https://www.min-iren.gr.jp/?p=28384 【副作用モニター情報〈464〉 山梔子(サンシシ)含有漢方製剤の長期投与に伴う腸間膜静脈硬化症】より
山梔子含有漢方製剤の黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)による腸間膜静脈硬化症の報告がありました。黄連解毒湯は、体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色が赤っぽく、いらいらする傾向がある人の胃炎、二日酔い、不眠症、神経症などに用いられます。
症例)精神不安定のため、少なくとも7年以上前から黄連解毒湯を服用していた患者。3年ほど下痢症状が時おり現れ、そのつど、整腸剤や下痢止めを処方していた。便潜血検査で陽性、大腸内視鏡検査で盲腸から上位結腸に暗紫状粘膜、静脈拡張を認め、腸間膜静脈硬化症を疑い黄連解毒湯を中止。1カ月後に治癒を確認、その後は症状無し。
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腸間膜静脈硬化症は、大腸壁内から腸間膜の静脈に石灰化が生じ血流が阻害されることで腸管が慢性的に虚血状態になる疾患です。症状は、右側腹痛、下痢、悪心・嘔吐や便潜血陽性(無症状)があり、重いものではイレウスもあります。
原因は、山梔子の生薬成分であるゲニポシドだとみられています。大腸の腸内細菌がゲニポシドを加水分解し、ゲニピンを生成。ゲニピンが大腸から吸収され腸間膜を通って肝臓に到達する間にアミノ酸やたんぱく質と反応し血流をうっ滞させ、腸管壁の浮腫、線維化、石灰化、腸管狭窄を起こすと考えられています。
2013年に厚生労働科学研究が全国調査の結果を報告し、腸間膜静脈硬化症患者の8割以上が山梔子含有漢方薬を服用し、その内9割以上で服用期間が5年以上だったことを明らかにしています。
13年と14年には「使用上の注意」の改訂指示が出されました。現在、山梔子を含有する製剤で腸間膜静脈硬化症が「重大な副作用」に記載されているのは、加味逍遥散(カミショウヨウサン)、黄連解毒湯、辛夷清肺湯(シンイセイハイトウ)、茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)です。
山梔子を含有する漢方製剤はこの4種以外にもあります。それらを5年以上長期投与している患者が、腹痛、下痢、便秘、腹部膨満感、嘔気・嘔吐等を繰り返す、または便潜血陽性になった場合は投与を中止し、CT、大腸内視鏡などの検査をし適切に処置することが必要です。漫然とした長期処方は見直し、継続する場合は1~2年に1度程度の定期的な大腸内視鏡検査を実施してください。
(民医連新聞 第1626号 2016年8月15日)
https://www.min-iren.gr.jp/?p=28280 【副作用モニター情報〈463〉 肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス(R)NP)による蜂窩織炎】より
肺炎球菌ワクチンのニューモバックスで、副反応が報告されています。
「肺炎」は日本人の死因で第3位です(1位:悪性腫瘍、2位:心疾患)。厚労省発表のこのデータは全年齢が対象ですが、65歳以上に絞れば肺炎で亡くなる人は非常に多いのが現状です。
普通に社会生活を営む中でかかる肺炎を市中肺炎といいます。その原因菌で最も多いのが肺炎球菌で、これに対するワクチンがニューモバックスRNP(23価肺炎球菌夾膜ポリサッカライドワクチン、以下ニューモバックス)です。2014年から65歳以上の高齢者に定期接種になりました。
ニューモバックスによる副反応として報告されているのが、蜂窩織炎(ほうかしきえん)です。蜂窩織炎は、皮膚の深いところから皮下脂肪組織にかけて炎症を起こす化膿性の細菌感染症です。傷口などから入り込んだ細菌による感染が皮膚の深い部分にまで広がり、細胞の周りを広範囲に融解しながら細胞自体を壊死させます。「蜂窩」とはハチの巣のことで、顕微鏡で見ると見た目が似ているので、このような病名になりました。
症例1)70代、女性。ニューモバックス接種から約10日後、左肩の接種部位に発赤・熱感・腫脹あり。蜂窩織炎と診断され、入院。抗生剤で治療し、入院5日後には左肩の発赤・腫脹は治癒し、入院8日後に退院。
症例2)70代、女性。ニューモバックス接種の翌日、自宅で倒れているところを隣人が発見し救急搬送、入院となる。左腕の接種部位のみ硬結、発赤を認め、抗生剤投与開始。接種2日後、吐き気・疼痛・熱感・発赤が増強。接種3日後、接種部位に水泡が形成。接種5日後、発赤・熱感は広範になるが、痛みは軽減。接種8日後には症状改善傾向、接種15日後に軽快した。
この2例の他に、注射部位腫脹・疼痛・熱感などの副反応も多数報告されています。接種後、注射部位の反応が激しいようであれば、受診するよう説明して下さい。
(民医連新聞 第1625号 2016年8月1日)
https://www.min-iren.gr.jp/?p=43829 【副作用モニター情報〈560〉 新型コロナワクチン副反応のまとめ(上)】より
医療従事者を対象とした新型コロナワクチン(商品名:コミナティ)の先行接種が実施されるなか、多くの民医連事業所でワクチン接種後の副反応に関するアンケート調査が行われました。
今回、各協力医療機関より、アンケートデータを収集し集約しましたので、その結果を報告します。
なお、今回報告する調査結果は統一のプロトコール下で実施されたものではないことをご了承ください。
【調査対象症例数】
ワクチン接種1回目:2856例
ワクチン接種2回目:2509例
【調査結果】
・注射部位反応の発生件数は接種1回目:63%、2回目:75.1%でした。一方で先行接種研究(順天堂大研究班報告)では1回目:92.8%、2回目:91.5%となっており、結果に大きな差が見られました。大きな差が発生した原因は不明ですが、年齢や性別により副反応出現頻度が異なることが報告されており、接種対象の違いが結果に現れている可能性があります。
・注射部位反応以外では「37.5℃以上の発熱」の発現頻度が、1回目2回目比較で12.8倍(2.5%vs31.9%)と突出して上昇していました。そのほか、「悪寒」7.1倍、「関節痛」5.4倍、「頭痛」2.8倍、「疲労倦怠感」2.9倍と、全体的に2回目接種時に副反応の発生頻度が上昇していました。先行接種研究でも注射部位反応以外の副反応に関して、同様の結果が得られており、あらためて2回目接種時に副反応発生頻度が上昇することが確認されました。
・今回のアンケート調査では副反応の重症度は評価されておらず、発生頻度以外の副反応の状況については評価することができませんでした。
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次回はアンケート調査の中でみられた特徴的な個別症例や、教訓的な事例について報告します。
(全日本民医連医薬品評価作業委員会)
【お詫びと訂正】
8月16日付「副作用モニター情報〈559〉」の記事中、「β遮断薬のオロダテロール塩酸塩」は誤りでした。
正しくは「β刺激薬のオロダテロール塩酸塩」です。
(民医連新聞 第1744号 2021年9月6日)
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