https://sectpoclit.com/doitanka-3/ 【枇杷の花ふつうの未来だといいな 越智友亮【季語=枇杷の花(冬)】】より
連載も三回目。皆さん、口語俳句を楽しんでおられるだろうか。自由なようで不自由で制約も沢山。というのも俳句自体が文語や切れ字を大前提とした詩型なのだ。季語だって「日脚伸ぶ」なんて口語句の存在をまるで無視しているし。
でもわたし、句集『地球酔』では試みとして「日脚伸びる」としてしまった。もちろん校正が入ったが、スルー。季語至上主義の方は「霜夜」を「霜の夜」にするだけでマイナス査定をするぐらいだから、この改変は許せないだろう。それでも、口語句を広めていくにはこんな試行錯誤と反抗は序の口である、と信じる。
だがわたしの暗中模索をさらり受け流すように、今回取り上げる越智友亮さんは自然体だ。口語俳句で名を馳せているかに見えて、句集『ふつうの未来』は良い意味でやりたい放題である。代表句である ゆず湯の柚子つついて恋を今しているで始まる一方で
しぐるるや滑舌悪し舌長し というコテコテの文語句もしれっとある。「滑舌」と「時雨」という新旧の感覚をぶつけた意欲作だ。師である池田澄子さんの薫陶をはっきりと感じる。 さてまた前置きが長くなってしまった。本題に移りたい。
枇杷の花ふつうの未来だといいな
掲句のトキメキは「ふつう」の多義性だ。百人いれば百通りある「ふつう」。個人でも年齢や境遇の変化、極論すればその日の気分でも「ふつう」は揺らぎがあるだろう。
そんな懐の深い措辞に「未来」を託した。作者は決して派手ではない「枇杷の花」を斡旋して「ふつう」の読みにヒントは与えてくれているから、慎ましくも幸せな未来と読むのが妥当なのだろう。
ただその程度も読者に丸投げされている。「いいな」というからにはポジティブな願いだが、軽みがあっても強制はない。まさに多様性の時代の詩である。
昨今の世界情勢には胸を締めつけられる悲しみと絶望がある。わたしの考える「未来」もかなりネガティブ。だが掲句を繰り返し唱えるとちょこっと希望を見出せる。作者が句集の最後としたのには、措辞の優しさとは裏腹の強い意志があるのかもしれない。
( 『ふつうの未来』 左右社 2022年)(土井探花)【執筆者プロフィール】土井探花 (どい・たんか)
1976年生まれ。「雪華」「ASYL」同人、「楽園」会員。超結社句会「ほしくず研究会」車掌。「カルフル」発行人。第40回兜太現代俳句新人賞。現代俳句協会会員。第一句集『地球酔』(現代俳句協会)第40回兜太現代俳句新人賞受賞収載!
https://ameblo.jp/yujyaku/entry-12830722538.html 【裏道にひそと咲き初む枇杷の花】より
裏道にひそと咲き初む枇杷の花( うらみちに ひそとさきそむ びわのはな )
今もなお、紅葉は近辺の方々で見られ、それを目当ての観光客も途切れることがない。今日はその喧騒を避けるように、裏道を選んで散歩した。こちらは人通りがほとんどなく、常緑の低木が幾本も植えられていたが、その中に「枇杷(びわ)」の木が数本あり、ひっそりと白い花を咲かせていた。
本日の掲句は、その様子を見て詠んだ句である。まだ、咲き初めたばかりであり莟のものが多かった。「枇杷の花」は冬の季語。「枇杷の実」は夏の季語。
*ひそと:静かでものさびしいさま。静まりかえっているさま。漢字では「密と」「秘と」と書く。
ところで、「枇杷」の実ついては大概の人が知っていると思うが、「枇杷の花」については知らない人も多いのではないだろうか。
冬に咲く数少ない花の一つなのだが、厚手の大きな葉に囲まれて咲き、しかも茶色の萼(苞)に覆われながら咲くため、あまり目立たない。バラ科の花であり、端正な五弁の花なのだが・・・。
因みに、「枇杷の花」に関しては、過去に以下の句を詠んでいる。
【関連句】
① 寒き朝寄り添うように枇杷の花
② マフラーをまとうこの頃びわの花
③ この時と定め咲きたる枇杷の花
①は、いくつもの花が集まって咲く様子が、猿団子(さるだんご)のように寄り添い温めあっている感じにも見え、その印象をそのまま詠んだ。
②は、寒くなり始めた11月に詠んだ句。薄茶色の萼(苞)を「マフラー」に喩えた。かつて「ベージュのショール」、「外套」、「ビロードのマント」に喩えて詠んだこともある。
③は、よりによって何でこんな寒い時期に花を咲かすのか、そんな疑問を抱きながら詠んだ句。一説では、受粉を手助けする鳥や虫たちに好まれるため、競争相手が少ない時期を敢えて選んだとも言われている。
「枇杷」は、バラ科ビワ属の常緑高木で原産地は中国。年平均気温15度以上、最低気温は-5度以下にならない場所が栽培に適しているといわれており、日本では千葉県より北では本格的な栽培は行われていないとのこと。
花期は11月~1月。既述の通り、五弁の白い花で、薄茶色の毛が生えた外皮のような萼(苞)に包まれて咲く。果実は5月~6月頃に鈴なりになる。
名前は、果実(葉ではない)の形が楽器の琵琶(びわ)に似ているところから付けられたとのこと。漢字の「枇杷」は、漢名がそのまま用いられている。
*枇杷の実 (6月に撮影)
「枇杷の花」を詠んだ句は結構あり、本ブログでも数十句紹介したことがあるが、以下には、その中から特に好むものを選んで再掲した。
【枇杷の花の参考句】
世に遅れ人に隠れて枇杷の花 /山口青邨 枇杷咲いて長き留守なる館かな /松本たかし
枇杷咲いてこそりともせぬ一日かな /村上鬼城
雪嶺より来る風に耐へ枇杷の花 /福田甲子雄 忘れゐし花よ真白き枇杷五瓣 /橋本多佳子
https://note.com/nori_take7/n/nff23d3e62ef4【俳句 廃屋の人知れずあり枇杷の花】より
季語 枇杷の花 冬
枇杷は実ならば夏の季語になります石の上にも3年よね!って歳時記を買ってから約1年経ちましたまだ俳句にはなってないけど生活に変化はありました
今まで何気なく通り過ぎていたものもあれ?これなんだろうと近くによって観察するようになりました 角度を変えたり 高さも変えたりと 見ている人がいたら不審者だと思うかも(笑)
私の住んでいるところは昭和40年前後に建てたられた家が多い 市の中心部よりより少し離れた 地価の安い場所を選んだのだろう 住んでいた方々が高齢になり、 施設に行ったり、亡くなったりでそのままになってる家も多い その子供たちは新しく自分の家を持ち
親の家には帰って来る者はあまりいない 住人のいない家は庭木も伸び放題になり
家も朽ちかけている それでもこの時季になると 生垣には山茶花が咲き 裏庭には
渋柿の実がなり 遠目には花だと気づかれないくらい ひっそりと枇杷が花を咲かせています
そのうちこれらの家も更地になり また新しい人が住むのだろうか?
愛媛は空き家がとても多い県だそうです もし買い手がいない土地はどうなるのだろう?
そんなことが気になる今日この頃です
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