https://koubo.jp/article/39424 【俳句界に新たな風!第59回「蛇笏賞」に三村純也氏の『高天』が輝く】より
三村純也(みむら じゅんや)氏 句集『高天(たかま)』(2024年12月 朔出版刊)(プレスリリースより)
俳句界の権威ある賞として知られる「蛇笏賞」の第59回受賞作が決定した。公益財団法人角川文化振興財団が主催するこの賞の栄誉に輝いたのは、三村純也氏の句集『高天』(たかま)だ。2025年4月18日に東京・神楽坂の志満金で開催された選考会で、厳正な審査の末に選ばれた。
三村純也氏は1953年大阪市生まれの71歳。慶應義塾大学大学院博士課程を修了し、中世国文学や芸能史、民俗学、近現代俳句史を専攻。現在は「山茶花」の主宰を務めるほか、俳人協会評議員や日本伝統俳句協会評議員など、俳句界の重要な役職を多数兼任している。
受賞作となった『高天』は三村氏の第6句集で、2015年から2022年までの378句を収録。2024年12月に朔出版から刊行された。この受賞により、三村氏には賞状と記念品、そして副賞100万円が贈られる。贈呈式は2025年6月29日、東京・飯田橋のホテルメトロポリタンエドモントで執り行われる予定だ。
選考委員には高野ムツオ氏、高橋睦郎氏、中村和弘氏、正木ゆう子氏が名を連ねた。最終候補には『高天』のほか、石田郷子氏の『万の枝』、谷口智行氏の『海山』、坪内稔典氏の『リスボンの窓』、宮坂静生氏の『鑑真』が挙がっていた。
三村氏はこれまでにも2002年に第26回俳人協会新人賞、2019年に第34回詩歌文学館賞を受賞しており、今回の蛇笏賞受賞でさらなる評価を得ることとなった。
角川文化振興財団は、日本の文化振興に寄与することを目的に、文芸の顕彰や出版支援、映画芸術振興など、幅広い活動を展開している。今回の蛇笏賞もその一環であり、日本の俳句文化の発展に大きく貢献している。
俳句愛好家はもちろん、文学に興味のある方々にとって、三村純也氏の『高天』は必読の一冊となりそうだ。日本の伝統文化である俳句の魅力を再発見する良い機会かもしれない。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000042.000123526.html
https://saku-pub.com/books/takama.html 【三村純也句集『高天』(たかま)
第59回蛇笏賞・第3回稲畑汀子賞 ダブル受賞!】より
詩歌文学館受賞から5年。大学教授と「山茶花」主宰という二足の草鞋から放たれ、いよいよ俳句一筋の道へ。知識と経験に裏打ちされた写生の眼、端正な句姿、時にユーモアもちりばめながら、高まる句ごころを自在に表現した奥行のある一書。平成27年から令和4年までの378句を収める待望の第六句集。
◆帯文より
今日来よと今来よといふ牡丹かな
「高天」は金剛葛城山系の古名。古くは一体の峰とされ、ここが高天原であるという伝承も残る。通勤のたびにその山容を仰ぎ、四季折々に変化する表情に慰められ、詩嚢をふくらませて来た。四十年余りにわたる大学教員生活から解放されたいま、季題と五七五で捉える俳句の世界を、あらゆる方向から、さまざまな表現をもって探っていきたい。(三村純也)
◆自選 15句
二月堂より見下ろしの初景色 春着の子はきはきものを言ひにけり
降りしきる雨の中より初桜 何もせず何も起こらず春の昼
キャンパスに誰が吹きゐるしやぼん玉 筋塀を抜き出で芭蕉巻葉かな
空蝉の目が見据ゑゐる前世かな さざ波となりつつ蛇の泳ぎ去る
人は失せピアノは残り原爆忌 動脈も静脈もある鶏頭花
ただ立つてゐる子が一人赤い羽根 大盃にぴたりと注がれ新走り
寺田屋の大提灯のしぐれけり 鰭酒に思はせぶりなことを言ふ
大晦日一円玉を拾ひけり
<著者略歴>
三村純也(みむら じゅんや)
昭和28年、大阪船場生まれ。中世国文学・芸能史・民俗学などを専攻。
令和6年3月、大阪芸術大学を最後に約40年に亙る大学教員生活を終える。
中学時代より俳句を始め、「山茶花」入会、下村非文に師事。その後、
清崎敏郎、稲畑汀子の指導を受ける。平成9年、「山茶花」主宰を継承。
句集『常行』で第26回俳人協会新人賞、2019年、句集『一』で第34回詩歌文学館賞。
その他の句集に『Rugby』『蜃気楼』『観自在』がある。
俳人協会評議員、日本伝統俳句協会評議員、虚子記念文学館理事、日本文藝家協会会員、大阪俳句史研究会代表理事、俳文学会会員。
https://www.asahi.com/articles/AST5Q3RGLT5QUCVL00NM.html 【バレンタインには「雪ちらと」 蛇笏賞受賞者がみせる「高天」の芸】より
俳句時評 岸本尚毅
朝刊歌壇俳壇面で月1回掲載している、俳人・岸本尚毅さんの「俳句時評」。今回は、今年の蛇笏賞に決まった三村純也さんの句集を取り上げます。
今年の蛇笏賞に決まった三村純也「高天(たかま)」(朔(さく)出版)に〈雪ちらとバレンタインの日なりけり〉という句がある。
この表現はよくある。サンプルとして俳誌「ホトトギス」一九九八年六月号を調べると、「義理果たすバレンタインの日なりけり」のような句が十数句あった。このほか「妻と娘に」「厨(くりや)に娘」「品選ぶ」「縁薄き」「無視できぬ」「まなざしの」「気がねなき」「夢かなふ」「ほろ苦き」「面映(おもは)ゆき」など。多くの句は「バレンタインの日なりけり」の上五に、バレンタインデーに関わる人の様子や心の動きをそのままの形で詠みこんでいる。(以下略)
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