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太陽光はクリーン?──それは幻想だ釧路湿原に広がるメガソーラー計画は自然破壊以外の何物でもない森を削れば雨は流れ込み土砂崩れと水害を招く。湿原に生きるタンチョウやオジロワシの営巣地も潰される。パネルは水面に見えて渡り鳥を惑わせ夜はヒートアイランドで気温を上げる。さらに30年後、寿命を迎えたパネルは大量の産業廃棄物になる。
鉛やカドミウムを含むものもあり不法投棄されれば土壌も水も汚染される。
災害で飛散すれば火災の危険。これが「エコ」の正体だ。
本当の問題は太陽光そのものではない。湿原や里山に巨大パネルを敷き詰めるという狂気だ。
自然を守るどころか、再エネの名を借りた破壊工作。釧路が掲げた「ノーモア・メガソーラー」は全国が学ぶべき警鐘だ。
https://toyokeizai.net/articles/-/676109 【北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変】より
湿原に目立って増えた太陽光発電施設。右のソーラーパネル群から「外環状道路」を挟んだ向こう側にも建設が予定されている(提供:釧路市民がドローンで撮影)
43年前に日本初のラムサール条約湿地として登録され、自然環境の再生・保全が進められてきた釧路湿原。そこに大小さまざまな太陽光発電施設が出現し「このままでは、湿原がソーラーパネルの海になってしまう」と環境団体や専門家が危惧している。半信半疑で現地を訪れると、太陽光発電の拡大圧を受け、市民団体や自治体が対抗策を探っていた。
太陽光発電施設が7年で5.5倍へ急増
釧路自然保護協会をはじめ地元9団体が3月17日付けで「要望書」を、釧路湿原自然再生協議会(市民団体、専門家、国、道、市町村などで構成)が4月18日付けで「提言」を釧路市に提出した。いすれも太陽光発電施設の建設ラッシュを憂い、対策を求めている。
釧路湿原といえば、総面積2.6万ヘクタールの日本最大の湿原で、1980年にラムサール条約湿地として登録され、国指定の特別天然記念物タンチョウをはじめ貴重な動植物が生息していることで知られる。湿原は、かつて「役に立たない土地」として扱われた。現在は、洪水調整機能や炭素吸収機能を含め、重要な場所として注目されている。
その湿原の代表格である釧路湿原で太陽光発電施設の乱立とは、本当だろうか。関東地方のメガソーラー問題を取材してきた私は「心配しすぎではないか」とさえ思った。しかし行ってみると、太陽光発電の存在は際立っていた。空港から釧路市内へのバスの車窓からもあちこちにソーラーパネルを散見し、釧路外環状道路などの高速道路を車で走ると、ソーラーパネル群が光って見えた。
資源エネルギー庁のデータをもとに釧路市がまとめた「太陽光発電施設の推移」によると、2014年6月の時点で同市内の太陽光発電施設は96施設だったが、2021年6月には527施設へと5.5倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは1か所から21カ所へと急増している。
特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。
釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった。
発電施設付近でタンチョウの営巣を確認
市街化調整区域の湿原に並ぶソーラーパネルの近くに行ってみた。釧路市鶴野にある発電所は、大阪の発電事業者が3年前に運転を開始し出力は約2000kW近くある。パネルが並ぶ南端から見ると、土砂を入れて整地したうえでパネルを設置したとわかる。
釧路市鶴野のメガソーラー。パネルが並んだ南側には湿原が広がっていた(撮影:河野博子)
NPO法人「トラストサルン釧路」の副理事長でタンチョウの研究者、松本文雄さんによると、この発電所の付近はNGOによる調査でタンチョウの営巣が確認されてきた場所。また、日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤信道さん(66歳)によると、タカの仲間で環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類のチュウヒも繁殖していた。
「野鳥観察仲間が繁殖を確認していた。チュウヒはネズミなど湿原の小動物を食べるが、こうしたエサ動物がいなくなるし、用心深い鳥なので、もう巣を作る状況ではないと思う」と黒澤さんは残念そうだ。
釧路市山花の太陽光発電施設の場合、盛り土をした上にソーラーパネルが設置された(撮影:河野博子)
このメガソーラーから西に8キロ、市街化調整区域の釧路市山花にある太陽光発電施設を見た。法律で発電設備、発電事業者、保守点検責任者の連絡先、運転開始年月日などを書いた看板の設置が定められているが見当たらない。周囲の湿原に比べて高さ2メートルほどの盛り土をし、パネルが設置されている。
この発電施設付近で昨年春、タンチョウの営巣が確認された。タンチョウは樹木の上に巣を作るコウノトリなどと異なり、湿原の中にヨシなどで巣を作り卵を抱く。
釧路市山花の太陽光施設のすぐそばにタンチョウの営巣地を見つけたのは、NPO法人・環境把握推進ネットワーク-PEG理事長の照井滋晴さん(40歳)。実はタンチョウの調査ではなく、両生類のキタサンショウウオの調査をしていて、たまたま見つけた。
(写真上)ヨシやスゲを使って円い台形状の巣を作り、卵を抱くタンチョウ(写真下)ヨシに抱きつき、メスが近づいてくるのを待つキタサンショウウオのオス。左側はこれより前に産み付けられた卵のうで、光を当てると青白く輝き「湿原のサファイア」と呼ばれる(提供:照井滋晴さん)
キタサンショウウオは、釧路市指定の天然記念物。3年前に環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。
昨年1月には種の保存法に基づき、販売目的の捕獲が厳罰化されるなど保護策が強化された。体長11センチと小さく湿原の中で生まれ、動いてもせいぜい100mという狭い範囲で生涯を過ごす。
照井さんは釧路教育大学在学中から研究を続ける。「可愛らしいということもあるが、そもそも1954年まで北海道にいることすら知られていなかった。生態や生息状況はわからないことだらけで、研究をやめられなくなった」と語る。
キタサンショウウオの生息適地で建設ラッシュ
釧路市文化財保護条例に基づき研究・保護活動を行う釧路市立博物館は、照井さんはじめ京都大学などの研究者とともに、これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。
市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。
その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った。
キタサンショウウオの生息適地が広がり、実際に生息が確認された場所も多い釧路市南部の市街化調整区域。そこはまた太陽光発電事業者がパネルを貼りたい場所であり、建設ラッシュが起きている。
黒澤さんはその事業地を歩き、タンチョウの羽がごっそり落ちていたのを見つけた。「タンチョウは換羽時期、つばさの羽が抜けるシーズンは安全な場所に退避し身を隠すんです。そういう場所になっていたのでしょう」
国立公園区域内のメガソーラーの前で建設前に歩いた事業地の様子を振り返る黒澤さん(撮影:河野博子)
「事業地を休息やエサ探しに利用していたタンチョウは見られなくなった。でもノビタキなどの小さな草原性の鳥は、それほど減っていないものもあったと聞いている。それはソーラーパネルを設置する時の工法と関係している」と黒澤さんは指摘する。
盛り土をして地盤を固めるのではなく鉄パイプを刺す工法を取ったことで、周辺の自然環境への悪影響が減ったという。「太陽光発電施設をどうしても建てたいという事業者には、環境や生態系に影響が少ない工法をとってもらうことも一つの手になる」と黒澤さんは考える。
釧路市は条例化を視野にガイドライン公表へ
釧路湿原の太陽光発電の問題は昨年12月以来、毎日新聞(ウェブ版)や北海道新聞などが取り上げて波紋を広げた。鶴居村が「美しい景観等と太陽光発電事業との共生に関する条例」を昨年1月に制定するなど釧路湿原の釧路川流域5市町村は動き出していた。釧路市の蝦名大也市長は今年3月、市議会で「条例化を視野にガイドラインを作る」と表明した。
釧路市は6月中旬に始まる市議会定例会でガイドラインを公表し、その後、条例化の検討に入る。「まずはガイドラインで釧路湿原という豊かな自然環境を守っていくということを明確に打ち出す」(市環境保全課)としている。
国の関係省庁、関連自治体、専門家、市民団体で構成する「釧路湿原自然再生協議会」は今年秋、設立20年を迎える。釧路川の蛇行復元事業などにより、自然環境の回復が進む。協議会会長の中村太士・北海道大学農学研究院教授は「日本最大の淡水魚イトウの生息が確認され、自然産卵の野生サケが増えた」と振り返る。
ようやく自然が回復してきた今、浮上した太陽光発電施設の乱立問題。中村会長は「生物にとって重要な場所を明らかにして、市の条例でこういう場所は建設を抑制する、こういう場所は建設方法について市や関係者と協議する、というように具体的に地図の上で見える化する必要がある。景観が損なわれ観光に悪影響を及ぼすという懸念も大きい」と指摘している。
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