楽しくはないがいそぎんちゃくゆれる

https://www.muji.net/lab/living/160831.html 【ゆらぎのふしぎ】 より

「気持ちがゆらぐ」「決意がゆらぐ」など、"ゆらぐ"という言葉にはあまりいいイメージがありません。ぐらぐらとして、定まることのない不安定な感じがするからでしょうか。ところがこの「ゆらぎ」、私たち生命にとっては必要不可欠なものだとか。人間が自然を心地よく感じるのも、自然界のいたるところに含まれるゆらぎに由来しているようです。

ゆらぎって何

たとえば定規を使ってきれいに直線をひいたとします。どんなにまっすぐにひいたつもりでも、顕微鏡で拡大して見れば、その線にはわずかなずれやゆがみが生じています。三角形や円についても同じこと。この世には完璧な図形というものは存在せず、実際にあるものはどこかが不完全で、微妙にゆらいでいるのです。

「自然界に存在するもので、じっと静止しているものはありません」というのは、ゆらぎ研究の第一人者である東京工業大学名誉教授の武者利光さん。自らの著書の中で武者さんは、ゆらぎをはっきり定義するのは難しいと前置きしたうえで、「ものの変化、そしてその変化が不規則な様子」それが「ゆらぎ」だといっています。

自然界は物理の法則に従って規則的に動いています。もし、すべての事柄が完璧に法則どおりに動いていれば、将来の動きは寸分たがわず予想できるはず。でも、現実の世界は、図形の例で示したように完璧ではなく、微妙なゆらぎを含んでいます。そのために未来が予想できなくなるのです。ゆらぎで重要なのは、この「予想できない」というところだと武者さんは述べています。

心地よい1/fのゆらぎ

ひとくちに「ゆらぎ」といってもいろいろな種類あるそうで、音でいえば、メトロノームのように規則的にゆらぐものもあれば、放送終了後のテレビの雑音のようにザーッと不規則にゆらぐものもあります。そのゆらぎ具合を表すものが「f」という周波数。「1/√f」「1/f」「1/f²」「1/f³」などありますが、この中で最も人に心地よく感じられるのが「1/f」ゆらぎだそうです。なぜ「1/f」が心地いいかというと、このゆらぎは適度に人の予想を裏切るから。ゆらぎ方に規則性がありすぎると、単調になって飽きてしまいます。逆に規則性が乏しいと、意味のない騒音のように不快に感じられます。ある程度規則性があって予想はできるものの、完全に予想はできない、それが「1/f」ゆらぎの特徴なのです。

たとえば浜辺に打ち寄せる波は、一定のリズムを持っていますが、完全に同じリズムではありません。たたみかけて来ることもあれば、ときおり間が空くこともあります。頬を撫でるそよ風も同じ。ある程度の規則性を持ちながら、ふっと止んでみたり、強く吹いてみたりするのです。その予想の適度な裏切りを、人は心地よく感じるのです。

人の体もゆらいでいる

外界にある自然だけではなく、人体、つまり自らの体もゆらいでいることを武者さんは研究で突きとめました。心電図で記録した心拍数を分析したところ、ものすごくきれいな「1/f」ゆらぎが現れたそうです。また、法政大学の八名(やな)教授の実験によると、人の目の焦点は一定のところに止まらず、いつもふらふらと前後に動いているのだとか。その焦点の動きも「1/f」ゆらぎに近いのだそうです。小川のせせらぎ、草原をわたる風、きらめく木漏れ日、小鳥のさえずりなど、自然界にある「1/f」ゆらぎと同じものが、私たちの体内にもある。それゆえ「この体のリズムのゆらぎと同じ性質をもったゆらぎを外部から刺激として受けると、『快適だ』と感じるのではないか」と武者さんは述べています。

ゆらぎのやすらぎ

そしてまた、見た目の美しさや肌触りなども「1/f」ゆらぎと無関係ではありません。その一例が、木の木目。カットした木材に木目が現れるのは、年輪があるからです。年輪は幾重にも重なりあった美しい同心円。でも、よく観察するとそれぞれの年輪の幅には微妙な違いが見られます。その年の気候によって木の生長する速さが異なるためです。武者さんが分析したところ、木目の配列にもやはり「1/f」ゆらぎが見られたとか。木目を活かした建築物や家具に囲まれるとなんとなく気が休まるのはこのためです。

木目だけではありません。手織りの生地にやさしさを覚えるのも、人工的な調味料より自然の出汁にうまみを感じるのも、手梳きの和紙の風合いに魅力があるのも、作家の焼いた茶碗に深い味わいが見いだせるのも、その奥底に「1/f」ゆらぎが隠れているから。私たちの先人はこのことを無意識のうちに悟ったうえで、自然の心地よいリズムを取り入れながら、暮らしを紡いできたのでしょう。

予想できそうで、予想することがむずかしい、意外性を含んだ規則的な動き。「1/f」ゆらぎがなぜこの世に存在するのかは、まだわかっていないそうです。しかし、この未解明のふしぎな「1/f」ゆらぎにこそ、私たちがテーマとする「感じ良いくらし」のヒントがあるのではないかと思いました。

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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