コバノタツナミ(小葉立浪)

https://nissay-midori.jp/topics/details/1549 【《森の植物の歳時記》 [173] 【コバノタツナミ(小葉立浪)】】より

【コバノタツナミ(小葉立浪)】

タツナミソウの仲間はいろいろありますが、最も身近で見られるのはコバノタツナミでしょうか。本来は岩の上などに生えているのですが、園芸店でも売られています。全体に小ぶりなことと、花の咲く姿が波立っているように見えることからの名前です。葉が短毛で密に覆われており、ビロードタツナミとも呼ばれます。

タツナミソウの仲間の萼は、上下に口を開けているような形をしていて、その上唇に丸い付属物があります。果実が熟す間は、これが前に倒れて口を閉じたような形になります。花後、スプーンが重なったような形に見えるのはこの時の形です。

果実が熟すと、上唇は少しの刺激で落ちてしまい、種子を載せた下唇のスプーンが残ります。このスプーンに雨が降ると、雨粒の勢いで種子は弾き飛ばされて地面にこぼれます。

こぼれた種子は地面に降った雨の流れに乗って広がります。「雨滴散布」と言われます。このため鉢で育てていても、いつの間にか、庭中に広がってしまいます。

タツナミソウの仲間はタツナミソウやヤマタツナミなど、地域、環境によって様々ですので、探してみて下さい。


https://mikawanoyasou.org/data/kobanotatunami.htm【コバノタツナミ 小葉の立浪】より

タツナミソウの変種。別名のようにビロード状の短毛が密生するが、短毛の量は変化する。日本で最も普通に栽培されている。

 多年草。茎は暗紫色、1本~少数出て、高さ[5~]8~16(~20)㎝、基部が倒れて這い、先が斜上~直立、直径約1~1.2mm、角(かど)や先に微軟毛がある。葉柄は長さ 0.4~1.4(~2.8)㎝。葉身は心状卵形~卵形、長さ[0.5~]0.8~1.5㎝×幅0.8~1㎝、基部は切形~くさび形、縁は約5(3~7)対の粗い円鋸歯、先は鈍形、両面に毛があり、下面には腺点がある。総状花序は頂生、長さ4~8(~12)㎝。苞は無柄、長さ3~6mm×幅1~2.5mm、縁は全縁。基部の苞は葉状、卵形、長さ1.7㎝以下、微軟毛があり、縁は円鋸歯縁。花柄は長さ2.5~3mm、微軟毛がある。咢は長さ約2.5㎜、租毛があり、微軟毛がある。スクテルム(scutellum:咢の上唇につく大きな突起、属の特徴でもある)は長さ約1.5mm、直立し、果時に長さ3mm以下に広がる。花冠は青紫色(品種は白色、淡紅色)、長さ1~1.5㎝、外側にまばらに微軟毛があり、唇の内側に毛があり、のど部で幅約4.5mm。下唇の中裂片や側裂片に斑紋があるが、斑紋の濃さや形は変化し、ほとんど無いこともあり、円状卵形、中間でわずかにくびれ、先は凹形。側裂片は卵形。小堅果は栗色~暗褐色、卵形、長さ1~1.2㎜、小突起が密にあり(tuberculate)、小突起は尖鋭形、先に微細な渦巻状の鈎をもち、内側の基部近くに円筒形の突起(umbonate)がある。花期と果期は5~6月。開花期以降は閉鎖花をつける。2n=26。

品種) 'Alba' , 白覆輪 , 獅子葉

 タツナミソウはやや大形で、軟毛が密生。また、葉の鋸歯が多く、花の下唇の左右の側裂片には斑紋がない。

 オカタツナミソウの花穂はタツナミソウより短く、茎の先に花が固まってつく。


https://suzugamo.sakura.ne.jp/kobanotatunamin.html 【コバノタツナミ(小葉の立浪)】より

シソ科 多年草花 期 : 4~5月草 丈 : 5~20cm

 4月下旬から5月中旬にかけて,観音崎公園の噴水広場から戦没船員碑へ至る坂道の側溝沿いや,観音埼灯台の入り口付近の崖地等でコバノタツナミが見頃を迎えるが,小さな花なのでうっかりすると見逃してしまう。しかしながら,顔を近づけてよく見ると,なかなか美しい花で,花の形が波頭に似ていることから「立浪」と名づけられたことからも分かるように,押し寄せる波の雰囲気があり,実に素晴らしいネーミングだと感心する。

 コバノタツナミの花の形を眺めていて,私は何故か葛飾北斎の冨嶽三十六景 の一つの情景を連想した。早速,本棚の片隅に眠っていた北斎の版画集の中から, 私のイメージにあった「神奈川沖浪裏」を戯れに同じ額縁に納めてみた。北斎の波頭は大胆にデフォルメされて迫力満点だが,コバノタツナミにもそれに負けず劣らずの雰囲気を感じるのは,私の欲目だろうか?

 コーラスの練習から帰った妻が,なにやら得意気な顔で,私の目の前にビニールポットに入った小さな白い花を差し出した。誕生日でもないのに花のプレゼント?珍しいことがあるものと思いながら,差し出された花をよく見るとコバノタツナミに似ている。

 仲間内のバザーで,誰かが自宅の庭で繁殖した花を小分けにし,小さなビニールポットに移植して,100円で売っていたので買ってきたとの話。来歴はあまりハッキリしないが,白色のコバノタツナミかタツナミソウらしい。観音崎に自生するコバノタツナミに比べると,花は若干大きめ,葉は同じくらいの大きさだが,緑色が薄く,全体に少し弱々しい感じがする。

 それからしばらくして,私が毎週二回,趣味の囲碁クラブに通う鴨居コミセン近くのお宅の塀沿いにシロバナコバノタツナミが生えているのに気付いた。現地は2m位の幅の道路に面した民家の塀沿いにあり,白花のコバノタツナミがザッと数えて20株くらい,ほぼ等間隔に生えていた。その他に雑草は見当たらない。その状況からすると,どうやら塀の中の住人が植えたものと推測される。

 失礼とは思ったが,辺りに人がいないのを幸い,それとなく生け垣の隙間から庭を覗いてみると,矢張り白花のコバノタツナミが咲いていた。その他にも山野草が数種類生えているところから,住人はなかなかの風流人と察せられる。私の怪しげな風体から,空き巣狙いと間違えられる恐れがあるので,植栽されたものであることを確認して,早々にその場を後にした。

 鉢植えのシロバナコバノタツナミを見てから5年後。観音崎公園近くの空き地でシロバナコバノタツナミの群落を発見した。近くのお宅の庭から脱走?した栽培種が野生化したと思われるが,鉢植えのものに比べて逞しく,色は異なるが青紫色の自生種に似た雰囲気が感じられた。


https://www.shigei.or.jp/herbgarden/album/tatsunamisou/album_tatsunamisou.html 【タツナミソウ(シソ科) Scutellaria indica】より

春、青紫色~淡紅紫色の花を茎の頂部の花穂に多数咲かせる。花は一定の方向を向いて着く。 茎は赤みを帯び、白色の開出毛がある。葉は対生で両面に軟毛が生える。

▲春、青紫色~淡紅紫色の花を茎の頂部の花穂に多数咲かせる。花は一定の方向を向いて着く。 ▲茎は赤みを帯び、白色の開出毛がある。葉は対生で両面に軟毛が生える。

タツナミソウは、本州・四国・九州の日当たりの良い草地や林縁に生育する高さ20~40㎝程度の多年草です。茎はシソ科の多くがそうであるように断面は四角形をしており、赤みを帯び、白色の開出毛を持ちます。葉は対生(2枚が対になって茎に着く)で、長さ2~3㎝、幅1.5~2.5㎝程度の広卵形をしており、先端は丸みを帯び、基部は心形(ハート型のように凹んだ形)をしています。葉の縁には鈍い(尖っていない)鋸歯(ぎざぎざ)があり、両面に軟毛が生えます。葉の裏面には腺点(分泌物などを出している場所)がありますが、肉眼ではなかなか観察しづらいため、ルーペ、あるいは低倍率の実体顕微鏡を用いて観察します。花は岡山県南部では4~5月頃、茎の先に長さ3~8㎝の花穂を出し、長さ約1.5~2㎝の筒状の花を一方向に向けて咲かせます。花の形は、同じシソ科のホトケノザなどにも似ていますが、ホトケノザなどの花は様々な方向を向いて咲き、花が一定の方向を向いて咲く点は、本種の仲間の大きな特徴です。花色は青紫色~淡紅紫色で、花冠(花の先端)は唇形となり、下唇には白色に紫色の斑があります。まれに白色花もあり、品種シロバナタツナミソウ f. leucantha として区別される場合もあります。

葉の裏面には腺点があるが、肉眼では見えにくく、ルーペか実態顕微鏡を用いて観察することが必要。 日当たりのよい草地や林縁に生育する。当園内では手入れされて明るい竹林の林床に生育している。

▲葉の裏面には腺点があるが、肉眼では見えにくく、ルーペか実態顕微鏡を用いて観察することが必要。 ▲日当たりのよい草地や林縁に生育する。当園内では手入れされて明るい竹林の林床に生育している。

本種の仲間(タツナミソウ属)の植物は以外に種類が多く、岡山県だけでも変種を含めて15種類が知られています。見分けが容易な種類もありますが、葉の大きさ、形、毛の状態は生育環境や個体によって幅があり、同定の際に頭を悩ませることも多い仲間です。特に、本種の変種であるコバノタツナミ var. parvifolia は主に海岸に近い地域に生育し、本種に比べて全体的に小型で、葉にビロード状に軟毛が生える、といった区別点はありますが、慣れなければ、見分けはかなり困難かもしれません。

時に白花のものもあり、品種シロバナタツナミソウ f. leucanthaとして区別される場合もある。 葉脈は葉裏では隆起し、脈状には粗い白色毛が目立つ。

▲時に白花のものもあり、品種シロバナタツナミソウ f. leucanthaとして区別される場合もある。 ▲変種コバノタツナミ var. parvifolia 。本種に比べて全体的に小型だが、慣れないと見分けは難しい。

タツナミソウの名は「立浪草」と書き、一定方向を向いて咲いている本種の花穂の姿と花冠の下唇の模様を、海の荒波が盛り上がって崩れる際、波頭が白く泡立って見える様子に例えたもの…と大抵の図鑑では説明されています。特に間違ってはいないのですが、実は前述したような荒波を図案化した「立浪模様」という模様があり、模様自体は中国の陶磁器などにも見られる古典的なものです。しかし「立浪草」の名は、古い時代の和歌などには登場せず、文化6(1809)年の『物品識名』など、江戸時代になって初めて確認できます。ちょうどこの頃、文化~文政年間は化政時代ともいい、江戸を中心とした町民文化が花開き、葛飾北斎など後世に名を残す浮世絵師も活躍した時代です。「立浪模様」も町民の着物の模様に使われるといったことが多くなり、身近な模様となったため、「立浪模様に似た花を咲かせる草」ということで、「立浪草」と呼ばれるようになった…というのが順序としては妥当なのではないかと思っています。

植物園では、湿地エリアのモウソウチク林の一部に自生のものが見られます。最近はタケの密度を調整し、林床も年数回草刈りを行うなど、竹林内の環境を明るい状態に管理していますが、その影響か、本種も少しずつではありますが、個体数が増えつつあるようです。

(2015.5.10)

葛飾北斎の「冨嶽三十六景」の一つ、「神奈川沖浪裏」。このような波を図案化した「立浪模様」が名の由来。 ホトケノザの花。同じシソ科の植物であり、花の形は似ているが、花は様々な方向を向いて咲く。

▲葛飾北斎の「冨嶽三十六景」の一つ、「神奈川沖浪裏」。このような波を図案化した「立浪模様」が名の由来。 ▲ホトケノザの花。同じシソ科の植物であり、花の形は似ているが、花は様々な方向を向いて咲く。

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