https://www.yomiuri.co.jp/culture/20240916-OYT1T50032/ 【エミー賞席巻の「SHOGUN 将軍」はなぜこれほどアメリカで評価されたのか…背景に多様性の受容と字幕慣れ】より
主人公の虎永を演じた真田広之さん(左)と、英国人航海士の通訳・鞠子役のアンナ・サワイさん(Courtesy of FX Networks)
15日(現地時間)に発表されたエミー賞を、日本が舞台の時代劇「SHOGUN 将軍」が席巻した。なぜこれほど米国で評価されたのか。ハリウッド在住の映画ジャーナリスト、猿渡由紀さんに受賞の背景を聞いた。
「SHOGUN 将軍」で覇権争いを演じる武将、虎永(真田広之)(Courtesy of FX Networks)ディズニープラスの「スター」で独占配信中
「将軍」の成功は、最近の米国のエンターテインメント界の状況を反映している。
同じくジェームズ・クラベルの小説を原作とするテレビドラマは1980年に放送されて人気になり、米国では今でも中高年層によく知られている。リメイクの話は何度も出ていた。
幸運だったのは、オールアジア人キャストの映画「クレイジー・リッチ」や、韓国の配信ドラマ「イカゲーム」、米アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」が大ヒットしたこと。米国でなじみのない人たちが出演している作品が、広く受け入れられた。
ハリウッドでは、「白人は白人の作品しか見たくなく、米国人は字幕が嫌」という価値観が大勢を占めていた。しかし最近の若者は「面白ければ見る」というオープンなスタンス。特に大都市では学校に様々な人種の友達がいるので、白人以外の俳優たちが多数出演していても抵抗感はない。字幕作品にも慣れてきた。
米国のエンタメ業界では今や多様性は常識で、無視すると批判される時代になった。テレビ界は映画界より自然な形で多様化していたが、2016年には米映画アカデミーが本気で多様化への努力を開始。アカデミー会員に女性や非白人を増やし、ハリウッド作品に多様な俳優が登場するようになってきた。そしてそれらの多くは成功している。
作品の質には自信はあっただろうが、制作陣にとって、より良い環境が整ってきていたといえる。製作したディズニー傘下の「FX」は創立以来最大の予算をかけたとされている。
とはいえ、「将軍」がエミー賞を席巻したのは、物語が面白かったからに尽きる。世界的に人気となったドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」を想起させるような 熾烈しれつ な権力争い、かけひきがあった。細部の美術や日本の描写は素晴らしかったが、物語自体がつまらなければ、視聴者はこれほどまでに魅了されなかっただろう。
https://disneyplus.disney.co.jp/news/2024/0917_shogun_emmy#:~:text=9%E6%9C%8815%E6%97%A5%EF%BC%88%E7%8F%BE%E5%9C%B0,%E5%BF%AB%E6%8C%99%E3%82%92%E6%88%90%E3%81%97%E9%81%82%E3%81%92%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BC%81 【真田広之主演ドラマ『SHOGUN 将軍』がエミー賞史上最多18部門受賞!】
真田広之がプロデュース・主演を務めるFXのドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』はディズニープラスの「スター」にて全話見放題で独占配信中です。9月15日(現地時間)、米国テレビ界の“アカデミー賞”ともいわれる最高峰の賞「第76回エミー賞®」の授賞式が行われ、この度、『SHOGUN 将軍』が、作品賞・主演男優賞・主演女優賞をはじめとした主要部門を総なめし、エミー賞史上最多18部門を制覇、内、日本人の受賞者も史上最多9名となる歴史的な快挙を成し遂げました!
SHOGUNがエミー賞史上最多の18部門を受賞!作品賞、主演男優、主演女優他 主要部門総なめ制覇!
本作は、同賞のドラマシリーズ部門にて、主要部門を含む本年度最多25ノミネートを記録。キャスト陣に加え、スタッフ陣も数多くノミネートを果たし、史上最多11名の日本人がノミネート。先日発表された、主に製作・技術に携わった人々に贈られる「クリエイティブ・アーツ・エミー賞(Creative Arts Emmy Awards)」では、7名の日本人を含む、最多14部門を受賞するなど、主要部門の授賞式を前に同賞を席巻。この時点ですでに史上最多受賞作品となり、本日のエミー賞主要部門の発表で、どこまでその最多受賞記録を伸ばすのか、その行方に世界中が注目をしていた。
その結果、競合作品がひしめく中で【作品賞】を堂々の受賞。本作でプロデューサーを務め、徳川家康にインスパイアされた武将・吉井虎永を重厚に演じた真田広之が、【主演男優賞】を獲得。これは、1980年にドラマ化された『将軍 SHŌGUN』で、主演を務めた三船敏郎が受賞を逃していた賞で、真田が悲願の受賞を成し遂げる形となった。
更には、英国人航海士<按針>通詞であり、虎永のもとで戦乱の世を8強く生き抜いた鞠子役アンナ・サワイが【主演女優賞】。そのほかにも【監督賞】を受賞するなど、主要部門も軒並み制覇し史上最多18部門を受賞と最多受賞記録を更新。まさにSHOGUNが堂々の天下獲りとなった!
第76回エミー賞®『SHOGUN 将軍』受賞一覧
①作品賞/OUTSTANDING DRAMA SERIES
➁主演男優賞/LEAD ACTOR:真田広之(Hiroyuki Sanada)
③主演女優賞/LEAD ACTRESS:アンナ・サワイ(Anna Sawai)
④監督賞/DIRECTING:フレッデリック・E・O・トーイ/Fredrick・E・O・Toye 第9話「紅天」
⑤撮影賞/CINEMATOGRAPHY:サム・マカーディ/Sam McCurdy 第9話「紅天」
⑥編集賞/PICTURE EDITING:マリア・ゴンザレス/Maria Gonzales、三宅愛架(Aika Miyake)
⑦ゲスト男優賞/GUEST ACTOR:ネスタ―・カルボネル/Nestor Carbonell
⑧キャスティング賞/CASTING:ローラ・シル/Laura Schiff、キャリー・オーディノ/Carrie Audino、川村恵(Kei Kawamura)、モーリーン・ウェブ/Maureen Webb、コリーン・ボルトン/Colleen Bolton
⑨プロダクションデザイン賞/PRODUCTION DESIGN:ヘレン・ジャービス/Helen Jarvis、クリス・ビーチ/Chris Beach、リサ・ランカスター/Lisa Lancaster、ジョナサン・ランカスター/Jonathan Lancaster
⑩音響編集賞/SOUND EDTING:ブライアン・J・アームストロング/Brian J Armstrong、ベンジャミン・クック/Benjamin Cook、ジェームズ・ギャリバン/James Gallivan、ジョン・クリード/John Creed、山内あや子(Ayako Yamauchi)、マーク・ヘイルストーン/Mark Hailstone、ケン・カイン/Ken Cain、メリッサ・ムイク/Melissa Muik、マット、サリブ/Matt Salib、サナー・ケリー/Sanaa Kelley
⑪音響賞/SOUND MIXING:スティーブン・ペターソン/Steve Pederson、グレッグ・P・ラッセル/Greg P. Russell、マイケル・ウィリアムソン/Michael Williamson、赤工隆(Takashi Akaku)、アルノ・ステファニアン/Arno Stephanian
⑫視覚効果賞/SPECIAL VISUAL EFFECTS:マイケル・クリエット/Michael Cliett、メロディ・ミード/Melody Mead、ジェド・グラスフォード/Jed Glassford、キャメロン・ウォルトバウアー/Cameron Waldbauer、フィリップ・エングストローム/Philip Engström、チェルシー・ミルス/Chelsea Mirus、エド・ブルース/Ed Bruce、ニコラス・マーフィー/Nicholas Murphy、カイル・ロットマン/Kyle Rottman
⑬スタント・パフォーマンス賞/STUNT PERFORMANCE:南博男(Hiroo Minami)、帯金伸行(Nobuyuki Obikane)、マーティン・コーチンコ/Martin Cochingco、ジョンソン・ファン/Johnson Phan
⑭メインタイトルデザイン賞/MAIN TITLE DESIGN:ナディア・ツオ/Nadia Tzuo、シャオリン・ツェン/Xiaolin Zeng、アレックス・シルバー/Alex Silver、リー・バックリー/Lee Buckley、イリヤ・ツェリューチン/Ilya Tselyutin、エヴァン・ラリモア/Evan Larimore
⑮メイクアップ賞 歴史劇&ファンタジー/PERIOD OR FANTASY/SCI-FI MAKEUP:レベッカ・リー/Rebecca Lee、クリスタル・デブリン/Krystal Devlin、アンバー・トルドー/Amber Trudeau、アンドレア・アルカラ/Andrea Alcala、レスリー・グラハム/Leslie Graham、クリスタ・ハン/Krista Hann、マイク・フィールズ/Mike Fields、エミリー・ウォルシュ/Emily Walsh
⑯衣装デザイン賞/PERIOD COSTUMES:カルロス・ロサリオ/Carlos Rosario、キャロル・グリフィン/Carole Griffin、クリステン・ボンド/Kristen Bond、田中謙一(Kenichi Tanaka)、ポーラ・プラチ/Paula Plachy
⑰ヘアースタイリング賞/PERIOD OR FANTASY/SCI-FI HAIRSTYLING:サンナ・セッパネン/Sanna Kaarina Seppanen、マライア・クローリー/Mariah Crawley、マディソン・ガレスピー/Madison Gillespie、ナクリー・ケ オ/Nakry Keo、ジャニス・ベッケリング/Janis Bekkering
⑱プロステティック メイクアップ賞/PROSTHETIC MAKEUP:トビー・リンダラ/Toby Lindala、ブリー・アンナ・レトー/Bree-Anna Lehto、スージー・クリマック/Suzie Klimack
※その他、ドラマシリーズ部門以外では、短編部門のノンフィクション/リアリティシリーズ賞にて、特別番組「The Making Of Shōgun」も受賞
受賞コメント
◆真田広之:プロデューサー/吉井虎永役(作品賞、主演男優賞受賞)
※主演男優賞受賞時のコメント (英語スピーチより翻訳)
「この場に立てる事を誇りに思います。奇跡です。
FX、ディズニー、Hulu、ありがとう。クルーとキャストの皆様、SHOGUNに関わってくれた皆様、 最後まで私を信じて、サポートしてくれてありがとう。
本作は東と西が(壁を越えて)出会う夢のプロジェクトでした。とても難しいプロジェクトでしたが、全員が一致団結しました。
私たちは全員で奇跡を作る事ができました。そして我々は共により良い未来を作ることができます。 本当にありがとう!」
※作品賞受賞時のコメント (エグゼクティブ・プロデューサーのジャスティン・マークスよりマイクを渡されて日本語で)
「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々そして監督や諸先生方に心より御礼申し上げます。 あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り国境を越えました。」
※受賞後のコメント
「この度のエミー賞受賞、大変光栄です。『SHOGUN 将軍』のスタッフ・キャストと分かち合いたいと思います。また、子役の頃からお世話になった全ての方々、そして支えて頂いたファンの皆さんに、あらためて感謝いたします。
これを励みに、今後も俳優として新たな挑戦を模索しながら、日本の素晴らしい題材や才能を世界に発信して参りたいと思います。 ありがとうございました。」
◆アンナ・サワイ:鞠子役(主演女優賞受賞)
※主演女優賞受賞時のコメント (英語スピーチより翻訳)
「名前が呼ばれる前から泣いてしまっていました。
テレビジョン・アカデミーの皆様、素晴らしい賞をありがとうございます。
すばらしい候補者の皆さん、ありがとうございます。私は皆さんを観て育ちました。FXのチームもありがとうございます。ジャスティン(マークス)とレイチェル(コンドウ)、私を信じて、素晴らしい役をくれてありがとう。
クルーとキャストのひとりひとりの皆さん、そして真田さん、彼は私のような俳優ににドアを開いて、チャンスを与えてくれました。コズモ(ジャーヴィス/按針役)、あなたは私が知る最も正直で誠実で恐れ知らずな、俳優です。あなたのおかげで私は120%の力を出すことができました。今まで支えてくれたお母さんありがとう。あなたのおかげで、私は鞠子を演じて、今、ここにいることができました。この受賞はすべての女性のためのものです。」
『SHOGUN 将軍』ディズニープラス「スター」にて全話独占配信中!
【あらすじ】
戦国最強の武将・虎永は、覇権を狙う五大老と敵対し命をかけて戦う武将。彼に敵の包囲網が迫っていたある日、英国人航海士、ジョン・ブラックソーン(後の按針・コズモ・ジャーヴィス)が虎永の領地へ漂着する。虎永は、語学に堪能でキリスト教を信仰する戸田鞠子(アンナ・サワイ)に按針の通訳を命じ、次第に按針と鞠子の間には固い絆が生まれ始める。一方で按針を利用して窮地を脱する虎永だが、按針から世界を見聞きし、幾度も命を救われることで侍の地位に取り立てることに。そんな中、五大老の脅威が次々に迫り、ついには絶体絶命に追い詰められる虎永。しかし彼の勝利への種まきは按針の漂着からすでに始まっていたーー。虎永の壮大なる謀り事、果たして彼は、按針と共にこの乱世を制することができるのか⁉
■エグゼクティブ・プロデューサー:ジャスティン・マークス、レイチェル・コンドウ、ミカエラ・クラベル
■監督 :第1話・第2話 ジョナサン・バン・トゥレケン/第3話 シャーロット・ブランドストーム/第4話・第5話・第9話・第10話 フレデリック・E・O・トーイ/第6話 ヒロミ・カマタ/第7話 福永荘志/第8話 エマニュエル・オセイ=クフォー
■出演 :真田広之、コズモ・ジャーヴィス、アンナ・サワイ、浅野忠信、平岳大、西岡德馬、二階堂ふみ、阿部進之介 他
●書籍情報
原作本「将軍」全4巻 全世界で1500万部以上売れた大ベストセラー、ここに復刊!
著者:ジェームズ・クラベル 出版社:扶桑社
1~4巻発売中。
●サントラ情報
SHOGUN 将軍(オリジナル・サウンドトラック)配信中。
アーティスト:アッティカス・ロス、 レオポルド・ロス、ニック・チュバ
ピクサー・アニメーション・スタジオ製作『ソウルフル・ワールド』の音楽を手掛けたアッティカス・ロスやレオポルド・ロス、ニック・チュバによるスコアを収録。各楽曲の編曲は日本でも稀有な雅楽作曲家・音楽プロデューサーとして活動する石田多朗が担当。
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