https://www.businessinsider.jp/post-213348 【放置すれば資本主義が危機に? ハーバード大学の経済学者、新型コロナウイルスが露呈させた経済格差に警鐘】より
レベッカ・ヘンダーソン
ハーバード大学の経済学者レベッカ・ヘンダーソン氏。
ハーバード大学の経済学者で『Reimagining Capitalism in a World on Fire』の著者でもあるレベッカ・ヘンダーソン(Rebecca Henderson)氏は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)は資本主義を取り巻く議論のターニングポイントだと話している。
これまでにないほど経済格差や気候変動について語る指導者が増えている。
ヘンダーソン氏は、新型コロナウイルスのパンデミックは「希望の兆し」だと言う。資本主義を徹底的に考え直すチャンスだからだ。
ビジネス界のリーダーは、経済格差や気候変動に取り組むために自らの方針を見直し、ともに協力すべきだとヘンダーソン氏は語った。
新型コロナウイルスのパンデミックは、ビジネス界のリーダーたちにアメリカの深刻な経済格差に取り組むよう迫っている。
そう語ったのは、ハーバード大学の経済学者で自身を"資本主義者"と呼ぶレベッカ・ヘンダーソン氏だ。今こそ経済システムを改革すべき時だというヘンダーソン氏は、新型コロナウイルスが"所得の不均衡"と"環境の悪化"という自由市場資本主義の崩壊を露呈したと指摘する。
ヘンダーソン氏は30年にわたって企業革新を研究、何百という企業とともに顧客や従業員に対してより持続可能かつ公平であるための新たな方法を模索してきた。同氏によると、近年はビジネス界のリーダーたちが経済格差や気候変動、アメリカの政治的分断の脅威を話題にすることが徐々に増えてきたという。だが、議論がこれほど切迫感を帯びたのを見たことはないと話している。
「ビジネス界のリーダーたちは、経済格差をこれまでとは違う見方で見ています。大企業の多くのリーダーたちは信じられないほど一生懸命働いていますが、外界から隔離された狭い範囲の世界で生きてきました。ですが、今回のパンデミックがその壁を壊したんだと思います」とヘンダーソン氏はBusiness Insiderに語った。
確かに、新型コロナウイルスのパンデミックは格差との戦いにおけるビジネスの役割について、新たな議論のきっかけとなっている。投資家のレイ・ダリオ氏やJPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ダイモン氏、NBAのダラス・マーベリックスのオーナーであるマーク・キューバン氏といったビリオネアたちは昨今、所得格差について声を上げていて、いずれもビジネス界のリーダーに対し、変化を呼びかけている。
経済格差の問題は以前から存在していて、新型コロナウイルスのパンデミックはその"音量"を上げただけだと、ヘンダーソン氏は言う。ただ、この問題はレッセフェール(自由放任主義)的なアプローチでは解決しないと、同氏は指摘する。
「変化のチャンスという意味で、今回のパンデミックは希望の兆しになる可能性があります。全てテーブルに乗っています。変化の必要を理解できるはずです。わたしたちはこのチャンスをつかまなければなりません」
自らを"資本主義者"と呼び、4月には著書『Reimagining Capitalism In a World on Fire』を出版したヘンダーソン氏は、自由市場資本主義は人類史上最大の発明の1つだが、そのコスト —— 格差の拡大、大規模な環境破壊 —— は高かったと言う。その上で、今こそビジネス界のリーダーたちは、ビジネスがどういった役割を社会で果たすべきか考え直す時だと主張する。
「医療保険に加入できず、有給の病気休暇もなく、体調が悪かったり、職場が危険だと感じても家にとどまれるだけの貯金がないエッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちがたくさんいるのを(ビジネス界の)リーダーたちは目にしています」
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「効率、イノベーション、生産性の推進役として、資本主義は素晴らしいと思います。ただ、人の扱いに関して条件が平等でなかったり、大量の廃棄物を投棄することが合法だったら(環境を変えてしまうほどの量の廃棄物を費用負担なく捨てられるとしたら)、マーケットはわたしたちがこうあって欲しいと思うようにはならないでしょう」
では、ビジネス界のリーダーたちは何をすべきなのだろうか?
「これは"良いこと"と"利益になること"が重なり合う有利な条件を探すことなのです」とヘンダーソン氏は言う。
同氏は、本社の電球をエネルギー効率の良いものに変えて長期的に電気代を減らす、企業が二酸化炭素排出量を削減するといった小さな変化を含め、その具体例をいくつか挙げた。
より大きな変化としては、ビジネス界のリーダーが協力して、フェアトレードのサプライヤーからのみ買うようにしたり、従業員に与える有給の病気休暇の日数を増やすことなどを挙げている。
「このチャンスをつかまなければ、わたしたちは古い行動様式で行き詰まる危険性があります」とヘンダーソン氏は指摘する。
「そして、これがわたしたちの社会を根本から弱体化させるのではないかと懸念しています」
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