http://gokoo.main.jp/001/?p=9325 【『金子兜太俳句戦後日記』第1巻できました】
『金子兜太戦後俳句日記』全3巻(白水社)の刊行がはじまりました。これは昨年2月20日に亡くなった金子兜太が61年にわたってほぼ毎日書いていた日記の俳句関連部分をまとめたものです。
各巻の解説は私が書きます。第1巻は「兜太の戦争体験」、第2巻(8月刊行)「社会性と前衛」、第3巻(2020年2月刊行)「存在者とは何か」。
俳壇の至宝ともいえる金子兜太は、1957年(昭和32年)1月1日から亡くなる前年の2017年(平成29年)7月3日まで、ほぼ毎日日記をつけていた。年齢でいえば37歳元日から97歳盛夏まで、61年7か月の長きにわたる。
98年の生涯を閉じて1年、ついにその日記が公開されることになった。俳句関連中心に全三巻。第一巻では、前衛俳句の旗手として台頭してきた金子兜太が、第一句集「少年」で現代俳句協会賞受賞後、「海程」の創刊に携わり、俳句造型論を展開、自身の創作方法を理論化した壮年期、37歳から56歳までの20年間が収録される。日本銀行行員としては、神戸支店、長崎支店、東京本店と定年まで勤め上げた時代である
。 そこには、伝統にとらわれない新しい句作への志や苦悩、知的野性と繊細な感性が交差する瞬間が赤裸々に描かれている。代表句が浮かんだ背景や、ついに発表に至らなかった「トラック島日記(環礁戦記)」の構想にも言及されており、全巻解説を担当する長谷川櫂氏も「まぎれもなく戦後俳句の超一級の資料である」と太鼓判を押している。
https://www.fujiwara-shoten-store.jp/SHOP/9784865781199.html 【存在者 金子兜太】より
黒田杏子=編著[推薦]
“存在者”であること、平和であること。日野原重明氏(105歳)、ドナルド・キーン氏(94歳)、推薦!!
2015年度朝日賞を受賞、激戦地トラック島にあって、ありありと“存在者”であった戦友たちの記憶を語った俳句界の最長老、金子兜太。
白寿を目前に、権力に決して侵されない生(=平和)を守るため、今なお精力的に活動を続ける、超長寿・現役俳句人生の秘訣とは? 俳人・黒田杏子が明らかに!
〈付〉口絵32頁「金子兜太アルバム」
〈特別CD付き〉金子兜太+伊東乾「少年Ⅰ」
目次
存在者とともに――編者はしがきにかえて 黒田杏子
第1章 存在者の俳句作品
ふるさと秩父/年明ける/被曝福島/東国抄/日常
第2章 存在者として生きる
存在者として生きる 平和の俳句――第12回「みなづき賞」受賞記念ライブトーク
〈鼎談〉金子兜太+いとうせいこう+加古陽治(司会)
死者とともに走る
戦争体験語り続ける
人間って善いもんだ――トラック諸島で見た修羅場
声の存在者 “Der” Existenz
金子兜太を作曲する――『少年Ⅰ』(2016/17) 伊東 乾
第3章 金子兜太かく語りき
わが俳句人生
金子兜太自選五十句/金子兜太略年譜
鶴見和子さんのこと――「偲ぶ会」でのスピーチ
姐御としての鶴見和子さん/献杯と祝杯と
第4章 兜太を知る
兜太さんへの手紙
情熱と、綿密さと 深見けん二
秩父のおおかみ 星野 椿
厳しく、あたたかい眼で 木附沢麦青
人間・兜太さん 橋本榮治
それでもの 横澤放川
「生きもの」として アビゲール・フリードマン(中野利子訳)
一人の俳人として 櫂 未知子
いつも隣に マブソン青眼
土の香り立つ 堀本裕樹
子馬のように 高柳克弘
?気の系譜 中嶋鬼谷
兜太三句 井口時男
第5章 昭和を俳句と共に生きてきた
青春の兜太――「成層圏」の師と仲間たち 坂本宮尾
兜太の社会性 筑紫磐井
第6章 存在者の日常
兜太さん 三つの俳壇活動 黒田杏子
存在者兜太さん 長寿の秘訣――ゆったり生きる ふだんの暮らし
黒田杏子+金子眞土+金子知佳子
あとがき――感謝のことば 金子兜太
あとがき 黒田杏子
関連情報
金子兜太さんは現在も俳人として進化をつづけられ、人間性も深化しつづけておられます。年をとるたびに若々しくなられる。人間がやさしく慈愛に満ちてこられる。いのちの耀きが増してきて広く人々に愛されるようになってこられている。秩父音頭などをアカペラで大勢の人の集まる会場で朗々と唄うことの出来る声量がある。ともかくめったに出会えない珍しい俳人にめぐり会えたことをいよいよありがたく思います。
黒田杏子
存在者とは「そのまま」で生きている人間。いわば生の人間。率直にものを言う人たち。これが人間観の基本です。
存在者の魅力を確認したのは戦争です。私は二十五歳から二十七歳まで南方のトラック島で海軍施設部の隊におりました。そこは存在者の塊のようでした。その愛する人たちがたくさん死んでしまった。
私自身、存在者として徹底した生き方をしたい。存在者のために生涯を捧げたいと思っています。
金子兜太「朝日賞受賞記念講演」より
●金子兜太(かねこ・とうた)
1919年生まれ。俳人の父、金子伊昔紅の影響で早くから俳句に親しむ。27年、旧制水戸高校に入学し、19歳のとき、高校の先輩、出沢珊太郎の影響で作句を開始、竹下しづの女の「成層圏」に参加。加藤楸邨、中村草田男に私淑。加藤楸邨に師事。東京帝大経済学部卒業後、日本銀行に入行するが応召し出征。トラック島で終戦を迎え、米軍捕虜になったのち46年帰国。47年、日銀復職。55年の戦後第一句集『少年』で翌年、現代俳句協会賞受賞。関西同世代俳人と交わるうち、その活気のなかで俳句専念に踏切る。62年に同人誌「海程」を創刊し、後に主宰となる。74年日銀退職。83年、現代俳句協会会長(2000年より名誉会長)。86年より朝日俳壇選者。88年紫綬褒章受章。97年NHK放送文化賞、2003年日本芸術院賞。2005年チカダ賞(スウェーデン)を受賞。日本芸術院会員。
著書に、句集『蜿蜿』(三青社)『皆之』『両神』(日本詩歌文学館賞。以上、立風書房)『東国抄』(蛇笏賞。花神社)『日常』(ふらんす堂)の他、『金子兜太選集』4巻(筑摩書房)がある。近著に、『金子兜太養生訓』(白水社)『小林一茶――句による評伝』『語る 兜太――わが俳句人生』『いま、兜太は』(岩波書店)等、多数。
●黒田杏子(くろだ・ももこ)
1938年生まれ。俳人。東京女子大学入学と同時に俳句研究会「白塔会」に入り山口青邨の指導を受け「夏草」に入会、卒業と同時に広告代理店「博報堂」に入社。67年青邨に再入門。90年、師没後「藍生」を創刊、主宰。『黒田杏子句集成』全四句集・別巻一(角川書店)。日経俳壇選者。
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