file:///C:/Users/minam/Downloads/IPSJ-CH02056001.pdf 【コミュニケーション・メディアとしての俳句を通じた共感形成 に関する一検討】
ある日あなたの娘が 荷物をまとめて子どもと一緒に泣きながら帰ってきて
「夫とはもう一緒にやっていけない、これからは自分だけで生きていくつもりだ」と興奮して宣言したとします。
あなたはどのように援助をしますか?
離婚しないように働きかけるのでしょうか?
よき理解者として 娘の決断をサポートするのでしょうか?
そんな場面に出会ったある母娘の一例を紹介します。
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母は和多志に半分に折った紙切れを渡し、左側に夫のダメなところを全て書き出すよう勧めました。
和多志は自分をイライラさせる夫のダメな部分を しらみつぶしに探し、書き出しました。
テレビばっかり見る。趣味が合わない。脱いだ服を片付けない。どこに行くか言わずに出かけてしまう。濡れた手を洋服で拭く。貧乏。白いものと色物を分けずに洗濯してしまう。乱雑。何か和多志に隠し事をしてる。和多志のことをかまってくれない・・・リストは続きました。
書き終わってみると、先ほどまでの興奮は和らいでいました。
『で、お母さん、次は彼の良いところを書けば良いんでしょ?』
母は言いました。『右側には、彼のダメなところに接したとき、あなたがどんな風に反応したか書いてみて。どんな風に感じた?本当はどのようにしてほしかった?どう対応した?どのように対応するのがベターだった?』
これは難しかった。自分のことをひっくり返してよく見てみなければならなかったからです。今までのことをいろいろ思い返して、夫の行動に対して自分がどんな反応をしたか書き始めました。
責めた。嫌悪感いっぱいで夫のことを見た。夫に怒りをぶっつけた。泣いた。ヒステリックになった。情けなく思った。夫を怒鳴りつけた。無視した。夫とは理解しあえないと思った。夫は自分とは違う人種だと思った・・・次から次へと出てきます。
書き終えると母がやってきて、紙切れを2つに切り離しました。母は夫のダメなところが書いてある半分を取って、もう片方を和多志に渡しました。
『ゆっくりおやすみなさい。朝になったら自分がここに書いたことをもう一度考えて 本当に離婚するのが良いか否か考えてみて。そこに書いてあるあなた自身のこと、もう少し良くなるように頑張ってみることができるかどうか 自分に尋ねてみるの。それでもまだ別れたいと思うんだったら、ここに戻ってきなさい。いつでも助けてあげるからね』
翌朝、夫の“ダメなところ”なしで和多志のリストを読み返してみると、そこにいかに不快なことが書かれているのか氣がつきました。
和多志がどれほどひどい振る舞いをしていたかわかったのです。
夫の“ダメなところ”には 敏感に反応し 夫が自分好みの 人間にならないことにいら立ち怒り この結婚生活に終止符を打ち、息子から父親を取り上げてしまおうとしていた自分に愕然としました。
彼の行動ではなく、それに和多志がどう反応するかが大切だった。この氣づきは、和多志の人生を変えてくれました。
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カウンセリングでは 過去と相手と客観的出来事を変えることができないと考えます。
変えることができるのは自分の対応。
http://www.asahi-net.or.jp/~nu3s-mnm/kaunnserinngu.html
https://ameblo.jp/197001301co/entry-12585924318.html 【マインドフルネスと俳句〜遠い未来を近づける】より
俳句をやる効果、として最近興味深い研究を目にした。
関西福祉科学大学 島井哲志教授による「マインドフル俳句~俳句をマインドフルネスのツールとして使うために」(2019年9月)。
「マインドフルネス」とは「今ここ」に集中することによって自己の存在を実感し、身心両面に良い効果を期待する概念。
その実践法に「瞑想」があるが、俳句も同等の効果が期待できるというこの科学的視点は、俳句をやる私たちに大いなる期待をもたらす。
「その日の獲物を追う事だけ」
に集中していればよかった原始の頃に比べて、
私たちには未来に達成しなければならない課題が多く、
「未来が遠い」状態だ、という見方がある。
その為、不安になる人も多いという。
マインドフルネスの観点から考えれば、不安の解消のためには「小さな目標」を設定し「今に集中すること」だという。
その「こま切れ」の目標をひとつずつ達成することで「遠い未来を近づける」ことが可能になるのだ。
「小さな目標」―確かに俳句はこれに匹敵するかもしれない。
俳句実作者の私自身、作句に集中することで得られる精神的安定感は日々実感するところだ。
人間は「今ここ」に集中することによって、ホルモンバランスが保たれ、安定した精神状態になるという。
瞑想などを実践することで「オキシトシン」という母親が授乳の際に出す「幸せホルモン」の分泌が盛んになり、ストレスを受けた時上昇する「コルチゾール」が減少するという。
この時代に「俳句」をやる、という行為の小さくて大きな効果を思う。
俳句を詠むことで、私たちは「遠い未来」を自らの手で近づけることが出来るのかもしれない。
俳句という小さな器の大いなる力を信じたい。
(「宮城県現代俳句協会NEWS」№40巻頭エッセイより転載)
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