https://note.com/sakura463/n/n4dae89ed3023【72-24候 麦秋至(むぎのときいたる)】より
新幹線に乗っていると、この時期、青々と靡く田圃の横でまるで秋の収穫時のように、黄金色に色づく麦畑を目にする時がある。それはまだ春の残る初夏の頃だけれども、俳句ではその麦を『麦秋』という。
同じように『竹秋』という春の季語がある。これは、春に竹の葉が黄葉して散るさまをいい、春なのに『竹の秋』という。また、竹の場合は、青くて瑞々しい葉をつける秋の竹を『竹の春』という。春と秋が逆さまになるネーミング。
何気なく過ごす四季の移り変わり、春なのに秋、秋なのに春、これらは、俳句を始めて気付かされた事象である。
さて、いま、ウチのバルコニーでは、瑞々しい山椒の木の横で青い手鞠のような紫陽花が可愛く咲いている。
麦を育てたことがないので、バルコニーの秋現象は見たことはないが、『山笑う』住人たちがそろそろ騒ぎだした。
今年も賑やかな夏を過ごすことだろう。 2024年5月31日(金)【旧暦 卯月24日
https://www.kurashi-no-hotorisya.jp/blog/4seasons-things/72seasonal-signs/sign24.html?srsltid=AfmBOorkvpGs-2HhrE62bYxgsioi292nyX28hgd8anq6_L6d9HR62HOP 【第二十四候「麦秋至 (むぎのときいたる)」 5/31~6/4頃】より
七十二候が小満の末候に変わり、初冬に蒔かれた麦が小麦色に熟す頃になりました。
刈り取りを待つ麦畑は、一面黄金色に輝き、新緑がまぶしいこの頃にコントラストが際立ちます。
麦がたわわに実り、麦にとっての収穫の「秋」であることから名付けられました。
雨が少なく乾燥した季節ですが、まもなく梅雨が始まります。
5月の麦畑
そんな麦秋の候には、「麦」に因んだ言葉がたくさんあります。
この頃に麦の穂を揺らしながら吹き渡るさわやかな風は「麦嵐」「麦風」「麦の秋風」、また、そよぐ穂を「麦の波」、降る雨を「麦雨 (ばくう)」といいます。
麦の種蒔きや刈入れにぴったりな日は「麦日和」。
そろそろ麦わら帽子も大活躍と、まさに ”麦尽くし” の季節です。
https://www.asahi.com/and/article/20230613/423853068/ 【扉を開ければ一年中、小麦の実りの季節/麦秋至】より
池田浩明 「パンラボ」主宰
ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰。日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッド …
全粒粉をあらゆる手段でおいしく、食べやすく
麦秋がいまやってきている。麦秋とは、小麦の実りの季節である初夏を指す。黄金色の麦が一面に広がる景色が日本のそこかしこで展開されている。
この店にかぎっては、年がら年中「麦秋至(むぎのときいたる)」である。扉を開けると、香りがむんむんしている。オーブンから出たばかりの、濃厚な色で焼き上げたパンの香りであり、厨房(ちゅうぼう)の石臼が小麦を砕いては巻きあげる、フレッシュな香りであり。
扉を開ければ一年中、小麦の実りの季節/麦秋至
カンパーニュクルミレーズン、全粒粉ハースブレッド
パンはハード系ばかり(+焼菓子としてスコーン)。小麦やライ麦、ライ麦由来の発酵種、あとは塩と水(一部商品に酵母〈イースト〉)だけが生地の原料だから、店の中は麦だらけ。
さらに、パンを食べれば、口の中まで麦の香りでいっぱいになる。たとえば、カリフォルニア産の有機小麦「イェコラ・ロホ」を自家製粉した全粒粉100%のパン「全粒粉ハースブレッド」。濃厚な穀物の香りがする。大豆のようでも、粟(あわ)のようでも、里芋のようでも。ふにゃりと沈むやわらかな生地に、見事に散った気泡が軽やかさを与える。
自家製粉で挽(ひ)きたての小麦を使うことによる香りのフレッシュさ、高加水によるみずみずしさ、手ごねによるグルテンのやわらかさ。このパンは全粒粉をあらゆる手段でおいしく、食べやすくしているのだ。
扉を開ければ一年中、小麦の実りの季節/麦秋至
パンオフリュイ(左)とカンパーニュ
さらにもうひとつ、店主の大石旭さんが「すごく甘いんですよ」と取り出してきたサワー種。北海道十勝で栽培されるオーガニックライ麦全粒粉(アグリシステム)から起こしたもの。嗅いだことのないほど甘い香りが漂っていた。
「このライ麦と出会って、発酵種はすべてこれに変えました。以前はそんなにサワー種を使っていなかったのですが」
パンオフリュイは、このライ麦を60%使用した生地で作る。どこかで食べたことのある甘さだ。さつまいものような……いや、下手をしたらそれよりもっと甘いのではないか。まるで、スイートポテト(もちろん砂糖は入っていない)。ほとばしるレーズンやドライチェリーの甘酸っぱさがますます甘さを強調。ほろ苦い皮もスパイスのようで、パンデピス(はちみつとスパイスのパン)をも思わせた。
「ロスパンゼロ」のパン屋へ転換
オープンしたのは2年前。その前は、石川県で17年間もベーカリーをしていた。いちばんの売れ筋はやわらかい蒸しパンだというから今とは正反対。
「いっぱい作って、いっぱいロスになって捨てるパン屋さんでした。パンを捨てるのがいややな、苦痛やな。そう思っているときに、『捨てないパン屋』(広島県「ブーランジェリー・ドリアン」店主・田村陽至さんの著書)を読みました。こんなやり方できるんやって気づかせてもらいました」
扉を開ければ一年中、小麦の実りの季節/麦秋至
大石旭さん
たくさん作るのではなく、ハード系のシンプルなパンを厳選した小麦を使って焼く。発酵種を使うことで日持ちのするパンに。そうすることでロスパンゼロのパン屋に見事転換を果たした。
北海道産の「キタノカオリ」や「春よ恋」など、小麦はすべてオーガニックを使用。そのことで気づいたことがあった。
「以前は、生地を触ったあと手を洗わずにいると、生地の付着している箇所が荒れちゃう、そんな症状がありました。オーガニックにしてからはぜんぜん大丈夫です」
あくまで体験で、科学的エビデンスはないけれど、たしかにうなずける。麦秋至のパンは、どっしりしたハード系でも、えぐみもなく、喉(のど)の通りがいい。農薬や化学肥料を使用していないことと関係ありそうだ。
扉を開ければ一年中、小麦の実りの季節/麦秋至
店内風景
今年も麦秋を迎え、大石さんは地元・神戸市内の農薬・化学肥料不使用の生産者を訪ね、収穫の手伝いをした。そもそも石臼を導入したのも、地元産小麦を店で挽いてパンにできたらという思いから。だが、まだ生産量が少ないため、アメリカ産に頼らざるをえない。
「だんだん増やしていけたらいいなと思ってます。農家さんも『小麦を使ってくれるんやったら、がんばって作らなあかんな』と思ってもらえるでしょうし。近くで、知った人が作ってくれてるもの食べられるっていちばんの贅沢(ぜいたく)」
オーガニックは栽培にコストがかかるゆえ値段が高い。選択するのはパン屋さんにとっても楽ではないが、それでも思いを貫く。
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「食べ物って、よいものは意識的に残していこうとしないと安いほうに流れていってしまう。そういうものを残していこうという気持ちが大事だと思うんです」
扉を開ければ一年中、小麦の実りの季節/麦秋至
外観
残念ながら、日本の耕地面積はどんどん減り続けている。だが、こんなパン屋さんが増えれば、農薬や化学肥料を使わず小麦を作ろうという生産者が増えるかもしれない。麦秋という季語を身近で実感できる日本を取り戻したい。
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