場したのです。爆発的な進化がなぜ起きたのか?その原因は、はっきりわかっていません。
このカンブリア紀の動物達は、それ以前の時代には見られない新しい特徴があります。例えば、三葉虫は、これまでの生物には見られなかった硬い殻を持っています。ハルキゲニアは、体に不釣合いなほど、長いトゲを背中から生やしています。ウイワクシアという生物も鋭いトゲで体を被っています。これらの生き物達は、まるで恐ろしい敵から身を守ろうとしているかの様に見えます。実際このウイワクシアを襲った生物がいた証拠があります。ウイワクシアの化石の中にはトゲをへし折られているものがあるのです。硬い殻を持った三葉虫の中にも、何ものかに噛まれた痕があります。動物達は最初、周りの有機物などを食べていました。しかし、動物が増え始めたこのカンブリア紀に、生きた獲物を捕まえては食べる肉食動物が進化してきたと考えられています。
進化の大爆発のナゾに迫る
アノマロカリス、体長は最大のもので60センチ、カンブリア紀最大の生物です。体の両側には14対のヒレが付いています。アノマロカリスはヒレの一枚一枚を順番に一定のリズムに動かして泳ぎます。こうして、悠々と泳ぎながら海底を這う生き物を狙っていたのではないでしょうか。
体の横にヒレがたくさん並ぶ構造は、体の方向や位置を微妙に調節でき、正確に獲物を狙う事ができるのです。カンブリア紀の海、そこには強力な口を持ち、たくみに泳ぐアノマロカリスという恐ろしい肉食動物が現れていたのです。カンブリア紀に進化の大爆発が起きた原因の一つは、アノマロカリスのような恐ろしい肉食動物の登場だったと考えられています。
オパビニアの頭の上についた5つの目は、餌を探す為よりは、敵を発見するのに役立ったと考えられます。オパビニアは恐ろしい敵を少しでも早く発見して逃げるという方法を選びました。5つの目もその為に生まれた形でした。
そして、ハルキゲニア、ウイワクシアの選んだ形は、鋭いトゲでした。いかに上手く逃げるか?泳ぎ方も様々な方法が選ばれました。足の付け根にヒレを持ち、歩く事と泳ぐ事の両方が出来る者もいました。体をくねらせて泳ぐ方法も二つありました。体を左右に動かす方法、そして上下に動かす方法です。小さな生き物を食べる動物もより大きな肉食動物から身を守らなければなりませんでした。海底の中に身を隠すのも一つの方法でした。
身を守る為、子孫を残す為、カンブリア紀の生き物達は、生命のあらゆる可能性を試したのです。喰う、喰われるという関係の始まりが、動物達の様々な形を生み出したのです。この事が、進化の大爆発が起こった原因の一つだったのです。攻撃する為に、どんな武器を持つのか?どのようにして敵から身を守るのか?どのようにして逃げるのか?生き物達は様々なデザインを試し、そして競い合いました。アノマロカリスを始め、この時代にありとあらゆる動物達の基本的なデザインが出揃ったのです。
私達人間につながるデザインを選択したのは一体どんな生き物だったのか?
多くのデザインが出揃った中で、今では既に残っていないものもたくさんあります。この時に何を選択したかが、その後の子孫達の運命を決める事になるのです。それでは、私達人間につながるデザインを選択したのは、どんな生き物だったのでしょうか?
海の王者、アノマロカリスに追われていたであろう生き物達、その中で最も弱々しく見えるピカイヤ、私達人間の祖先といわれています。ピカイヤは、身を守る為の堅い殻も、トゲも持っていませんでした。では、様々な生物が体のデザインを選択したこの時代に、ピカイヤは一体どんな選択をしたのでしょうか?(実はこのピカイヤと良く似た生物が、現在でもアメリカのフロリダに棲んでいるのです。ナメクジウオです。)ピカイヤの背中の部分を前後に貫いている棒のようなもの、脊索(せきさく)です。これがピカイヤが選んだデザインでした。いわば背骨のようなものです。ピカイヤはこの脊索を作ることによって、体をくねらせて泳いだと考えられます。
ピカイヤはその後、魚に進化し、さらに魚からカエルや山椒魚のような両生類に進化して陸上に進出しました。そして、爬虫類や哺乳類が生まれました。もし、ピカイヤが生き残る事ができずに絶滅していたら、哺乳類もそして、もちろん私達人間も生まれる事がなかったでしょう。現在の地球には様々な形をした動物が住んでいます。その内、私達が見慣れた多くの動物達は、皆共通の構造を持っています。それは、私達人間も持っている「背骨」です。この背骨という構造は、さかのぼってゆけば、ピカイヤが選んだ「脊索」にたどり着くのです。ピカイヤの脊索は、背骨を持つ全ての動物を生んだ基本デザインだったのです。
生き物達のデザイン、その自然淘汰
カンブリア紀は、今の生物につながる基本的なデザインがほとんど出揃った時代でした。カナダスピスは、外側を覆う殻で、体全体を支えるデザインを選びました。この構造は、現在のエビやカニ、昆虫に受け継がれています。一方、五つの目と象の鼻のようなパイプを持ったオパビニアは、子孫を残すことなく滅び、そのユニークな構造は生命の進化の歴史から消えてしまいました。カンブリア紀に生きた生物達は、様々なデザインを作り出しました。しかし、その多くは、受け継がれること無く、この時代だけで消えてしまったのです。
海の王者、アノマロカリスの運命はいかに?
では、カンブリア紀の海で無敵を誇った最大最強の海の王者、アノマロカリスの場合は、どうだったのでしょうか?アノマロカリスの化石が発見された場所は、カナダ、中国、オーストラリアなど広い範囲に及び、アノマロカリスが世界中で繁栄していたことを示しています。
アノマロカリスのこの繁栄の秘密は、やはりあのユニークな口だったのでしょうか。アノマロカリスの口は、我々にはない優れたデザインでした。このユニークな口で、アノマロカリスは繁栄を続けたのです。この頃、地球環境に大きな変化は有りませんでした。温暖な気候が数千万年も続き、エサとなる生物も豊富だったはずです。強力なライバルが現れたという証拠もありません。
海の王者、アノマロカリスの絶滅の原因は、未だに謎に包まれたままです。ケンブリッジ大学のH・ウィッチントン博士はこう言っています。「もし、進化をもう一度やり直したとしたら、同じ結果になるでしょうか?おそらく、そうはならないでしょう。絶滅してしまった生物も、もしかしたら、今度は生き残るかもしれません。何か偶然の要素が関わっているのです。しかし、どんな偶然の出来事が起きたのか、私たちには、わからないのです…」と
アノマロカリスの絶滅の謎が人類を誕生させた?
アノマロカリスの繁栄した時期は、2,000万年近くにも及びます。それは、私達人類ホモサピエンスの歴史の100倍にもなります。しかし、アノマロカリスのユニークな構造は、どの生物にも受け継がれること無く、地球の生命の歴史から永遠に消えてしまったのです。そして、どんな偶然が作用したのか、アノマロカリスに追われていたピカイヤは子孫を残し、やがて私達人間が生まれたのです。カンブリア紀の海に繁栄した、様々な生き物達が繰り広げた進化の大実験、それは、その後の生命の運命を決める重要な分かれ道でした。そして、その中のたった一つの道が私達人間につながったのです。私達人間は、地球に生まれた生命が持っていた大きな可能性の中の、たった一つの結果にしか過ぎないのです
生命の歴史の年譜(早わかり表)
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