https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202004/202004_08_jp.html 【「和ハーブ」の恵み】より
日本では、「和ハーブ」と呼ばれる植物が人々の暮らしの様々な場面で使われ、人々の生活を支えている。
ヨーロッパや東南アジアなどでは、ミントやローズマリー、パセリ、パクチーなどのハーブ文化があり、料理の香りづけやアロマテラピーなどに古くから利用されている。日本においても古くから伝わるハーブ/スパイス文化があり、代表的なものとしてはシソ、サンショウ、ショウガ、あるいは日本独自のミツバ、ワサビなどがある。またヨーロッパなどと同様に、ミント(和名=ハッカ)、パセリ(和名=シャク)、エルダー(和名=ニワトコ)なども有用される。
一般社団法人和ハーブ協会は、江戸時代以前より広く日本に自生あるいは栽培されてきた有用植物を「和ハーブ」と定義しているが、同協会理事長の古谷暢基さんは、和ハーブの魅力は料理活用にとどまらないと言う。「国土が南北に長く高低差の多い地形の日本は、植生が多種多様に富んでいます。先人たちはそのたくさんの植物から様々な恵みを受けてきました。日本の伝統的な暮らしをみると、いかに衣食住の全てが植物で彩られていたか、よく分かります」
木造の日本家屋は、障子などの建具にコウゾやミツマタの繊維から作る和紙を用い、畳は吸湿放湿性に優れ香りも良いイグサが使われる。籠などの生活雑貨には、稲わらやタケ、ヤマブドウなどのつるを利用した。麻の繊維からは布が織られ、それらは「ジャパン・ブルー」と称されるアイを始め、ベニバナ、アカネ、シソなどの植物で色とりどりに染められた。これらの色素には、抗菌作用や防虫効果があるとされるものが多い。
「日本は世界一の長寿国で知られますが、その秘密が日本の土壌に育った和ハーブを昔から食事や薬草として摂取していることにあると私は考えています。和ハーブには幾つもの有用成分が含まれていて、花、葉、茎、根、果実、樹皮と全草を様々な用途に利用します。その成分を活用する文化はすなわち“それぞれの土地に伝わる知恵”であり、現代の日本人の生活にもその知恵を復活させ、活かすべきかと思います」と古谷さんは話す。
例えば、全国には「包み葉文化」ともいうべき、葉の成分を活用した伝統食文化が存在する。例えば、カキノキやクマザサの葉で鮨を巻いたもの、サクラ、カシワ、ミョウガ、ゲットウなどの葉で餅菓子を巻いたものなどである。これらの葉には防腐効果があるだけでなく、葉の香りで風味が増す効果もある。また、入浴にも和ハーブは取り入れられていて、12月の「冬至」と呼ばれる昼の時間が最も短い日には、血行を良くし身体を温める効果のあるユズ、子供の健やかな成長を祈る5月5日の「端午の節句」には香気があり健康にも良いと言われるショウブというように、各家庭で季節ごとの和ハーブを浴槽に浮かべる習慣が根付いている。
和ハーブを薬そのものとして用いた歴史も長い。古谷さんによれば「日本5大和薬」と呼ばれるゲンノショウコ、ドクダミ、センブリ、カキドオシ、タラノキは、その代表で、胃腸薬や解毒剤に使われてきた。ヨモギや、ビワの葉を使ったお茶は、心身をリラックスさせる効果があるとして今も親しまれている。
「近頃は数種類の和ハーブをミックスしたお茶を飲むといった楽しみ方もされるようになりました。和ハーブの多くは身近にある植物ですが、宝物のような存在と言えます。伝統に学びながらも、今の生活に合うように取り入れれば、私たちの毎日はもっと豊かなものになると思います」と古谷さんは語る。
https://www.axa.co.jp/100-year-life/health/20180808/ 【ただの雑草ではなかった!?「和ハーブ」で健康的な生活を】より
「ハーブ」というと、バジルやローズマリーといった海外由来のものを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。実際に日本でハーブ料理やアロマテラピーなどで扱われているものは、ヨーロッパや東南アジア由来のものがほとんどです。
しかし、これらの植物は、ごく最近に日本に導入されたもの。じつは、日本にも古くから使われてきた「和ハーブ」というものがあるのです。「シソ」や「ミツバ」などもそのひとつ。私たちの祖先は、昔から日本に生息する和ハーブをうまく生活に取り入れてきました。
「人生100年時代」と言われる今、これからの長い人生に、そんな和ハーブを活用してみるのはいかがでしょうか。
「和ハーブ 」って何?
「和ハーブ」という言葉を初めて聞く人も多いかもしれません。
一般社団法人 和ハーブ協会では、在来種(日本原産)、あるいは江戸時代以前より日本に自生したり、広く一般に活用されてきた有用植物を「和ハーブ」と定義しています。料理によく使われるシソ、ミツバ、サンショウ、ワサビ、そして緑茶の原料である「チャノキ」も和ハーブです。
また、お茶やアロマテラピーなどでも人気のユズやハッカ、建材として使われてきたスギやヒノキ、そして伝統工芸として使われてきたウルシも昔から日本で使われてきた和ハーブと言えます。
そして、ただの雑草と思われているかもしれませんが、足元に生えているドクダミやヨモギ、オトギリソウ、スギナなども、じつは立派な和ハーブなのです。
雑草と思われていたあの植物が宝物!?意外な和ハーブ活用法
「ドクダミ」といえば、あの独特の臭いや、抜いても抜いても生えてくる強い繁殖力のために厄介な嫌われ者にされがちですが、じつは“薬の和ハーブ”の代表でもあります。生薬名を「十薬(ジュウヤク)」と言い、“十の効き目がある”という由来があるほど優れた薬効で知られていました。お茶としても一般的で、ドクダミ茶は解毒やむくみ解消、利尿や便秘改善などの効果があると古くから知られています。また、天ぷらにしても食べられますし、美容・美肌効果も期待されるため、ドクダミのチンキ(ホワイトリカーやウォッカなどのアルコールに漬け込んで成分を抽出したもの)を作っておけば、化粧水や虫除けスプレー、うがい薬、入浴剤などにも活用することができます。
簡単なドクダミチンキの作り方
<用意するもの>
生のドクダミ全草(開花時が薬効が高くて採取するのに最適な時期)
保存用のガラス瓶(煮沸消毒して乾燥させておく)
アルコール(ホワイトリカー、ウォッカなど)
<作り方>
ドクダミを採取したら、水でよく洗って土や汚れを落とし、水気をしっかり拭き取ります。
煮沸消毒して乾燥させたガラス瓶に、ドクダミをぎゅうぎゅうにつめて8分目くらいまで入れます。
ドクダミがしっかりと隠れるように、ひたひたになるまでアルコールを注ぎます。
しっかりと蓋をして、1~3ヵ月ほど冷暗所で保存してください。(たまに瓶を軽く振ると良いです)
ドクダミは、チンキにするとあの独特の臭いは無くなり、フルーティーな香りになります。
精製水で薄めて化粧水にしたり、適量をお風呂に入れて入浴剤としても使うこともできますし、そのままスプレーボトルに入れて虫除けスプレーとして、また水に数滴垂らしてうがい薬としても使えます。
※肌に合わない場合もあるので、直接肌につける場合は事前にパッチテストをしたうえでご使用ください。
日本にもこんなにたくさんのハーブが!?
ドクダミ以外にも、効能や香りが活用されてきた歴史を持つ和ハーブは数多くあります。例えば、“現の証拠にたちまち効果が出る”というのが名前の由来である「ゲンノショウコ」は、お腹の調子を整える効果があり、日本人がもっとも活用してきた薬草と言えます。
また、繁殖力が強く“垣根を通して増えていく”というのが名前の由来である「カキドオシ」は、ミントのような香りで、血糖値を下げる作用もあるため、お茶や料理、また入浴剤としても使われてきました。そのゲンノショウコやカキドオシは、ドクダミ・センブリ・タラノキ・ウラジロガシ(樫の木)とともに、「日本六大和薬」として親しまれてきました。
※葉は円形に丸いギザギザがあるのが特徴。葉を揉むと良い香りが漂い、お茶としても飲まれる。(写真は『カキドオシ』)
和ハーブから学ぶ「人生100年時代」をより美しく健康に生きる秘訣
「身土不二(しんどふじ)」という言葉を耳にしたことはありますか。もとは仏教に由来した考えで“人の身体と生まれついた土地とは二つと分けられない”という意味を持ちます。長くその土地で生きている人にとっては、同じ土地に生息している植物が身体に合っていると考えられるのではないでしょうか。
「人生100年時代」をより健康に過ごすために、自分に合った健康法を長い目で探していくことはより重要になっていくでしょう。そのきっかけの一つとして、身近な和ハーブを活用してみるのはいかがでしょうか。
監修:古谷 暢基(ふるや・まさき)
【プロフィール】
医学博士/(一社)和ハーブ協会 代表理事/国際補完医療大学 学長/日本ダイエット健康協会 代表理事/日本ルーシーダットン普及連盟 代表
医学博士でありながら、「和ハーブ」「ダイエット検定」「ルーシーダットン」など数々の健康美容・ソーシャルビジネスをプロデュース。
日本人のための健康・美容・医療に関し"正しい知識と意識"の啓発に取り組む。全国を飛び回り、1年を通して講演会を実施。
2017年4月に和ハーブ検定公式テキスト『和ハーブ にほんのたからもの』、和ハーブ協会初のレシピ本となる『PAN de WA HERB ~日本人の心と身体に届ける和ハーブレシピ~』、また同年8月に待望の『和ハーブ図鑑』が発売。著書・監修の書籍・DVDは30を超え、テレビ・雑誌等のメディア出演多数。
https://dime.jp/genre/476197/ 【美味しくて健康的!日本人に馴染みの深い「和ハーブ」の効能とは?】より
日本人なら「和ハーブ」でデトックス? その効能とは【前編】
体のことを思ったら、料理に使わない手はない「ハーブ」。そのもの自体の薬効や、塩分を控えめにできる香りの良さなど、うれしい作用が多い食材だ。西洋で言えばローズマリーやバジル、近ごろ大人気のパクチーなどもハーブの一種。ただ、特にパクチーなどに対して「いまいち香りが苦手なんだよね……」という男性陣は意外と多い。
いくら肌に良いなんて言われても、苦手なものは苦手なのだ。しかし、そんな人にこそおすすめしたいのが、今回紹介する「和ハーブ」なのである。
古来、日本に伝わる「和ハーブ」とは
ハーブの語源はラテン語の「herba」。香りや薬効が強い茎や葉のことを指すという。そのほかの部分、たとえば種や根っこ、花などは「スパイス」と呼ばれている。いわばそうした薬草の日本版が「和ハーブ」というわけだ。2009年に設立された和ハーブ協会では、和ハーブを「江戸時代以前から日本人が広く暮らしに有用した植物」と定義づけている。
「身土不二(しんどふじ)」「三里四方」という言葉をご存知だろうか。これらは、生まれ育った土地や先祖代々住んでいる土地の食べ物が、人の心身に最もなじみ、健康をもたらすという考え方。これは医学的な見地からも合理性があると言われている。日光の強さに対抗して体の中に抗酸化成分ができることなど、人は暮らしている環境に少なからず影響を受けているからだ。
そういった意味でも、日本の土地で育ってきた植物「和ハーブ」が日本人の心身になじむ食材であるというのはうなずける。なにより、これはあくまでも筆者の個人的な感想だが、実感として和ハーブを効かせた料理は旨い。
日本人ならきっとどこか懐かしさを感じる味わいや、親しみのある香りを持っているからではないだろうか。
具体的に和ハーブの例を挙げれば納得していただけるだろう。たとえば、ワサビやシソ、サンショウなども和ハーブの一種とされている。「え? それが和ハーブ?」と拍子抜けされそうだが、もちろんその他にもたくさんあり、耳慣れないものも多い。
しかし、ワサビやシソが日本の美食に欠かせない存在であることを否定する日本人はいないはずだ。その上体に良い効果・効能まであるというのだから、ぜひとも積極的に使っていきたい。
和ハーブ協会監修! 「和ハーブ」の効果・効能
古くから日本人の食卓を豊かにしてきた和ハーブ。その特徴や効能について、ここでいくつか紹介しよう。
■シソ、エゴマ(シソ科シソ属)
効果・効能:自律神経調整、便秘改善
「和のバジル」とも言われ、その香りと使い勝手の良さでは和ハーブの代表的存在。それでいて、滋養効果も抜群。葉だけではなく、花穂はサラダやパスタなどに、種子はスパイスとして使われる。また種子からとれるオイルには美容成分オメガ3も豊富と、すべての部位が有用。また最近の研究では、シソとエゴマはDNAが同一(同種)であるということもわかっている。
■セリ(セリ科セリ属)、ミツバ(セリ科ミツバ属)
効果・効能:老化防止、美肌作用
スーパーなどでも購入しやすい両者。元来、日本の代表的な野生種。セリの名前の由来は「競り」合うように生えることなのだとか。春に田んぼに出る「タゼリ」と呼ばれる時期のものが、味も香りも濃厚。セリ科植物の根には滋味と薬効があり、東南アジアなどでは出汁やペーストに、日本では新潟などでよく料理に使われてきた。
■チャノキ(ツバキ科ツバキ属)
効果・効能:抗酸化作用、むくみ改善
日本のお茶といえば緑茶、この植物を指す。日本原産説もあるが、中国の雲南省周辺が原産。紅茶や烏龍茶などもすべて同じ植物で、発酵度が違う。有効成分はタンニンやカフェインなど。中国最古の薬草書「神農本草経」には万能薬として記録されている。脂溶性成分は薬効が高く、食材としても大変有用。
■ミョウガ(ショウガ科ショウガ属)
効果・効能:美肌作用、疲れ目改善
一般に食べられる部位は花穂だが、「ミョウガタケ」と呼ばれる若芽の茎も美味。α-ピネンなどの揮発成分を含み、香りづけと殺菌を目的にミョウガの葉で餅を包む和菓子の文化が各地に残っている。大陸の原産だが、現在食材として使うのは日本とミャンマーなどの東南アジア温帯地域の一部だけ。食べると物忘れがひどくなるというのは俗説。
■クロモジ(クスノキ科クロモジ属)
効果・効能:自律神経調整、胃腸不良改善
日本の樹木アロマの王様。民俗学の祖、柳田國男によれば、「日本人の記憶の原点にある香り」であり、戦前までは石鹸の芳香剤などとして広く活用されていた。またその殺菌力から、かつては枝が歯ブラシとして使われ、現在は高級楊枝としてその名残がある。葉を煎じたお茶は胃腸を整え、二日酔いなどの不調に効果てきめん。
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