ふるさとの水をのみ水をあび 種田山頭火

ふるさとの水をのみ水をあび 種田山頭火


https://www.aqua-sphere.net/literacy/t/t03.html 【利き水の名人でもあった山頭火】より

漂泊の俳人、種田山頭火(1880-1940)は、別名「水のみ俳人」と呼ばれていた。

家業の酒造業が破産して一家離散、やがて仏門に帰依し、放浪生活を続けるなか、水しか飲めない日々が続いたという。

その様子は、「貧しさは水を飲んだり花を眺めたり」「腹いつぱい水を飲んで来てから寝る」「何を考えるでもない冬夜闇が空腹水の音」という句からもうかがえる。

一方で、山頭火は利き水の名人でもあり、超軟水を好んだ。

これは広島国際学院大学の佐々木健教授の研究でわかったことだ。

佐々木教授はコンピューターによる名水鑑定法を開発し、学生とともに全国約200か所で水質調査を行なっていた。

そのとき「名水の里」と呼ばれる場所で、山頭火の句碑に出合うことに気づいた。

山頭火は日々水を飲んでいたはずだが、句を残したところと、そうでないところがある。

もしかすると、気にいった水に出合ったときだけ句を残したのではないか。

その水の共通点とは何か。

山頭火の残した句、日記の記述などから、実際に口にしたと推測される25か所の水をくみ、PH(ペーハー)、硬度などの成分を分析した。

その結果、いずれもミネラル分の少ない軟水ぞろいで、山頭火が生まれ育った防府の水によく似たものだったという。

山頭火は、「ふるさとの水を飲み飲み水を浴び」(防府)という句を残している。

水のうまさは一定の基準を超えると個人の嗜好に左右されるものだ、と僕は思っている。

とくに、このことを知ってからは、人は長年飲み慣れた水を格別にうまいと感じるようになるのではないかと思うようになった。

そんな山頭火が、「飲みたい水が音たてていた」と詠んだのが、長野県下伊那郡清内路村の水だ。この句から山頭火が「飲みたい水」を「音」で判断していたとわかるのだが、山頭火の「きき水」とは、味をきく 香りをきく 音をきくの3つをあわせもつ。

晩年には、水の音を聴いただけで、味や香りまでわかったそうだ。

おそらく水と石や岩のぶつかる音で水質を見極めたのではないか。

ミネラル分の豊富な硬水の流れる場所では、石や岩の表面に苔が付着しやすく、水の音はやわらかくなる。

一方、軟水の場所では苔が付着しにくく、水音がはっきりする。

山頭火の好みの超軟水の場所では、水が直接、岩や石とぶつかり、あざやかな音を奏でていたに違いない。


http://www.kumamotokokufu-h.ed.jp/kumamoto/bungaku/santouka4.html 【種田 山頭火たねだ さんとうかが残した「水に関する俳句」】より

 私たちが収集した山頭火の俳句1000余りの中に、水を詠んだ句がちょうど100句ありました。山頭火が詠んだ句は8万4千句とも言われていますので、水に関する句は1万句ほどあるかと思います。ちなみに前述の1000句に、酒の句はわずか10句ほど、酒好きで知られた山頭火ですが、俳句の数では圧倒的に水の句が多いようです。酒以上に水を愛したのでしょう。水にもいろいろありますが、歩きつかれ乾ききったのどを潤す水はまさに格別。本校の強歩会の救護所で飲んだ水、本当に美味かった!放浪の俳人、旅人山頭火だからこそ、酒より水の美味さ、水の有り難さを感じていたのでしょう。だから、水を詠んだ句を多く残したのでしょう。美味しい水が至る所にある熊本を第2の故郷とした理由もその辺りにあるのかも知れませんね。

 山頭火が残した水に関係する俳句の中から幾つかをここに紹介。「この句を!」など,ご要望がありましたらご連絡ください。

 

1 あすのあさの水くんでおくかなかな   2 あすの水くんでをく棗なつめはまだ青い夕空

3 あちらむいて石仏が水のそば      4 あるいて水音のどこまでも

5 うしろから月のかげする水をわたる   6 うまいといえばくんでくださる水のしみいる

7 うまい水の流れるところ花うつぎ    8 おだやかに水音も暮れてヨサコイヨサコイ

9 おばあさんが自慢する水があふれる   10 けさは水音もよいたよりでもありさうな

11 こゝに住みたい水をのむ        12 ここまでを来し水飲んで去る

13 ここや打留うちどめの水のあふれている 14 こころおちつけば水の音

15 こんなにうまい水があふれている    16 ぬれてしつとり朝の水くむ

17 ふとおもひでの水音ばかり       18 ふるさとの水をのみ水をあび

19 へうへうとして水を味ふ        20 ほんによかつた夕立の水音がそこここ

21 ほんのり咲いて水にうつり       22 めうとで水汲くむ青田あをあを

23 もらうてもどるあたたかな水のこぼるるを  24 やつと汲みあげる水の秋ふかく

25 よい水音の朝がひろがる        26 飲みたい水が音たてていた

27 雨を受けて桶おけいつぱいの美しい水  28 炎天かくすところなく水のながれくる

29 音たかく朝の水を汲みあげては行く   30 岩かげまさしく水が湧いている

31 汲みあげる水のぬくさも故郷ふるさとこひしく  32 月のあかるい水汲んでおく

33 月は見えない月あかりの水まんまん   34 行き暮れてなんとここらの水のうまさは

35 山からしたたる水である        36 山のけはしさ流れくる水のれいろう

37 山のふかさはくちづけでのむ水で    38 山の花は山の水に活けてをき

39 山の水はあふれてあふれて       40 山ゆけば水の水すまし

41 山柿たわわ水にうつりてさらに赤く42 山茶花さざんかさいてお留守の水をもらうてもどる

43 字幕消えてうまさうな水が流れる流れる  44 秋の水をさかのぼりきて五重の塔

45 秋の夜ながれくる水のまんなかを汲む   46 秋ふかい水をもらうてもどる

47 春が来た水音の行けるところまで     48 春の水の流るるものを追つかけてゆく

49 食べるものがなければないで涼しい水    50 水が濁つて旅人をさびしうする

51 水にそうていちにちだまつてゆく      52 水に影ある旅人である

53 水ぬるむ冬眠の鯉こいうごきはじむ     54 水のうまきを蛙かえる鳴く

55 水のまんなかの道がまつすぐ        56 水もころころ山から海へ

57 水をへだててをとことをなごと話が尽きない 58 水音けふもひとり旅ゆく

59 水音のよいここでけふは早泊り       60 酔よひざめの水をさがすや竹田の宿で

61 雪のしたゝる水くんできてけふのお粥かゆ  62 谷の紅葉のしたゝる水です

63 誰にも逢はない水音のおちてくる      64 朝から水をのむほがらかな空

65 朝の水くみあげくみあげあたゝかい 66 朝の水はつらつとしていもりの子がおよいでゐる

67 朝早く汲みあげる水の落ち葉といもりと

68 南無観世音なむかんぜおんおん手したたる水の一すぢ

69 父子ふたり水をながめつ今日も暮れゆく    70 分け入れば水音

71 墓に護摩ごま水をわたしもすすり       72 落葉ふかく水汲めば水の澄みやう

73 立ちどまると水音のする方へ道        74 霽はれて元日の水がたたへていつぱい

75 鴉からすとんでゆく水をわたらう

コズミックホリステック医療・現代靈氣

吾であり宇宙である☆和して同せず  競争でなく共生を☆

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