突然変異により遺伝情報が変化します

https://www.kazusa.or.jp/dnaftb/27/problem.html 【突然変異により遺伝情報が変化します】より

同じ生物種の2つの個体のDNA配列はとてもよく似ていて、1,000ヌクレオチドあたり1ヶ所くらいが違っているにすぎません。DNA配列の違いは、突然変異によってもたらされます。突然変異にはひとつのヌクレオチドの変化から小さな繰り返し配列の数の変化、更には大規模な挿入や欠失があります。突然変異のあるものは進化の出発点となるような新しい変化を生みだします。またあるものは病気の原因となります。ヒトでは突然変異のほとんどは、タンパク質をコードしていないDNAの領域で起こります。ほとんどの突然変異は進化や健康に関して中立的であり、その効果は不利でも有利でもありません。

 1920年に初めて、ショウジョウバエにX線を照射することでDNAの突然変異が誘発されました。イオン化放射線など他の種類の放射線もまた、突然変異を引き起こすことが分かりました。太陽光線の一部である紫外線の放射は隣り合う2つのチミンヌクレオチドを結合させるなど、特別な種類のDNA損傷を引き起こします。人工的に合成した、また自然界に存在する様々な化合物が変異原として知られています。更には、DNA複製自体が完璧なものでないため、これも新しい突然変異を生みだす元となっています。

ハーマン・マラーが、ショウジョウバエの突然変異を紹介します。シーモア・ベンザーは、ウイルスの突然変異を研究し、ひとつのヌクレオチドの変化が突然変異を引き起こすことを証明しました。

やぁ!ハーマン・マラーです。 1900年代初めに、私がトーマス・ハント・モーガンと研究していた時、時折、突然変異を起こしたハエを見つけました。その中には、有名な白い眼をしたハエもいました。こういった変異体は遺伝子の自然な突然変異に依るものであると分かっていました。突然変異は遺伝子の正常な働きを知るために欠かせないものですが、それは極めて稀(まれ)にしか起こりません。 文献を調べると、X線が染色体に損傷を与えることが分かりました。X線は突然変異を引き起こすに違いありません。ですから、ショウジョウバエに、すぐに新しい突然変異を誘導するのにX線が使えるのではないかと考えました。 1920年代に、私はX線によって誘発される、致死的な突然変異を探す実験を始めました。私は、劣性の致死的な変異遺伝子(l)を1本のX染色体上に持った特別なメスのショウジョウバエの株を使いました。もう1本のX染色体は正常な遺伝子のコピーを持っているので、このメスは生きることができます。 [メス][オス] 最初に、私はlを持ったメスと、精子にX線を当てたオスとを交配しました。 [ X線] 私はX染色体にX線によって誘発された突然変異(m)を見つける実験を組み立てました。しかしながら、突然変異はどこにでも起こります。 (X染色体上にある変異)遺伝子を受け継いだオスの子孫は死にます。そのオスたちは正常な遺伝子のコピーを持つ、もう1本のX染色体を持たないからです。 次に、その遺伝子を受け継いだメスを野生型のオスと交配させました。 前回の交配と同じく、遺伝子を受け継いだオスは死にました。 X線照射を受けた染色体を受け継いだオスも、それが致死的な変異であれば、死にます。 2回目の交配の結果にオスがいないことで、X線により突然変異が起きたことが分かります。 X線の照射量を変えることで、死に至らない突然変異を起こすことができました。しかし、突然変異とはどういうものなのか、あるいは遺伝子がどのようになっているのかについてはまだよく分かっていませんでした。 [染色体][遺伝子] やぁ!私はシーモア・ベンザーです。 1950年代まで、多くの人は、遺伝子は糸に通したビーズのようなものだと考えていました。つまり、遺伝子は分けることができなくて、交差は遺伝子の間だけで起こりえるということです。 ワトソンとクリックがDNAモデルを発表した後、私は、もし遺伝子が塩基からなる配列であるなら、異なる多くの場所で分けることができるに違いないと気がつきました。 そして交差は遺伝子の中でも起こりえました。 右の図はこのことを示していて、染色体はE遺伝子の中で交差しています。左の図のように、ビーズ仮説では、染色体の交差はE遺伝子とF遺伝子の間でしか起こりません。 私は遺伝子が分割できることを異なるウイルスの変異体で示しました、変異体はそれぞれ異なるウイルス株に由来していますが、全て欠陥のあるrII遺伝子を持っていました。 [ウイルス][細菌細胞] [変異体#104][変異体#51] [ rII遺伝子] 2つの変異体がバクテリア細胞に自分たちのDNAを注入した後、変異体#104のDNAの一部が、変異体#51のDNAと交差しました。それからバクテリアはウイルスDNAを複製します。 遺伝子はビーズ状だとする考え方に従うと、組換えを起こした全てのDNAは、欠陥のあるrII遺伝子を持つことになるでしょう。 しかし、組換えを起こしたDNAの中には変異のないrII遺伝子もありました。 DNAがrII遺伝子の中で交差したので、このような結果になりました。この例では、交差はrII遺伝子の2つのアデニンの間で起こっています。この“両親”からの変異を受け継がなかった組換え体は、野生型のrII遺伝子を持つに至りました。 [組換え配列] [突然変異] 多くの異なった交配で得られた子どものうちの野生型の数を数えることで、rII遺伝子の変異の位置を地図にして示すことができました。アルフレッド・ステートバントが異なる遺伝子の位置を地図で表したのと同じ方法です。 [rII遺伝子] [変異ウイルス#104は、ここにrII突然変異が含まれている] このrII遺伝子の変異地図を使って、最低いくつのヌクレオチドに変化があれば、1個の突然変異を起こすことができるのかを見つけようとしました。 [変異ウイルス#104は、ここにrII突然変異が含まれている] [野生型配列] 私の地図と他の人たちの研究から、1個の塩基で突然変異が起きることが分かりました。 [変異ウイルス#104は、ここにrII突然変異が含まれている] [rII遺伝子] [変異体#104] [野生型配列] このような1ヶ所の変化は点突然変異と呼ばれています。例えば、変異ウイルス#104はシトシンがアデニンで置き換わっている点突然変異です。 [変異ウイルス#104は、ここにrII突然変異が含まれている] [rII遺伝子] [変異体#104] [野生型配列] 点突然変異はこの遺伝子から作られるタンパク質のアミノ酸を1個だけ変えます。 [変異体#104] [タンパク質] [野生型] 別の塩基の変化はフレームシフト突然変異を引き起こします。1個あるいはそれ以上の塩基の挿入、もしくは欠失はDNA配列の読み枠を変化させ、多くのアミノ酸が変化する原因となります。 [野生型] [1塩基挿入]

factoidDid you know ?

インディアナ大学のハーマン・マラーの研究室はインディアナ大学の別の教授(性科学者のアルフレッド・キンゼイ)の防音された研究室の階下にありました。

Hmmm...

細菌は地球上で進化しました。太陽から有害な紫外線が、フィルターのない状態で大気中を通過していました。このような強力な変異原がありながら、どのようにして生物は進化することができたのでしょうか?

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