https://www.bizmentor.jp/blog/201207a 【千利休の教え − その1−】より
「その道に入らんと思ふ心こそ我身ながらの師匠なりけれ」
茶道の祖である千利休の教えを百の歌としてまとめた、「利休百首」というものがあります。
上記の歌は、その一番最初に登場するものです。
茶の湯としての解釈
先ほどの歌を、現代の言葉で表すならば、「自らの意志で茶道を始めようと思う気持ちがあれば その人の心の中にすでに師匠ができている。」となります。
つまり、自らの意志で学ぼうと思う ‶心構えの大切さ“ を教えるものですね。
逆に言えば、自分で学ぼうとする志を持たないと、その上達は難しいと言えるのではないでしょうか。この歌は、茶道以外でも様々なシーンに当てはまりますよね。
日常シーンでの適用
新しいステージの入口に立つ人、新しい資格やスキルを身に付けようとしている人、それを自らの志として一歩を踏み出そうとしている人なら、すでにあなたの心の中には立派な師匠が存在していると言えます。また、いくつになっても、自分の心に新しい師匠を持つ事が出来る人は成長し続けることが出来るのではないでしょうか。
良き相談相手
実際に新しいステージに入った後は、様々な悩みや不安が訪れる事もあるでしょう。そんな時には、良き相談相手(上司、先輩、友人、先生、書物、など)がいると、さらに心強くなりますね。心の師匠が出来た後には、そんな相談相手を見つける事がもう一つの大事なポイントになります。もしも、そんな方が周囲にいなければ、メンターの活用を考えてみてはいかがでしょうか?
https://www.bizmentor.jp/blog/210107a 【千利休の教え − その2 −】より
「稽古とは一より習い十を知り 十よりかえるもとのその一」
千利休の教え、今回はこれを紹介したいと思います。「稽古を一から初めて十まで到達したら、また最初の一に戻って学びなさい」と言っています。
反復が大事
「十まで習ったからそれでよし」と考える人は、その時点で成長する事が止まり、その先にあるところには到達できない、との教えです。明日の命の保証のない戦国時代において、それでも反復の大切さを強く説いているわけですね。
反復の先
この歌の解釈はとりあえず以上なのです。しかし、それでは「読んだ。なるほど分かった。」と通り一遍で終わってしまいます。なので、反復の精神で、今一度、読み返してその先にある真意を考えてみたいと思います。反復は大事だが、単純に同じことの繰り返しなのでしょうか?一から十まで学び、また一に戻った時の景色って、きっと最初に見た一とは違っているでしょう。もとのその一に立ち返った時には、最初は気付かなかった事を見つける事が出来、その結果、さらに高いレベルの習得つまり成長に繋がっていくという風に解釈できます。
一期一会
また反復する事で、最初よりも洗練した動きが出来るようになります。茶道の場合は、それが茶室の中で主客の大切なひと時の醸成にもつながっていきます。何度も反復して身に付ける事で自分の成長につながりますが、それだけではありません。
そうやって習得したものが、一期一会となる亭主と客との真剣勝負で活きてくるのです。
(一期一会も、利休の言葉といわれています)
あなたが反復して習得するものは、どのような人が関わっていますか?
あなたが目指す目標と一緒に、しっかりと築くべき足元も見直してみて下さい。
新しい年、新しい年度の初めに、原点を考えて共に成長していきましょう。
https://www.bizmentor.jp/blog/210207a 【千利休の教え − その3 −】より
「炭置くはたとへ習ひに背くとも湯のよくたぎる炭は炭なり」
「炭の置き方にも決まった手順があるが、それよりも湯がきちんと沸くように、状況に応じて置かれた炭こそが炭としての役割をもつ」
この句、まさにミッション(目的)の大事さを表しています。
ミッション(目的)が大事
皆さんがイメージするお茶は、茶筅でお茶をシャカシャカと点てる場面ではないでしょうか。もちろんその場面が主役となりますが、その前に炭を置いて湯を沸かしておくことが絶対条件となります。
この炭を置くというのも、決まった手順を何度も繰り返して稽古するものです。
しかし、この句では、手順に固執するよりも、湯がわくように炭を置く事が大事であると言っています。
なるほど、当たり前ですね。だって湯が沸かないと始まりませんよね。
手順にうるさい(?)茶道ですが、この句はあえて手順よりもミッションの大切さを教えています。それだけ、強調したいという事ですね。
その会議のミッション(目的)は何?
例えば、あなたが開催した、その会議のミッション(目的)、つまり今日のゴールは何でしょうか?
あるいは、来週の商談のミッション(目的)は何でしょう、何が決まればいいですか? 合意の先は、あなたのミッション(目的)達成に近づいていますか?
その手順でいいの?
お茶の稽古で教わる手順は、四百年以上の歴史のうえに成立しているものですが、ミッション(目的)によっては、手順は変えてもいいと教えています。
ところで、あなたの仕事のそのやり方、手順を変えるとどうなります?
特に大きな成功体験などがあると、その手順が神聖なものになりがちです。ミッション(目的)の達成のためには、その手順を変えるのもありですよね。
ミッション(目的)の設定
もちろん、ミッション(目的)は、仕事だけではなく、生きていく上でも永遠の課題であったりしますね。
またミッション(目的)と一口にいっても、短期と長期では変わってくることもります。
本屋に行けば、ヒントを与えてくれる本がたくさん並んでいると思いますが、メンターに相談するのもお勧めです。ぜひ活用してみて下さいな。
https://www.bizmentor.jp/blog/210307a 【千利休の教え − その4 −】より
「何にても置付けかへる手離れは恋しき人に別るると知れ」
恋しい人との別れとは、はて、どういう意味でしょう。これは、「道具を置いた手をはなすときは、恋しい人と別れる気持ちのように、置いた道具に想いを残せ」という事です。
余韻を残す
余韻を残せと言われても、禅問答のごとくなかなか難しいものがありますが、恋しい人と別れる時の心残りと言えば、なるほどと一応の理解が出来ます。他に皆さんがイメージしやすいのは、武芸での残心ではないでしょうか。敵を倒した後、刀をすぐに鞘にしまうのではなく、一呼吸の間を置くだけで時が止まったような、そんな場面がありますね。
余韻の効果
それでは、道具一つ置くときに、そんな余韻を残す意味合いは何でしょう。
道具を置いた際に、この余韻を持たすことで、客の目線からも道具がしっかりと定位置におさまる落ち着きを感じ取ることが出来ます。
また、空間そのものに奥行も出て無限の味わいが生まれます。
利休は、単純な行為だからこそ、意識しなさいと言っているように思います。
日常での実践
毎度毎度、恋しい人との別れをしていては、なかなか難儀な事であります。そこで利休百首の中から、もう二つ紹介します。「手前には強みばかりを思うなよ強きは弱く軽く重かれ」
「点前には重きを軽く軽きをば重く扱う味わいをしれ」どちらも同じ意味で、重いものを扱うときは軽いものを扱う気持ちで、軽いものを扱うときは重いものを扱うような慎重な気持ちで。何気ない場面でも、軽いものは重いものを扱う気気持ちを意識してみてください。
おのずと余韻が生じ、リーダーとしてのあなた自身の風格もきっと良い効果に繋がると思います悩みや相談も、重たいものは思考を変えて解決しやすく、軽いものと思う中に大事な要素が隠れていたりします。メンターとの対話の中で、ちょっと立ち止まって探してみてください。
https://www.bizmentor.jp/blog/210407a 【千利休の教え − その5 −】より
私の自宅近くの戸田公園の桜は、コロナ禍だろうが今年も満開に咲き誇っていました。 「春は必ず来る」を実感です。今回は、そんな桜・花に関する首を2つ紹介します。
「花見よりかへりの人に茶の湯せば花鳥の絵をも花も置くまじ」花見から帰ってきた人には、茶の席で、花や鳥の絵も花も置かない茶の湯の席では、お客様を迎えるおもてなしとして、季節に応じた花鳥の軸を掛けたり、花そのものを活けたりします。
しかし、実際に花見というライブを楽しんできた方に対しては、どんなに頑張って桜に関する軸や桜そのものを飾っても、感動や面白みは小さいものになってしまいます。
また茶道では、重複する事を良としませんので、お花見後に桜を飾るという様なことを戒める首でもあります。
かといって、せっかくの桜の季節に、まったく無視するのも、ちょっと「ヒネクレ者」のようにも感じます。では、どうしたら良いのでしょうか。
例えば、花見での楽しい会話や、仲間との再会を喜ぶような軸を掛けたり、あるいは関連する道具を取り揃えたりすると、余韻が楽しめるのではないでしょうか。
ビジネスでも日常でも、創意工夫する意識を持っていたい、と感じさせる首です。
でも、お客様が花見をしているかなんて事は分からないのでは…?
少しでも構わないので、事前に調べるだけで色々な情報を得る事が出来ます。
私が講師を務める交渉学という学問でも、事前準備は大事だと教えられています。(いずれ紹介したいと思います)
「余所などへ花を贈らば其花は開きすぎしはやらぬものなり」
よそへ花を贈るときは、開きすぎの花は贈らない
庭に咲いている花がちょうど満開で見どころ100%なので(そのような立派な庭が自宅にあるかどうかは置いておくとして)、贈り物として渡したくなりますが、それはNGだと言っています。
連続性を意識してみてください。満開という事は、あとは萎んでいくだけです。
それよりも咲き始め~八分咲きの頃だと、美しくなる成長を楽しむ事が出来て、貰うほうも楽しいでしょう。
もちろん、そこはTPO、時と場合にによっては満開の花束を贈るほうがふさわしい時もあります。要は、相手の求めているものを提供しましょう!という事です。
また相手が気付いていないが、潜在的に求めているものを提供できるといいですよね。
悩んでいるメンバーに対して、正解の数歩前を提示して、正解には部下自身がたどり着くという事も、リーダーなら必要な配慮になるでしょう。
まとめ
Biz Mentor のメンター全員が保持しているコーチングスキルの質問も、「満開の花」ではなく、「満開に向かって成長していく花」のようなものです。
ぜひ、あなたが自身があなたの手元で、そのつぼみを満開にして下さい。
https://www.bizmentor.jp/blog/210507a 【千利休の教え − その6 − 聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥】より
誰もが知っていて意味も容易なことわざですが、新年度がスタートした今、利休の教えの一つとして改めて見てみよう。
「はじをすて人に物とひ習ふべし 是ぞ上手の基なりにける」
知らない事を恥ずかしいと思わないで、師匠に聞く事が上達には欠かせない 仕事をしていくうえでも、分からない事を聞くという事が、自身の為にも、組織のためにも有効であることは、異論は無いと思います。素直に質問する事ができていますか?
聞く事が大事だという事は、百も承知。まことに、その通り。その通りなのですが…。
あなたは、素直に質問する事が出来ていますか?もし、躊躇するとしたらその理由は何でしょうか。
つまらない自尊心が邪魔している場合が無いでしょうか? あるいは、上司や先輩へ対する遠慮もあるのでは?
私の場合も遠慮してしまいがちで、タイミングを見計らう事に神経を使ったりと、質問するという行動に出るのは、なかなか難しいと感じます。
メンバーはあなたに質問してくれていますか?
同じように、自尊心が邪魔したりとか、あなたへの遠慮だったりで、質問したいけれど、質問出来なくて困っているメンバーがいるかもしれません。
場合によっては、メンバーの成長の機会を潰してしまっているかもしれません。
ぜひ、聞く(聴く)スキルを身に付けて、メンバーが質問しやすい環境造りを意識してみて下さい。
まとめ
あなたが質問する時も、メンバーがあなたに質問する時も、質問して答えを得る事は、目標としている事に一歩前進するという事です。
仕事以外でも、質問して答えを得る(助言を得る)という事は、成長への一歩となります。 どんどん質問していきましょう。
https://www.bizmentor.jp/blog/210707a 【千利休の教え − その8 − じゃない方】より
今回は、利休百首の中から「じゃない方」に焦点をあてた歌を紹介します。
「右の手を扱ふ時はわが心 左の方にあるとしるべし」
「右手で動作をしている時は、左手はおろそかになる事があるので、その存在に意識を向けなさい。」
茶の湯で例えると、柄杓で湯を汲む時は右手を使いますが、その際に左手がだらりとしていては、緊張感を含む全体の美しさが損なわれます。
右手の動きが大事なのは当たり前ですが、左手の方にも神経を集中するようにしたいものです。
(ちなみに、茶道は右利き仕様なので、左利きの方は苦労してます。。。)
「じゃない方」は左手だけではない
この歌では、右手に対する左手を代表として表現しています。なので、茶を点てる際には目も耳も含めた五感を集中させる事が大事です。
では、皆さんの仕事の場面では、どんな「じゃない方」がありますか?
大事な商談やプレゼンの場面、当日の資料や話す内容はもちろん大事ですが、ここに至る事前の準備の方が本当は重要だったりします。
また、チームで進める仕事には、ヒーロー的な存在もいますが、きっと黒子に徹してくれたメンバーがいるからこそのヒーローだし、チームの成果には欠かすことの出来ない存在だったりします。
「じゃない方」を意識すると右手はより輝く
一方で、「じゃない方」を意識する事で、逆に今の充実度が高まるというのも期待できます。
私の習性なのですが、仕事でも遊びでも有意義な時間を過ごしていると感じる時は、その空間を俯瞰して自分の周りを眺めたり、その一連の行為の限られた時間軸全体をイメージしたりすることがあります。
すると、不思議な事に有意義と感じる今が、さらにパワーアップするという感覚になります。
まとめ
ぜひ、あなたも、周りにある「じゃない方」の存在を意識してみてください。
自分やチームの立ち位置の再認識に役立つはずです。
https://www.bizmentor.jp/blog/210807a 【千利休の教え − その9 − シンプルだけど】より
これまで紹介してきた利休百首は、茶道の精神や点前作法の心得などを、初心者にも分かりやすく憶えやすいように歌にまとめたものです。
点前作法については、「道具は畳の目に沿って置け」、「特定の茶入れは横から持て」、「柄杓で湯を汲む時は九分目まで」と、結構細かな事を言っています。
流石に、そのような事ばかり言われ続くと、場合によっては嫌気がさしてきたりします。
しかし、後半の98番目に次のような歌があります。
「茶の湯とはただ湯を沸かし茶を点てて飲むばかりなる事と知るべし」
シンプル、単純明快です。 「茶の湯は、湯を沸かして、茶を点てて飲むだけの事」なのです。うん、これなら私でも出来る。さっそく今日からでも千利休の教えを実践出来る気になりますね。
100番中98番目の意味
でも冷静になると、この歌は98番目(後ろから3番目)にある事に気づきます。
そうか、97番目までしっかりと稽古してきたから、身に付けてきたからこその歌なんだと。
シンプルな歌の背景にある、精神と作法の両面の積み重ねの大切さを感じ取れます。
品質は一定に保たれていますか
湯を沸かしてお茶を点てるだけの事ですが、今日も明日も同じレベルで出来るでしょうか。
実際、お茶を点てる時は、気温や湿度をはじめ、道具の取り合わせや、お菓子との相性、もちろんお客様の状態に合わせた心配りが大事な要素になってきます。
日々の仕事も常に同じ条件であることは少ないでしょうが、それでも一定レベルの品質を保つには、やはり日々の積み重ねが大事になります。
積み重ねの大切さを実践すると同時に、メンバーに対しての助言でも役立てください。
https://www.bizmentor.jp/blog/210907a 【千利休の教え − その10(最終回) - 守・破・離】より
千利休の教えシリーズも、その10で最終回です。
第1回目は、一番目の歌を紹介しましたので、最終回は最後の歌を紹介致します。
「規矩作法 守り尽くして破るとも離るるとても本を忘るな」
「きくさほう まもりつくして やぶるとも はなるるとても もとをわするな」 「守破離」の語源となった歌です。
最近はビジネスシーンでも目にする事がありますので、知っている方も多いかと思います。
「守」守るべき・学ぶべき基本の型を徹底して身につける
「破」自分自身の創意工夫で、自分にあった型を模索する
「離」自分のオリジナルな型を確立する
でも、忘れてはいけない大事な事があります。
守・破・離 その本(基本精神)
「本」無くして「守破離」は存在しません。 つまり、「守・破・離 based on 本」ですね。
利休百首の最後の歌、最後の言葉が「本を忘るな」で締めくくられている事に大きなメッセージを感じ取る事が出来ます。
あなたの「本」は何か
ビジネスにおいては、初めから「離」オリジナルの型で勝負する場面もあります。
しかし、それでも「基本精神」は重要で、困難な事がおきた場合の拠り所になるものです。
あなたにとっての基本精神は何でしょうか? どのような基本精神を持って、仕事に取り組んでいくのでしょうか?
私自身もそうなのですが、意外と明確に答えられないものです。
だからこそ、たまには考えてみませんか。
この歌は、茶道なのでの芸事や武道だけではなく、会社の仕事や生活の上でも、通ずるものです。
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